商業用オフセット輪転機:技術情報(LITHOPIA MAX+

LITHOPIA MAX+の開発

商業輪転機の世界的な潮流は、幅広化、多頁化など大型機の復活が見られるものの、高速化は頭打ち状態にあり、全体的には、切替時間短縮や損紙低減などによる生産性向上の追究が主流となっている。
わが国のオフセット輪転印刷は、従来、大部数の雑誌や新聞折込ちらしなどの印刷を目的としてきたが、情報の多様化により、印刷部数は小ロット化する傾向にある。
さらに競合メディアへの対抗上必要な印刷コストの低減手段として折加工までをインライン処理できる生産性に着目して、従来は枚葉印刷の分野と言われてきた小部数の印刷物をも輪転機で印刷することが一般化して来ている。
また印刷工場でも団塊の世代からの技術伝承の問題がクローズアップされており、若年労働者を如何に短期間に技術取得させ、戦力化して行くかが大きな課題となっている。
この様なニーズに対応するために、三菱ではいち早くシャフトレス駆動のLITHOPIA MAXシリーズを市場に投入し、印刷準備時間の短縮や刷り出し損紙の低減対策などを図ってきた。
しかし最近の一段と厳しい市場環境に的確に対応してゆくために、更に進化した商業用オフセット輪転機としてLITHOPIA MAX+(プラス)の開発に着手、その第一弾として、B縦半裁判の単径ブランケット胴タイプのLITHOPIA MAX+BT2-850SSSを発表した。

MAX+の開発コンセプト

MAX+の開発コンセプトは“ワンボタンオペレーション”。最終目標は、一度ボタンを押せば印刷準備から刷了までの作業を全自動で行うことが可能な輪転機です。
三菱では、これからの商業用オフセット輪転機に求められる市場ニーズを次のように考えました。

  • 単位時間当たりの生産性向上と生産コスト削減。
  • 若年労働力を短時間で戦力化できるオペレーションのスキルレス化。
  • インライン加工による製品の付加価値増出。

MAX+の開発にあたっては、MAXシリーズで開発した各部の機構や装置、さらに“印刷準備時間短縮と損紙低減”を実現するソリューションである「MAX Saver」のバージョンアップを図りました。

また、人に優しい生産設備を目指して、「使い易さ」と「安全性」の向上を図るため、デザインコンセプトである“ソフトジオメトリック(柔らかな幾何形態)”に準拠して、外観デザインを一新、マルチファンクションビームによる安全装置などの対策も実施しています。

LITHOPIA MAX+BT2-850SSS

MAX+Evolutions=更なる準備時間と損紙低減を図る技術

高速全自動版交換装置(MAX Simul Changer)

新開発の色間待受タイプのシンプルな構造の新型版交換装置。シャフトレス駆動ゆえに、機内に紙を残したまま、何色機であっても約1分で全色の版交換作業ができる。版カセットは、印刷ユニットの排紙側にコンパクトに設置され、操作側のフロアから旧版の取り出し、新版のセッティングが運転中にできる。また、印刷ユニットのメンテナンス時には版カセット自体を手動で駆動側に退避させることができます。

高速全自動版交換装置(MAX Simul Changer)の写真

高速ストリーム排紙B4-2頁折機

コンビネーション折機の駆動側に連結設置されるが、高速ストリーム排紙機構の開発によって、羽根車を用いず、搬送ベルトから直接コンベア上に排紙することを可能にしたことで、全長を従来の約3/4にコンパクト化、設置スペースの削減と操作性向上を図りました。
また、ピンレス鋸刃カット方式のため、紙質による調整が不要で、薄紙でも安定した高速運転が可能となった。この結果、B4-2頁(B4シート)1列出を従来より毎分50回転高い850回転にスピードアップした。また、B4-2頁、2列出し及び三角板を通しての長B3-4頁運転も可能です。

高速ストリーム排紙B4-2頁折機の写真

刷出カットオフ制御機能(MAX Pre-cut)

これまで、刷り出し後に印刷物を見てオペレータが手動で断裁位置合わせを行い、調整後にカットオフコントローラで調整をしていたカットオフ制御作業を、刷り出し前に画像情報から自動的にプリセットする機能で、刷り出し損紙の大幅削減とオペレーションのレススキル化を実現しました。
操作は、IPCII+で、これから印刷するジョブの画像データを選択するだけで、ジョブプリセットの中で行われるので、特別の作業は不要です。IPCII+では、画像データを解析して断裁位置合わせに最適なカットマークを自動抽出してプリセットを行い、カットオフセンサは、幅方向のカットマーク位置に合わせて自動的に移動します。カットオフセンサから折機の断裁位置までの用紙の走行距離は既知なので、適切な断裁タイミングがプリセットされます。

小巻ペースタ

MAX+の給紙装置では、従来最小300ミリメートルであった紙継可能巻取り径を、ペースターの準備時間を短縮したことで最小180ミリメートルにしました。これにより中途半端に残ってしまった巻取紙を印刷調整用に使用すれば、正規の巻取紙の損紙低減のための有効利用ができます。

三菱重工グループの実績