

三菱重工グラフ(2012年7月発行)に掲載
オーストラリアの高いエコ意識にお応えする高機能エアコン
地球温暖化対策として、世界で電気製品の規制が広がっています。それに伴い、今エアコン市場で注目を集めるのが、モータの回転速度を制御して効率的に電力消費を抑える"インバータ"です。その普及率は、日本では100パーセントに近いものの、欧州では約半数、米国では数パーセント程度とまだまだ低いのが現状です。このような中で、世界でもめずらしくインバータエアコンが販売台数の90パーセント以上を占める国が、オーストラリアです。
先進の環境技術が求められるオーストラリア市場
世界有数の自然環境を有するオーストラリア(豪州)。その恵まれた環境を守るため、国土の10パーセント以上を国立公園や自然保護区として、エコツアーなど自然を資源にした観光業の従事者も多く、日頃から国民の環境意識が高いことが特徴です。国としても2050年までに温室効果ガス排出量を2000年レベルの60パーセントに削減する目標を立て、一般家庭にも協力を求めており、各家庭で節電志向が高まる中、エアコンも省エネ性能に目が向けられています。
このような背景により、三菱重工は空調機器事業において豪州を全世界戦略上の重要国の一つと捉え、MHIAA(注)(Mitsubishi Heavy Industries Air - conditioners Australia)主導のもと商品企画・販売を進め、売上を年々伸ばしています。
豪州では今、エアコンなどの電気製品に、厳しい最低エネルギー消費効率基準の「MEPS(Minimum Energy Performance Standards)」が導入され、年々消費効率の高いエアコンへの需要が増大。特にその基準を満たすインバータエアコンが市場の主役となり、技術力に優れた日系空調メーカーの製品が人気を集めています。とりわけ三菱重工は、ジェットエンジンの気流解析技術から得た独自設計により、風量性能を高めて好評を得ています。
さらに、これらの製品は日本で設計した後、生産・供給をタイの「MACO(Mitsubishi Heavy Industries - Mahajak Air Conditioners)」で実施。これにより、日本市場向けの高性能な省エネエアコンをベースに価格競争力をつけ、豪州や欧州、アジア各市場など世界各国に水平展開するグローバルモデルの供給体制を整備しています。
- :シドニーに本社をもつ現地拠点。1999年に三菱重工の現地法人MHIAU(Mitsubishi Heavy Industries Australia)にて自社販売を開始、2008年に空調部門を同社から分離し設立。豪州でのニーズの取り込み、世界各国での経験に基づくシーズを提供し、現地に根づいた販売促進・顧客開拓などを展開しています。
地域戦略商品で多様なニーズにお応えする
さらに三菱重工は、インバータエアコンをグローバルモデルとして水平展開する一方、マーケットインの手法で地域戦略商品も開発・投入しています。
豪州は欧州や日本の住宅と比べて、一部屋あたりの面積が広いため、冷・暖房能力が高く大型の壁掛型エアコンが好まれます。また、豪州の建築様式に合わせて、天井裏に室内機を据え付けるダクト式エアコンも需要が伸びています。
これら「豪州向け」商品の開発は、MHIAAと日本の商品計画担当者・設計技術者らが現地の家屋を調査し、販売店や据付業者から生の声を取材しながら製品コンセプトを検討。あらゆる視点から地域のニーズをくみ取り製品開発につなげています。
また、都市部の高層マンション、アパート向けに、3~4台の室内機を1台の室外機で制御する家庭用マルチエアコンも展開。これは建築物の外観維持を重視し室外機の設置箇所が制限される欧州市場からの発案商品でしたが、マンション建設の加速を背景に豪州でも人気を集めています。このように地域のニーズをくみ取って製品化し、国を越えて販売することで世界市場に、新技術やアイデアを提案するシーズ提供型商品の拡販体制を構築しています。
国内最大手のアクトロール社と協力し販売網を拡大

こうした事業活動の中、MHIAAは2003年から空調・冷凍・冷蔵機器の卸売サプライヤーで豪州国内最大手の「アクトロール社」とパートナーシップを締結し、取引を続けています。同社は、エアコンのほか、機器据付に欠かせない配管材料、冷媒、アクセサリまで全てをそろえ、国内に巨大な販売ネットワークを展開。取り扱う製品レンジや顧客層も幅広く、家庭用・商業用ともに各地域のニーズにお応えした質の高いソリューション提供を追求しています。
エアコン機器販売が主体のMHIAAにとって、このような事業形態のアクトロール社は互いに利益を享受できる理想的なパートナーです。三菱重工のエアコンは技術や機能でユーザーから高い評価を獲得。その信頼性の高さに、「小売販売店や据付業者が必要とするものは全てそろう」アクトロール社の"One-stop-shopping"という利便性が加われば他社に勝る大きな強みになります。さらに販売面では近年、アクトロール社向けに専用モデルの投入も開始。単なるサプライチェーンの関係に留まらず、今後も拡販協議を続けていきます。
エアコンの環境性能は今後も購買時の重要ポイントであり、世界トップレベルを誇る日本の省エネエアコンへの期待はますます高まることでしょう。このような中で、三菱重工はエアコンの幅広い製品レンジ・環境対応製品を提供し、MHIAAを通じて現地パートナー・アクトロール社の販売網を味方に、さらなる事業拡大を成し遂げていくことでしょう。