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H3ロケットに適用する静止衛星Lバンドネットワークを用いた軌道上テレメトリ中継サービスの開発プロジェクト「InRange」に係る日英協力を開始

UK Space Agency
国立研究開発法人
宇宙航空研究開発機構
Viasat, Inc
三菱重工業株式会社
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英国宇宙庁(UK Space Agency)と国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、H3ロケットに適用する静止衛星Lバンドネットワークを用いた軌道上テレメトリ中継サービスの開発プロジェクト「InRange」に関して、日英二国間の協力を開始することに合意しました。当該サービスは、H3ロケットによる飛行実証を予定しています。

本二国間協力は、両宇宙機関間で2021年に締結した協力覚書(MoC)に基づくものとなります。本二国間協力の枠組みのもとで実施される「InRange」プロジェクトにおいて、英国宇宙庁は、International Bilateral Fund(注1)の仕組みを通じ、Viasat社に対し、同社のグローバルな静止衛星Lバンドネットワークを用いた、打上げロケット用の新しい軌道上テレメトリ中継サービスの開発について、開発資金の一部負担を行います。日本においては、JAXAが担当するH3ロケットのテレメトリ送信機及びアンテナ開発について、JAXAからの契約に基づき、三菱重工業株式会社が開発業務を請け負います。(図1参照)
なお、今回、英国宇宙庁がInternational Bilateral Fundを通じViasat社へ助成する金額は170万ポンドとなります。

今回開発する「InRange」は、Viasat社の静止衛星Lバンドネットワーク「ELERA」を利用し、グローバルにロケットの軌道上テレメトリを中継することによりロケット追尾を行うサービスであり、ロケット打上げにおける従来の地上追尾局への依存を軽減する効果があります。「InRange」をH3ロケットに適用することにより、打上げ時において、地上追尾局の可視範囲に依存することなく軌道決定することができるようになるため、打上げ軌道を最適化することが可能となります。また時には、宇宙機を所定の軌道に投入するために必要な推進薬量が削減されたり、より重いペイロードを打上げたりすることも可能となります。

  • 1International Bilateral Fund
    英国宇宙庁におけるファンディングの仕組みであり、英国事業者と国際パートナーとの宇宙分野における協力を通じて、英国国家宇宙戦略を実現するための能力及び研究基盤の発展に寄与する提案を公募し、助成するもの。

Viasat社と三菱重工業株式会社は、「InRange」の検証及びH3ロケットでの飛行実証を協力して実施します。また、NECスペーステクノロジー株式会社も本開発体制に参画し、H3ロケットに搭載されるLバンド送信機の設計を担います。JAXAは、日英の関係者と協力し、既存地上設備を「InRange」に対応させるための技術開発を行います。

【英国宇宙庁 CEO ポール・ベイト コメント】
「InRange」は、打上げに必要な燃料及び地上追尾局への依存の両方を低減し、ロケット打上げをより持続可能なものとすることで世界中のロケットの打上げ能力に変革をもたらし、宇宙機がより効率的に飛行できるようにするものです。
英国宇宙庁が、International Bilateral Fundを通じて、JAXA、Viasat社、三菱重工業株式会社と共にこのプロジェクトに取り組むことは、宇宙開発はチームスポーツであり、世界中の組織と協力することで宇宙開発の困難を打ち破ることができる、という私たちの確固たる信念を実践するものになります。

【Viasat グローバル・ガバメント部門 副社長 ゲイリー・レイ コメント】
英国と日本のそれぞれの宇宙産業の深い結びつきを示すようなフラッグシッププロジェクトに採用されたことを光栄に思います。日本が自律的な打上げ能力を維持するにあたり、我々Viasat社が、当社独自の静止衛星Lバンドネットワーク「ELERA」を利用して、信頼性があり、応答性が高く、費用対効果の高いグローバルなテレメトリ中継システムを提供する理想的な役割を果たすことになると信じています。

【JAXA 宇宙輸送技術部門H3プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 岡田匡史 コメント】
「InRange」プロジェクトの開始を大変光栄に思います。宇宙分野における、日英間の経済的・戦略的な結びつきを強化するプロジェクトとして、「InRange」プロジェクトを採用いただいたことに対し、英国宇宙庁に感謝申し上げます。
「InRange」は、H3ロケットの飛行経路計画の柔軟性を向上させるものであり、このことにより、H3ロケットはこれまで以上に打上げ顧客の多様なニーズに応えることができるようになります。試験機2号機の成功に向けた取り組みを強化するとともに、本プロジェクトの実現を含めたH3ロケットの開発を引き続き進めて参ります。

【三菱重工業株式会社 宇宙事業部長 田村篤俊 コメント】
「InRange」という革新的なプロジェクトにViasat社と参加できることを喜ばしく思います。ロケットの飛行経路計画は地上局からのロケットの可視性に起因する制限を受けることがあります。「InRange」はこのような制約を緩和する解の一つであり、民間衛星オペレータや惑星ミッションを計画される方等の、多様なお客様に柔軟なサービスを提供し続けるにあたり役立つと信じています。このプロジェクトをきっかけに、宇宙開発産業における英国と日本の協力が更に深まることを願います。

【図1: 「InRange」プロジェクトに係る関係図】

【図1: 「InRange」プロジェクトに係る関係図】

≪参考:署名式の様子≫
2023年10月4日(水)、アゼルバイジャンで開催の74th International Astronautical Congress(IAC 2023 BAKU)において、本国際合意に係る英国宇宙庁・JAXA間の署名式を行いました。

©JAXA

©JAXA
左から、Viasat社ゲイリー・レイ副社長、ファーガス・オールド在アゼルバイジャン英国大使、英国宇宙庁アヌ・オジャ部長、JAXA小坂調査国際部長、JAXA山川理事長、JAXA石井理事。

H3ロケット(イメージ)

H3ロケット(イメージ)


Tags: 宇宙開発
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