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凝集磁気分離方式「日立バラスト水浄化システム<ClearBallast>」が
日本国政府の型式承認を初取得

株式会社日立プラントテクノロジー
三菱重工業株式会社
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 株式会社日立プラントテクノロジー(本社:東京都、執行役社長:住川 雅晴、以下日立プラントテクノロジー)と三菱重工業株式会社(本社:東京都、取締役社長:大宮 英明、以下三菱重工)が共同開発した「日立バラスト水浄化システム<ClearBallast>(*1)」が、2010年3月5日、IMO(国際海事機関)(*2)で2004年2月に採択された「船舶バラスト水及び沈殿物の制御及び管理のための国際条約」(バラスト水管理条約)(仮称)で規定している「バラスト水管理システムの承認に関するガイドライン(G8)」に基づいた型式承認を日本国政府から取得しました。これは日本国政府が初めて発給した型式承認となります。

 なお、本型式承認の取得にあたっては、雄洋海運株式会社殿(本社:神奈川県、取締役社長:土谷 直昭氏)所有のLPG船(タンク容量:78,500m3、三菱重工長崎造船所で建造)に搭載した試験装置による船上試験に加え、東京湾で実規模装置による陸上試験を並行して行い、ともに「バラスト水排出基準」(*3)をクリアしております。また、2009年7月17日にIMOの「活性物質を利用するバラスト水管理システム承認のための手順(G9)」の最終承認を取得済みです。
 今後、積極的な営業活動を展開し、2012年度に年間100台の受注をめざす方針です。
  (*1)ClearBallast:(株)日立製作所の日本登録商標で、日立プラントテクノロジーは使用許諾を得て使用するものです。
  (*2)IMO:International Maritime Organization
  (*3)バラスト水排出基準:
対象 管理基準
50μm(注1)以上の水生生物 10個/1m3未満
10μm~50μm(注1)の水生生物 10個/1ml未満
病毒性コレラ菌(O1、O139) 1cfu(注2)/100ml未満
大腸菌 250cfu(注2)/100ml未満
腸球菌 100cfu(注2)/100ml未満
  • 1最小寸法
  • 2cfu(Colony Forming Unit):群単位
船上試験装置の外観
船上試験装置の外観
船上試験装置を搭載したLPG船の外観
船上試験装置を搭載したLPG船の外観
陸上試験装置の外観
陸上試験装置の外観

■「日立バラスト水浄化システム<ClearBallast>」の概要

バラスト水は、船舶のバランスを保つための重しとして用いる海水のことで、採水海域のプランクトンや菌類、泥、砂などが含まれています。バラスト水の多くは、採水した国とは異なる国の港で排出されます。このため、海水と一緒に外来生物などが排出され、その海域の生態系に影響を及ぼすことが国際的な問題になっています。
こうした問題に対処するため、2004年2月には、IMO本会議において「バラスト水管理条約」が採択されました。同条約では、国際航海に従事する船舶は、船舶の建造日およびバラストタンクの容量に応じ、段階的に「バラスト水排出基準」が適用されることが定められ、2017年には、全ての外航船に同基準が適用される見込みです。これにより、バラスト水の処理装置の船舶搭載が必須となります。

<ClearBallast>は、多くの浄水場でプランクトンや菌類の除去に用いられている凝集技術と、雨天時高速下水処理等向けに開発した磁気分離技術を組み合わせ、バラスト水浄化に適用したものです。凝集法を採用することで、塩素やオゾン、紫外線等を用いた殺菌方式とは異なり、残留薬剤による二次汚染の心配がありません。また、菌類をフロック(小さな固まり)化することで、通常のろ過機と比較し粗目フィルタの使用を可能にし、高速処理と装置の小型化を実現しました。

なお、浄化装置を船舶に搭載し、システムとして機能させるためには、高度な船装設計技術をベースに、船舶用品とするための改良が必要となります。<ClearBallast>の開発・製品化にあたっては、日立プラントテクノロジーと三菱重工が双方の技術とノウハウを結集させ、共同研究開発を行うことで、これらの課題をクリアしました。

■特長

  • 生物・環境・船体の安全性を追求
    (1)本システムからの処理水100%の環境で生物を飼育した場合でも、成長阻害および奇形等の影響は認められません(生物毒性試験(*4)結果より)。
    (2)本システムは殺菌剤未使用のため、残留薬剤による二次汚染の心配がありません。
    (3)本システムによってバラストタンクの塗装に悪影響を与えることはありません(腐食評価実験結果より)。
    これらのことから、本システムは、生物・環境・船体の安全性を追求したシステムです。
    (*4)生物毒性試験:OECD(Organization Economic Co-operation and Development)が定めるガイドラインに準拠した生物毒性試験。処理水を用い海産種であるスケレトネマ(藻類)、フサゲモクズ(無脊椎動物)、ジャワメダカ(魚類)の飼育実験を実施。
  • バラストタンク内のマッドの堆積を抑制
    本システムは、海水中のプランクトンや菌類だけでなく、海底の砂、泥、固形の浮遊物もタンク漲水前に除去可能であり、バラストタンク内にマッド(生物の死骸等の汚泥状の沈殿物)が堆積することを抑制できます。
  • バラストタンク内での菌類・藻類の増殖を抑制
    本システムは、マッド内の菌類の繁殖抑制効果だけでなく、海水中の生物必須元素のリンも除去できるため、赤潮等で大量の藻類が発生しその一部が万が一バラストタンク内に混入した際も藻類の増殖を大幅に抑制できます。
  • 防爆仕様のラインアップ
    原油タンカーや液化ガス運搬船、危険物を搭載するコンテナ船、ケミカル船等の危険区画に搭載するための防爆仕様についても、今後日本国政府からの追加取得を予定しています。
  • 電力消費量を抑制
    本システムの必要電気容量はシステム容量200m3/hで21kW、1,600m3/hで112kWと比較的小さいため、発電機容量を追加しなくて済む場合があり、船舶搭載時の船体への影響を極力抑えることができます。
  • 荷積み作業の制約がない
    本システムは、バラスト水排出時に処理を行わないため、荷積み作業時は従来と変わらないオペレーティングが可能です。

■処理フロー

  • 処理は取水時に行います。まず、急速・緩速撹拌槽で海水に凝集剤と磁性粉を添加、撹拌し、プランクトン、菌類、マッドなどを、1ミリ程度の磁性を有したフロックに形成させます。
  • フロックは、磁気分離装置の磁気ディスクに吸着させて除去処理します。
    処理水は、さらにフィルタ分離装置でろ過し、バラストタンクに注水します。
  • 回収フロック中のプランクトンおよび菌類は、加熱処理により死滅するため、安全です。
処理フロー

■標準システムの仕様(数値は2010年2月現在の当社設計に基づくものです。)

バラスト
ポンプ容量 (m3/h)
フットプリント(m2)(注3) 負荷電力
(kW)
急速
撹拌装置
緩速撹拌装置
(縦型設置)
磁気分離
装置
フィルタ
分離装置
添加剤
注入装置
(注4)
回収フロック
加熱処理 装置
制御盤
200 1.2 3.3 4.2 4.3 4.5 1.4 1.2 21
400 1.8 3.7 6.8 7.5 8.3 1.4 1.2 31
800 2.5 11 14 16 8.3 2.3 2.0 56
1,200 5.4 16 27 28 17 4.6 2.8 85
1,600 5.0 22 29 32 17 4.6 2.8 112
2,400 11 32 53 56 44 9.2 4.0 170
  • 3機器投影面積を示す。
  • 4磁性粉・無機凝集剤・高分子凝集剤注入装置を含む。

特記:本システムは、船種の状況に合わせて自由度の高い機器配置が可能です。 詳細は別途ご相談ください。

(1)各装置は、分割配置可能です。
(2)急速・緩速撹拌装置、回収フロック加熱処理装置は船体水槽に付属することが可能です。
(3)緩速撹拌装置は横型設置も可能です。
(4)緩速撹拌装置、磁気分離装置、フィルタ分離装置は、上下配置が可能です。


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