Press Information

英国初となるセメント工場向けCO₂回収プラントを受注
ハイデルベルク・マテリアルズ社の英国ペイズウッドセメント工場に建設

Print

◆ ハイデルベルク・マテリアルズ社と英国政府の最終投資決定を受け、三菱重工のCO2回収技術を採用
◆ 三菱重工とウォーリー社が手掛けた基本設計に続く受注で、年間約80万トンのCO2を回収
◆ 英国政府が進めるCCUSクラスター(注)プログラムのトラック1 として、2029年に運転開始予定

英国のペイズウッドセメント工場(ハイデルベルク・マテリアルズ社提供)

英国のペイズウッドセメント工場(ハイデルベルク・マテリアルズ社提供)

三菱重工業株式会社(本社:東京都千代田区、以下、三菱重工)は、世界大手セメントメーカーであるハイデルベルク・マテリアルズ社(Heidelberg Materials、本社:ドイツ)から英国初のセメント工場向けCO2回収プラントプロジェクトをウォーリー社(Worley、本社:豪州)と共同受注しました。CO2回収プラントは、英国ウェールズ・フリントシャー州にあるハイデルベルク・マテリアルズ社のペイズウッド(Padeswood)セメント工場に建設。運転開始は2029年の予定です。

このプロジェクトは、当社独自のCO2回収技術「Advanced KM CDR Process™」を欧州で初めて採用し、ペイズウッドセメント工場から年間約80万トンのCO2を回収する予定です。回収したCO2はパイプラインで輸送され、英国政府がネットゼロ目標達成のために選定したCCUSクラスターである「HyNet CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)クラスター」の一部として、英国リバプール沖の枯渇ガス田に恒久的に貯留されます。英国のセメント生産において、CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)技術を導入・運用するのは今回が初めてです。

ハイデルベルク・マテリアルズ社は、英国政府が進めるCCUSクラスタープログラムのトラック1として、本プロジェクトの最終投資決定(FID:Final Investment Decision)を9月に英国政府と共同で行いました。

当社とウォーリー社は、CO2回収プラントの基本設計(FEED:Front End Engineering Design)を2024年から手掛けています。EPC(設計・調達・建設)の実行段階では、当社と地域拠点の欧州・中東・アフリカ三菱重工業株式会社(MHI-EMEA)が、MHI-EMEAのロンドン本社を通じて、Advanced KM CDR Process™を採用する主要機器やコンプレッサを含む付帯設備の設計・調達を担当。ウォーリー社は、周辺機器の設計・調達管理およびCO2回収プラント全体の建設管理を担います。

世界のCO2排出量の約7~8%はセメント生産によるとされます。このCO2の大半は焼成工程で発生するため、温室効果ガスを排出せずに発電したクリーン電力への切り換えでは削減できません。生産工程を完全に脱炭素化するにはCCSが必要となります。

また、3社を中心に進めるこのプロジェクトは、200人以上の既存の雇用を維持するとともに、新たに約50人の正規雇用を創出するほか、建設中に最大500人を雇用することが期待されています。

当社GXセグメントCCUS担当セグメント長代理の長安 立人(ながやす・たつと)は、次のように述べています。「当社のAdvanced KM CDR Process™を採用するこのプロジェクトは、CO2排出量削減が最も困難な産業部門の1つであるセメント分野の脱炭素化を牽引する役割を果たします。ウォーリー社と共に、英国の産業の長期的な脱炭素化に向けた取り組みに貢献し、同国のネットゼロ目標の達成に資する画期的なCCS設備を提供することを楽しみにしています」。

ハイデルベルク・マテリアルズUK社のサイモン・ウィリスCEOは、次のように述べています。「これは、英国で初めてセメント工場にCO2回収プラントを建設するという私たちの計画における大きなマイルストーンです。当社は、基本設計の完了時にウォーリー社および三菱重工と良好な協力関係を築きました。三菱重工は、こうした複雑な設備を確実に提供してきた実績があるため、当社の画期的なプロジェクトを次の段階に進めるうえで最適なパートナーと言えます」。

ウォーリー社のクリス・アシュトンCEOは、次のように述べています。「このプロジェクトは、欧州における産業の脱炭素化にとって画期的だと言えます。ハイデルベルク・マテリアルズ社および三菱重工と協力して、セメント生産を変革し、英国のネットゼロ目標を支援する設備を提供できることを誇りに思います。このプロジェクトでの当社の役割は、持続可能な産業ソリューションを実現する能力と、複雑なエネルギー・インフラプロジェクトでグローバルな専門知識を活用できるという強みを体現することです」。

三菱重工は、引き続き独自のCO2回収技術を活用して、CCUS事業を推進するとともに、温室効果ガス排出削減に地球規模で貢献し、環境保護に寄与するソリューションの開発を進めていきます。

ハイデルベルク・マテリアルズ社について
ハイデルベルク・マテリアルズ社は、世界最大の総合建築材料メーカーです。50カ国以上に拠点を置き、約3,000の拠点で約5万1,000人の従業員を擁しています。
ハイデルベルク・マテリアルズUK(旧ハンソンUK)社は、骨材、コンクリート、アスファルトと請負工事、セメント、リサイクルの5つの事業部門に分かれ、合わせて300以上の製造拠点を運営し、4,000人以上を雇用しています。詳しくは、ハイデルベルク・マテリアルズ社のウェブサイト(heidelbergmaterials.com)、英国のハイデルベルク・マテリアルズ社のウェブサイト(heidelbergmaterials.co.uk)をご覧ください。

ウォーリー社について
ウォーリー社は、エネルギー、化学および資源分野の専門家で構成される、大手グローバルサービス企業です。より持続可能なエネルギー源に移行しながら、現在必要とされているエネルギー、化学物質および資源の提供を支援しています。豪州に本社を置き、豪州証券取引所(ASX)に上場しています(銘柄コード:WOR)。
詳しくは、ウォーリー社のウェブサイト(www.worley.com)をご覧ください。

三菱重工グループのCO2回収技術について
三菱重工グループは、1990年から関西電力株式会社と共同でCO2回収技術「KM CDR Process™」や「Advanced KM CDR Process™」の開発に取り組んでいます。2025年12月現在、これらの技術を用いたプラントを18基納入しており、さらに2基の納入を遂行中です。「Advanced KM CDR Process™」には、アミン吸収液「KS-1™」に技術改良を加えた「KS-21™」が採用されています。KS-21™は、KS-1™と比べて再生効率に優れ、劣化も少ないといった特長を持ち、優れた省エネルギー性能と運用コストの低減ならびに低いアミンエミッションが確認されています。

【三菱重工グループ「CO2回収技術」製品情報はこちら】
https://www.mhi.com/jp/products/engineering/co2plants.html

  • CCUSクラスターとは、地理的に近い複数の企業や工場が排出するCO2を効率的に回収・輸送し、1カ所の貯留施設に貯留するなど、効果的にCCUSを共同で行う仕組みや地域のことです。
CCUSクラスター

Tags: カーボンニュートラル,エナジートランジション,CCUS
mission_net_zero

三菱重工グループについて

三菱重工グループは、エンジニアリングとものづくりのグローバルリーダーとして、 1884年の創立以来、 社会課題に真摯に向き合い、人々の暮らしを支えてきました。
長い歴史の中で培われた高い技術力に最先端の知見を取り入れ、カーボンニュートラル社会の実現 に向けたエナジートランジション、 社会インフラのスマート化、サイバー・セキュリティ分野 の発展に取り組み、 人々の豊かな暮らしを実現します。

詳しくは: