脱炭素への取り組み

エンジニアリング事業

社会的課題

世界は脱炭素社会へ移行し、多くの国や企業がCO2排出量の削減を推進しており、2050年までのカーボンニュートラル社会の実現に向けて動き出しています。
世界的なカーボンニュートラル社会の実現に向け、温室効果ガス排出の実質ゼロ(ネットゼロカーボン)を達成するためにはCO2低減とCO2回収を推進し、CO2の排出量を減らすことが必要です。

カーボンニュートラルに必要な年間CO2回収量

2050年のカーボンニュートラル社会の実現に向けたさまざまな取り組みによってCO2排出量が削減された場合でも、約43~130億トンのCO2排出が残ると考えられています。この残るCO2に対しては回収が必要で、量としては現在の約100~300倍となります。2050年にCO2回収を必要とする分野は産業分野、燃料製造、発電分野、航空・輸送分野等と多岐にわたるため、幅広い領域においてCCUSの導入が必要となります。

  • 「人為的な」CO2排出量:工場などの産業分野をはじめ、人類の活動によって排出されるCO2のこと

CCUSとは

CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)とは、CO2回収(Carbon dioxide Capture)、転換利用(Utilization)、貯留(Storage)の略称です。CCUSの略称には含まれていませんが、輸送も必須です。CCUSはカーボンニュートラル社会の実現に重要な要素であると考えられています。
現在、CO2貯留(CCS)については米州、欧州を中心に開発計画が進んでおり、今後世界中で数百か所の貯留サイトが整備されていくことになります。IEAによると、世界の貯留ポテンシャルは8兆トン以上(2050年排出量で600年分以上)と推定されますが、貯留サイトの大幅な増加に伴い、輸送を含むCO2のネットワーク構築とともに、CCUSの制度的・規模的・技術的課題解決への取り組みが必要です。

三菱重工グループのCCUSの取り組み

三菱重工グループは2040年カーボンニュートラル宣言『MISSION NET ZERO』を発表しました。
カーボンニュートラル社会の実現は地球規模の課題であり、脱炭素分野において数多くの実績を誇るリーダーとして、気候変動対策をリードしていくことが三菱重工グループのミッションであると考えています。
この宣言では、バリューチェーン全体からのCO2排出量を2040年までにネットゼロにする目標を設定しており、目標達成にはCCUSによる削減貢献分も重要な要素です。
三菱重工グループは、カーボンニュートラル社会の道筋を描いた「Breeze CONCEPT」のもと、CO2回収、輸送、転換利用、貯留といったCCUSバリューチェーン全体の最適化を視野に入れ、CO2を効率的かつ安定的に削減するため、実効性のあるソリューション提供と費用対効果の最大化に貢献していきます。
また、CCUSバリューチェーンの構築のために、最新鋭のCO2回収技術、小型CO2回収装置、LCO2船、コンプレッサなど、CCUSに関連した製品ラインアップを拡充すると共に、CO2NNEXなど、回収したCO2の輸送、転換利用、貯留に至るシステム等の開発も含め、幅広い製品やソリューションを生かしてカーボンニュートラル社会への実現に貢献していきます。

主要技術・製品ラインアップ

三菱重工グループの事業会社は、それぞれ回収、輸送、圧縮などCCUSに欠かせない技術を保有しています。
市場の拡大に伴い必要となる大型のCO2輸送船やCO2圧縮分野等で、さらなる技術の活用も進めています。

このうちGXセグメントは、自社の独自技術によるCO2回収(ライセンス供与)、小型CO2回収装置等を取り扱っており、三菱重工グループ内のCO2回収関連製品・サービスの開発にも技術面などから協力しています。また、CO2の転換利用に関しても様々な分野での検討を進めており、三菱重工グループ一体となりCCUSビジネスのポートフォリオを充実させていきたいと考えています。

さらに、世界全体で脱炭素化に向けた動きが加速しており、様々な排ガスからのCO2回収ニーズも今後、増大していくことが予想されています。当社は、こうしたニーズに応えるべく乾式CO2回収などお客様のご要望に合わせた様々なCO2回収技術の拡大を検討しており、特に近年ではDACと呼ばれる大気中に存在する微量のCO2を回収するシステムなどについても開発を進めています。
このほか、遠隔監視やCapture as a Service(CaaS)といった、CO2回収サービス事業に関する検討を進めており、CO2回収テクノロジープロバイダーとして、CCUSビジネス全体でお客様のサポートを行っていきます。

コラム1:CO2NNEX

三菱重工業は日本アイ・ビー・エム株式会社と共同で、CO2流通を可視化するデジタルプラットフォーム「CO2NNEX」の構築に着手しています。これにより、現状では貯留や転換利用と選択肢が限られているCO2の流通を可視化・整流化し、投資やコストの観点での検証、エミッターと需要家の効率的なマッチングなどバリューチェーン全体の最適化を実現していきます。

コラム2:CO2回収技術に関するお客様の声

各業界のお客様から、三菱重工のCO2回収技術に関して、当社の実績とエンジニアリング能力、ノウハウを評価いただいています。
2021年10月に開催した「CCUS説明会」の資料より、お客様の声をご紹介いたします。