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ターボの躍動 ターボの躍動

三菱重工グラフ(2011年11月発行)に掲載

製品力[ 物流・産業 ]

ターボの躍動

エコ&エコノミー時代の最前線を駆ける、ターボという救世主

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ターボエンジンと聞いて、誰もがはじめに思い浮かべるのは、高出力なスポーツカーのイメージかもしれません。
しかし、視線を転じれば、トラックやバス、建設機械、発電機、そして船舶などのエンジンの多くにターボ(過給機)は使われ、活躍の場を広げてきました。そして近年、自動車エンジンの未来は、ターボ抜きでは語れないという時代に突入しています。
ターボは、エンジンに大量の圧縮空気を送り込み、燃料を効率的に燃やすための装置。 出力を向上し、燃費を改善し、エンジンのダウンサイジング化による排ガス抑制にも有効な時代の救世主として、いま熱い視線が注がれています。

  • 上部写真:軽自動車に搭載される最小クラスの自動車用ターボ(TD-015:作業者手持ち)と、大型コンテナ船のディーゼルエンジンに搭載される最大クラスの舶用ターボ(MET90MA:後方)。中・大型舶用ターボは原動機事業本部の長崎造船所・幸町工場、自動車用を中心とする小型ターボは汎用機・特車事業本部の相模原製作所をはじめ、海外拠点で生産される。[長崎県・長崎造船所]

経験・リソース・先見性が、次代のターボをつくる

ターボ開発

エンジンの性能を決定づける重要なコンポーネントだけに、ターボ開発にはつねに高いハードルが存在します。 たとえば、自動車用ターボでは、自動車メーカー各社のエンジン開発に深く関わり、エンジンの出力特性や車両搭載時のレイアウトなど、顧客の細やかな要求にお応えするエンジニアリングサポートを密に行いながら、性能・品質・コスト・納期の全要件を満たすターボの開発が進められます。 また、時代を先読みする嗅覚を、研ぎ澄ませる姿勢も重要です。 なかでも舶用ターボ(MET過給機)の新鋭として注目を集める新発想の可変タービン機構を備えたVTI過給機(注1)や、排気ガスによる発電を可能にするハイブリッド過給機は、そんな開発姿勢を象徴するものです。

  • 1VTI(Variable Turbine Inlet)過給機=排気ガスが通るノズルの開口面積を2段階に調整可能とした、可変過給機。低速運行時でも、ノズルの開口面積を狭めてガスの掃気圧を高められるため、タービンをより高速で回転でき、燃費改善の効果を発揮できる。

エンジンに搭載された状態でターボの性能試験が実施される。上の写真は定格回転が6,000回転/分のガソリンエンジンを5,000回転/分で運転しつづけた場合のターボの様子。タービン入り口温度は900℃に達し、高温の排気ガスを長時間浴びた結果、外装部は熱で赤みを帯びている。ガソリンエンジン向けでは排気ガス温度1,050℃に耐えるターボの要求もある。[神奈川県・相模原製作所]

長崎研究所での基礎設計が行われた後、今度はターボ技術部にて、コンプレッサホイールの基本構造において最も重要な翼の厚さと角度が、3D画像で解析される。強度と軽さ(薄さ)、顧客の要望などをすべて勘案のうえ、最適なバランスをシミュレートしていく。[神奈川県・相模原製作所]
MET90MA型に使用されるタービンローター。高速回転機械の開発・製造において世界トップクラスの技術力を有する、三菱重工の豊富なリソースが存分に活かされている。なお、タービンローターおよびコンプレッサホイールは、舶用、自動車用ともに、長崎研究所・ターボ機械研究室において綿密な設計がなされる。[長崎県・長崎造船所]
ハイブリッド過給機(MET42MAG)の縮小モデル。ターボに発電機を内蔵するため、エンジンの排気ガスを無駄なく発電に活用でき、航海中に必要な電力を得ることが可能になる。燃料消費量とCO2の削減も図れることから、エコシップニーズの拡大に伴い、今後の需要増が見込まれる。[長崎県・長崎造船所]

機械と人に宿る、妥協なきものづくりの魂

自動車用ターボの年間生産量が、いまや450万台以上(乗用車用世界シェア22パーセント以上)を超え、さらに世界シェアトップを目指す三菱重工。その成長を支えるのが、ターボの心臓部“カートリッジ(注2)”の生産を完全自動化させた、ほかにも類のない自動化生産ラインです。これを世界の拠点に展開し、製造手法を統一化することで、品質がきわめて安定した高品質・大量生産を実現しています。 一方で、大型のもので全長約3.5メートルを超える舶用ターボの生産では、やはり熟練した人の技や経験を駆使した精緻なものづくりが欠かせません。サイズも用途も異なるターボ製品は、それぞれが最善の方法で造られるのです。

  • 2エンジンの排熱を受けて回転するタービンローターと、外気を圧縮するコンプレッサホイールをセンターハウジングに組み込んだ、ターボの中核部品。
社内製洗浄機によるタービンローターの洗浄作業 [神奈川県・相模原製作所]
自動化生産ラインによる加工・組込みの工程をすべて終え、完成したカートリッジが並ぶ。[神奈川県・相模原製作所]
自動化生産ラインでの加工の工程を終えたタービンローターの外観検査。[神奈川県・相模原製作所]
ターボの中核部品「カートリッジ」を生産する、自動化生産ラインの一部。24時間体制でタービンローターやコンプレッサホイールの各種加工や組込み、測定、検査といった作業をステーション内のロボットが効率的に進めていく。改良を積み重ね、現在では世界でも類のない自動化レベルに達する。 [神奈川県・相模原製作所]
MET66MA型のコンプレッサ翼・前縁部。ターボの性能を左右する翼面やエッジ部などの仕上げは最新鋭の機械でも困難とされ、最終的に人の手の技に委ねられる。[長崎県・長崎造船所]
タービンローター内側へのガスの浸入をくい止めるラビリンスシールフィン。フィン先端は、高温・高速で回転するローター側と1ミリメートル以下の隙間で噛み合う。熟練した作業者は、計測治具と自ら細長く改良したゲージを使い、1/100ミリメートル単位の検査を行っている。
[長崎県・長崎造船所]

明日を拓く装置

高速で回転する、真新しいMET53MA型のコンプレッサホイール。航海中の最高回転数は17,800回転/分にもなり、翼の先端では音速をも凌ぐ480メートル/秒の域にまで達することになる。 [長崎県・長崎造船所]

世界で過熱する、過給技術への期待

船用ターボ(MET90MA)

世界的に環境意識や省エネの気運が高まる今、「ターボ」が存在感を増しています。ターボ搭載のエンジンは出力が大幅に増幅するため、動力性能を保持したままでの小型化が可能。排気量が小さくなれば燃料の消費量が減り、排気ガスが含む有害成分の抑制にもつながることから、欧州車を中心にターボを活用したエンジンのダウンサイジングがトレンド化しています。また、舶用ディーゼルエンジンには従来から出力と燃費向上のためにターボが搭載されてきましたが、近年の省燃費ニーズの上昇に伴い、航続距離を効率的に拡張できる新世代ターボへの期待が高まりつつあります。
加えて自動車や船舶業界では、いずれも環境規制の強化が著しく、たとえば、欧州におけるディーゼル自動車の排ガス規制基準「ユーロ6(注3)」は、ターボ未搭載車でのクリアがまず不可能と言われています。こうした時代背景もターボに追い風となっています。

  • 32015年施行予定

ターボに脈動する、回転体技術の血統

自動車用ターボ(TD015)

三菱重工のターボのラインアップは自動車用から舶用、航空機用まで多岐にわたり、それぞれが独自の生い立ちと歴史を持っています。しかし、ターボの基本構造は、三菱重工が得意領域とするガスタービンやジェットエンジンのそれに重なり、多くの類似点があります。緻密な空力設計が施されたタービンローターやコンプレッサホイールを見れば分かるように、ターボは高速回転機械のリーディングカンパニーである三菱重工の豊富な経験則と知見が凝縮された製品なのです。その実力は、実際に自動車や船舶に搭載され、市場に出た後の故障率の低さからも証明されており、高いユーザー評価の獲得にもつながっています。信頼の血統は確かに受け継がれているのです。

高品質のターボを世界へ、次代へ

ハイブリッド過給機(MET42MAG)の縮小モデル

ターボは世界中で需要のあるグローバルな製品です。自動車用ターボの顧客である自動車メーカーは欧米~アジアにまで広がり、外国企業が80パーセント以上を占めています。これらの顧客と一体となってターボ開発を進め、ジャストインタイムの納入要求やコスト要求にお応えするためには、グローバルな拠点・生産網が不可欠です。そこで三菱重工は欧州の拠点であるオランダ(MEE)を中心に、タイ、中国に生産拠点を設置し、周辺地域にも部品調達のためのサプライヤー網を構築。国内製造品と遜色のない高品質な製品を海外拠点で安定的に製造・供給できる生産体制を築いています。また、三菱重工製のUEエンジンを含め、舶用ディーゼルエンジンの世界3大ブランドに納入されている舶用ターボも、韓国企業大手数社にライセンス生産を委託し、日本の技術を駆使した高性能なターボを世界の船に供給するための基盤を整えつつあります。
三菱重工はターボ技術の可能性を広げるために、低速~高速の全域で過給性能を発揮するディーゼルエンジン乗用車向けの可変2ステージターボや、海運業界で高まるエコシップのニーズにお応えするハイブリッド過給機など、より付加価値の高いターボの開発・製造にも力を注いでいます。これらは、環境・省エネ社会の実現に大きな貢献が期待されており、言うなればターボは、サスティナブル(持続可能)な社会づくりを加速する、希望の装置でもあるのです。

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