ページの先頭です。 ページの本文へ メインメニュー フッタへ
発電の新潮流 ガスタービン 発電の新潮流 ガスタービン

三菱重工グラフ(2011年7月発行)に掲載

製品力[ 陸・海・空、宇宙開発 ]

発電の新潮流 ガスタービン

電力が湧く泉は、1,500℃を越える熱炎のなかにある

  • Linkedin

火力発電所で、電力が作り出されるとき、何が起こっているのでしょうか。
天然ガス焚火力発電所の心臓部であるガスタービンでは金属も溶解する1,500℃(注1)以上の温度に達した燃焼ガスが、膨張しながらタービンブレードと呼ばれる特殊合金の翼に吹きつけられ、3,000回転/分以上の高速で回転。その強大なチカラが軸の先につながる発電機へと伝わり、電気エネルギーに変換されます。ガスタービン単機での出力は主力のG形ガスタービンで33万kW(注2)前後。実に約4万世帯の電力をまかなえる計算(注3)です。いったん稼働を始めたタービンは長期間の運用が求められ、究極の堅牢性と信頼性が試されます

  • 1主力製品であるG形ガスタービンで1,500℃以上、最新のJ形では世界最高温度である1,600℃以上の燃焼ガスが吹き付けられる
  • 250Hz向け701G形の場合
  • 31人当たり2kW使用し、1世帯4人の場合で計算
  • 上部写真:ローターと呼ばれる回転部品が組み上げられる。ガスタービンのローターは複数のリング状のパーツが積み重って構成されるのが特徴。組立後、タービンブレードの組み込み作業工程へと移っていく。[兵庫県・高砂製作所]

世界を制した巧技

ものづくりの国の技と精神が築いた、世界最高峰

自然エネルギー発電に注目が集まる昨今ですが、長らく電力供給を支えてきた火力発電も、目覚しい進化を遂げています。
世界に先駆け、燃焼温度1,600℃級を実現したJ形ガスタービンはその代表格と言えるでしょう。
そして、ガスタービンの排熱を利用して蒸気タービンによる二次発電を行う「ガスタービン・コンバインドサイクル発電(GTCC)」に、この新世代機を適用すれば、世界最高水準の熱効率(60%以上)(注4)と、世界最大となる出力46万kWもの発電量を得ることが可能になります。
火力発電の新たな可能性を示すこの成果は、技術へのあくなき探究心と膨大な経験の蓄積なしに成し得ないものです。

  • 4燃焼した燃料の熱エネルギーから、有効に取り出すことができた電気エネルギー(発生電力量)の割合。例えばガソリン乗用車の場合、動力に変換できる熱効率は30%台となる。

放電加工によってタービンブレードに開けられた無数の穴(翼面冷却孔)が、誤差なく設計どおりに加工されているか専用工具で一つひとつ入念に確認する。1,500℃以上もの高温・高圧の燃焼ガスに長期間さらされ続けるブレードには冷却対策が不可欠だが、冷却孔の加工はその有効な手段の一つ。空洞構造のブレードに開けた直径1~2mmほどの微細な穴から内部に空気を通し、高い冷却効果を得る仕組みだ。 [兵庫県・高砂製作所]

難度の高い、ガスタービン用燃焼器の溶接作業。この燃焼器には冷却構造が仕込まれている。肉厚5mm程度の耐熱金属の板の内部には、冷却用の蒸気や空気を循環させるための2mmほどの細い溝が張り巡らされているため、複数のパーツをつなぎ合わせる作業には高度な技術を要する。機械化も不可能な繊細な作業は、厳しい認定試験をパスした熟練溶接者の手に委ねられる。[兵庫県・高砂製作所]
難度の高い、ガスタービン用燃焼器の溶接作業。この燃焼器には冷却構造が仕込まれている。肉厚5mm程度の耐熱金属の板の内部には、冷却用の蒸気や空気を循環させるための2mmほどの細い溝が張り巡らされているため、複数のパーツをつなぎ合わせる作業には高度な技術を要する。機械化も不可能な繊細な作業は、厳しい認定試験をパスした熟練溶接者の手に委ねられる。[兵庫県・高砂製作所]
慎重かつ丁寧に進められる、蒸気タービンの翼植え作業。“止翼”と呼ばれる一枚は、安全上最も重要な位置にあるブレード。この最後の一枚に至るまでのすべてのブレードが、技術者の手によって寸分の狂いもなく収められる。[長崎県・長崎造船所]
三日三晩の時間をかけて、ガスタービンローターの組み上げ作業が行われる。大きなリング状のパーツが、12本のボルトを使って約600MPa(力で表すと約4,500t)という想像を絶する圧力で締め付けられる。[兵庫県・高砂製作所]
蒸気タービン用のブレードが、熟練の技術者によって一つひとつ丁寧に検査される。ほんの些細な傷でも大事故を誘発しかねないため、組み上げの前後で細心の注意のもと点検が行われる。小さな部品ひとつに携わる者でも、その仕事の先に広がる「電気を安定供給する」ことへの責任と誇りを胸に、業務に従事している。[長崎県・長崎造船所]

全てに通じる叡智

プラント全域を知り尽くす総合力が、安全を創る

最先端のガスタービン開発で世界をリードする三菱重工。その専門領域は広大深遠、プラント開発全域に及んでいます。
GTCCの場合では、ガスタービンから排出される高温ガスの通り道であるガスタービン排気ダクトや高温ガスの熱を利用して水を蒸気に変える排熱回収ボイラ、その蒸気を受けて二度目の発電を行うための蒸気タービンまで、開発・製造を一手に手がけています。
さらに、GTCCの実証設備による製品検証、プラント全域の配管やモジュールの接合、制御までを担うことで、すべての設備をバランス良く連携・機能させ、より安全な発電に貢献。この総合力こそ、三菱重工の真骨頂です。

ガスタービン排気ダクトモジュールの内部。ガスタービンから排出された約700℃のガスがこの筒を通り、排熱回収ボイラモジュールへと送られる。筒の外側には断熱加工が施され、外壁の温度はわずか40℃に抑えられる。
[長崎県・長崎造船所]
排熱回収ボイラモジュールの内部。高温の排気ガスが通り抜ける空間には、水を蒸気に変える伝熱管(赤色のチューブ)が隙間無く設置されている。縦13.5m×横18m×高さ8.5mのエリアにその数、1万3千本以上。また、チューブの外周には、熱吸収を高めるためにフィンがびっしりと加工され、チューブ内の水に熱が無駄なく伝えられる。
[長崎県・長崎造船所]
製造工程における度重なる検査・試験を経て、出荷前の最終点検を受ける蒸気タービン。GTCCプラントでは、伝熱管でつくられた高温の蒸気が蒸気タービンに吹き付けられ、その回転力から電気が作られる。納入するGTCCプラントの規模や仕様に応じ、さまざまなサイズの蒸気タービンが製造されている。
[長崎県・長崎造船所]

電力を世界中のひとの手に

長崎造船所ではGTCCで使われる蒸気タービンをはじめ、排気ダクトや排熱回収ボイラといった大型モジュールの製造が行われる。写真の排熱回収ボイラモジュールは重量が約4,000tと、モジュール化されたボイラとして世界最大を誇る。モジュールには配管設備や電気部品などがすべて組み込まれているため、納入先となる発電所での大幅な工期の短縮や現地管理の軽減化を図ることが可能だ。[長崎県・長崎造船所]

次世代ガスタービンへの挑戦で磨かれる、品質と性能の新次元

J形ガスタービン

ガスタービン開発は、「熱」との闘いです。タービンブレードに吹き込まれる燃料の燃焼温度が上がるほど発電効率は向上し、これに伴い単位出力あたりのCO2の排出量も少なくできるからです。三菱重工は、1,200℃級のD形の開発を皮切りに、1,400℃級のF形、1,500℃級のG形へと挑戦をつづけ、いよいよタービン入力温度1,600℃級を誇る、最新鋭J形の市場投入を目前にしています。
この温度域における100℃の壁は厚いものの、これまでF形、G形の開発で培った高温化設計技術に、国家プロジェクト1,700℃級ガスタービン要素技術開発への参画で得た技術(タービン冷却、遮熱コーティング、高性能タービン)を適用することで世界一の熱効率は実現しました。
こうして培われたJ形の最新技術は主力モデルのG形などの既存モデルにも適用され、性能や信頼性のアップデートが図られています。いわば、すべての三菱重工製ガスタービンが、進化を止めない最新作なのです。

積極的なグローバル展開で、日本の高度な発電技術を世界に届けたい

タイ国のガスタービン高温部品補修工場

先進国や新興国のいずれでも、今後はGTCCのニーズ拡大が予想されています。燃費の良さはもちろん、安価な非在来型ガス(シェールガス)の発見や、老朽化した石炭火力発電の置き換え需要の伸びもその理由です。
火力発電の懸念は環境性ですが、最新鋭のJ形ガスタービンを適用したGTCCでは、CO2の発生量を従来型石炭火力発電の約50%に抑制できるほど環境負荷も小さくなりました。しかし、いかに優れた発電技術であれ、世界に広く普及し、活用されなければ存在しないも同様です。そこで三菱重工は、世界の市場向けに現地工場や合弁企業を設立するなど、グローバル展開を積極化しています。
最近の例でも、北米の需要に応える米国・ジョージア州の原動機工場、タイではアジア市場向けのタービン高温部品補修工場が順次竣工。これにより製品の低コスト化や迅速で行き届いたサービスの提供が可能になり、日本の高水準な技術を届ける基盤は整い始めています。

エネルギーのあらゆる未来に貢献する、三菱重工の発電技術

IGCC

将来、発電のメインストリームには、何が踊り出るのでしょうか。その行方は、それぞれの国・地域が保有する資源の状況や環境政策などによって大きく異なることでしょう。そんな中、電力供給の中核をなす火力発電や原子力発電をはじめ、多様な発電技術に通じる三菱重工の活躍の場は、ますます広がることになります。 例えば、埋蔵量の豊富な石炭をガス化して燃料に使うIGCC(石炭ガス化複合発電)では、世界最高効率を達成。また、自然エネルギー発電の分野でも、需要が拡大する風力発電や、世界シェアでトップクラスの地熱発電など、あらゆる発電ニーズに対して提案が可能です。 こうした広範な製品・技術に取り組む理由には、ビジネスの側面だけでなく、人々の営みに欠かせない電力の安定供給に少しでも貢献したいと願う、社員一人ひとりの熱い意志があります。三菱重工はそんな使命感を抱いて、目の前に広がる発電技術の未来を見つめています。

関連記事