ページの先頭です。 ページの本文へ メインメニュー フッタへ
石炭新時代の幕開け 石炭新時代の幕開け

三菱重工グラフ(2013年7月発行)に掲載

技術力[ 環境 ]

石炭新時代の幕開け

クリーンにエネルギーを創出する石炭ガス化複合発電

  • Linkedin

三菱重工が基本設計からガス化炉、ガスタービンなどの設備、プラントエンジニアリングまで1社単独で供給した、国内初のIGCCプラント。実証試験で高効率性(42.9パーセント送電端(注1))や、長時間の連続運転など信頼性を確立し、2013年6月に商用運転を開始。

  • 1発電機が発電した電力量から、発電所内で消費する電力量を差し引いたうえで計算される発電効率
  • 〔写真:福島県・常磐共同火力(株)勿来発電所ほか〕

石炭活用の可能性を広げる高効率・低環境負荷の新技術

かつて“黒いダイヤ”と呼ばれ、日本の産業発展の糧となってきた石炭は、第2次世界大戦後、石油にエネルギー源の主役の座を譲り渡しました。しかし1970年代から始まったオイルショックを機に再評価され、産業燃料や発電燃料として活用されるようになり、現在では世界の電力の約4割を賄う重要なエネルギー源となっています。
石炭は、石油や天然ガスに比べて埋蔵量が豊富であり、しかも産炭地が世界中に偏りなく分布。そのため供給安定性や経済性に優れ、特に資源の乏しい日本にとっては、エネルギー・セキュリティーを確保するために不可欠な存在です。
東日本大震災以降、日本では火力発電の需要が高まっているものの、従来の石炭火力発電では、ボイラーで石炭を燃やし蒸気を発生させ、その力でタービンを回して発電するため、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する効率は40パーセント強にとどまってしまいます。また石炭は燃焼時に排出するCO2がほかの化石燃料に比べて多いため、地球温暖化に与える悪影響も否定できません。3E(注2)を同時実現させる持続可能な社会を実現していくためには、環境負荷を抑えながら発電効率を高め、石炭をスマートに使いこなす“クリーンコールテクノロジー”の開発が重要になってきます。
CO2排出量を低減させ、発電効率も向上させる。石炭を使用した発電でありながらこの2つを同時に解決するのが、石炭をガス化し、ガスタービンと蒸気タービンを使って2段階の発電を行う石炭ガス化複合発電(Integrated coal Gasification Combined Cycle:IGCC)です。
三菱重工では、1980年代からこの技術の研究・開発を推進。数々の独自技術を積み重ね、実証試験を通して信頼性を示してきました。そしてついに、2013年6月にIGCC実証設備が商用プラントとして稼働。世界をリードする技術が実用化へのスタートを切り、石炭の有効活用に新たな光を灯しはじめました。

  • 2エネルギー安定供給(Energy Security)、環境保全(Environmental Protection)、持続的経済発展(Economic Growth)

独自技術の粋を集めて

一歩先をゆく研究・開発が適えた石炭ガス化のテクノロジー

IGCCのプラントは、まず石炭を高温に保ったガス化炉内で蒸し焼きにし、可燃性のガスを生成。そのガスを使い、ガスタービンを回します。
さらにガスタービンの排熱を利用して蒸気タービンを回すという、二重の発電サイクルを持つコンバインドサイクルが大きな特徴です。
三菱重工は1983年、オイルショックを機にいち早く石炭ガス化の研究・開発に着手。
組織の垣根を越えてさまざまな分野の研究者や設計者を集め、自社内に実証設備を建設し、独自性のある高度な技術を培ってきました。
なかでも特筆すべきは、ガス化剤に空気を使用する「空気吹き」の技術です。
各社が酸素を使用する「酸素吹き」を採用する中、三菱重工は、この技術の実用化を世界で唯一達成し、発電効率を飛躍的に向上させました。そのほか、石炭を高濃度に保った窒素の気流に乗せてガス化炉に送る「乾式給炭」や、使用できる石炭の種類の拡大など、三菱重工の先見性を示す多くの技術が集約されています。

世界中から輸入された石炭が積み上げられた貯炭場。三菱重工の石炭ガス化技術では、水分が重量の半分以上を占める低品位の石炭(褐炭)も燃料として使用することが可能。

微粉炭を運ぶ窒素を生成するための空気分離装置。ここで使用される設備は酸素吹きで用いられるものより非常に小型で電力消費量も少ないため、発電プラント全体の発電効率を高めることができる。
A
B

石炭を微粉炭機で約0.1ミリメートル以下にまで細かく砕く(写真A)。砕かれた石炭は表面積が大きくなり、より効率よく燃えるようになる(写真B)。

C
D
E

石炭からガスを生成するガス化炉(写真C)。ここに微粉炭と空気が吹き込まれ石炭ガスが生み出される。その際に発生した排熱は熱交換器を利用して蒸気に変え、蒸気タービンによる2度目の発電に使用する(写真D)。ガス化後、燃え残った灰(写真E)は溶融し、ガス化炉下部の水中に流れ落ちる。その後、急冷されてガラス状に固まり排出される。

持続可能な社会の動力源

効率性の追求が生み出した省資源・省コスト

三菱重工は、IGCCプラントの効率性を追求し、あらゆる技術を投入してきました。
高効率にエネルギー転換できる石炭ガス化炉に、ガスタービン、蒸気タービンなどを協調させることに加え、そこで生じる排熱も無駄なく利用。この仕組みにより、最新鋭の石炭火力発電(超々臨界圧石炭火力発電:USC)より10~15パーセントも高い発電効率を実現しました。ゆえに、USCより少ない燃料で同じ電力量を供給できるためCO2排出量も約10パーセント低減でき、それは石油火力発電での排出量とほぼ同等となります。
加えて、ガス化後に生じる石炭の燃えかすも、ガラス状のスラグ(注3)として排出することで容積を削減。硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、ばいじん、温排水など大気・海洋汚染物質の排出量も減らすことができるため、環境負荷の大きな抑制効果が期待できます。
これらによりIGCCは、高い発電効率とともに省資源・省コストを実現する、持続可能な社会の明日を担う発電方式の有力候補と目されています。

  • 3灰を高温で溶融した際に生成される固形物
[写真中央~右] ガス化炉で生成されたガスはガス精製装置に送られる。ガスに含まれる硫黄化合物は、ガスタービンや、下流設備の腐食や摩耗を引き起こし、大気汚染の原因にもなるためここで除去する。 [写真左] ガスタービンから排出される高温の排出ガスを使用し、蒸気を発生させる排熱回収ボイラー。その蒸気を蒸気タービンに送り、2度目の発電に利用。
豊富な実績をもつ三菱重工製ガスタービンが高効率を支える。現在は1,200℃級が使用されているが、今後、より高温に耐えられる機種の適用により高効率化が見込める。
中央操作室では、ガス化炉に投入する石炭量の調整や、各設備のバルブの開閉などを行い、発電量をコントロールしている。

ガラス状のスラグを一時的に蓄えておく貯蔵設備であるスラグホッパー。
ガラス状のスラグは水に溶けにくく、セメントやアスファルト舗装材の高品質な材料として利用することが可能。

発電の新領域へ

IGCCの先駆者として、エネルギーと環境の未来に希望を

石炭ガス化炉、ガスタービン、蒸気タービンなどを組み合わせた複雑なシステムであるIGCCプラント。
これらを効率よくまとめあげ、確実に運用することは、各設備の協調設計や高度なエンジニアリング力を有する三菱重工の真骨頂といえるでしょう。実際に、勿来のIGCC実証プラントでは、試運転からわずか1年以内で連続運転2,238時間を達成。これは世界的にも例のない最速の実績であり、スムーズな連携の成果です。
今後もIGCCの周辺では、新たな技術が産声を上げていくでしょう。世界最高レベルの効率を誇るJ形ガスタービンの投入や、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を組み合わせたトリプルコンバインドサイクル発電(石炭ガス化燃料電池複合発電:IGFC)などが実現すれば、発電効率が65パーセントを超えるような発電システムも現実味を帯びてきます。
三菱重工は、次世代のエネルギー活用の中核技術となるIGCCの先駆者として、より高効率かつ低環境負荷な次世代発電システムを開発していきます。先進性と独自性にあふれた技術力が生み出すパラダイムシフトは、エネルギー新時代の扉を力強く押し開き、さらに先へと進むことでしょう。

J形ガスタービン: 三菱重工の独自技術により開発されたJ形ガスタービンは、タービン入口温度1,600℃級で世界最高レベルの効率を誇る。
石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC): 耐久性があり長寿命な燃料電池であるSOFCと、IGCCを組み合わせたトリプルコンバインドサイクルは、非常に高い発電効率を実現する方式として将来的に期待されている。

関連記事