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地に宿る電力 地に宿る電力

三菱重工グラフ(2012年2月発行)に掲載

技術力[ エネルギー ]

地に宿る電力

莫大な地中のエネルギーを
活用する地熱発電

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地球の体積の80パーセント以上は熱いマントルで満たされています。この地殻の下の熱エネルギーによって高温に達した蒸気や熱水を使い、電力の創出・供給を図る仕組みが地熱発電です。発電用のタービンを回すための蒸気は地球から取り出すため、資源の消費も、発電時のCO2発生もなく、さらに気象条件に左右されず、安定的に電力をつくり出せるというメリットも持っています。
地熱発電は、風力発電などと並ぶ再生可能エネルギーのひとつとして、世界で利用が広がりつつあります。

  • 上部写真:大分県・九州電力(株)八丁原発電所

自然と共存し、好サイクルを繰り返すプラント

地熱発電プラントでは、地下300~3,000メートル(注1)の地熱貯留層まで掘られた井戸(生産井)から蒸気や熱水を取り出して利用します。
そこには、大切な地下資源への配慮が盛り込まれ、利用後の熱水は複数の還元用の井戸(還元井)から地中へ還す仕組みになっています。また、タービンを回した後の蒸気は、一部は水に変えて冷却水として利用し、一部は冷却塔から湯気となって大気へ放出。それは雨となって地上に戻り、地中に染み込んで再び地熱資源へと変わります。まさに、自然の摂理にもかなった好循環を繰り返す、エコロジカルなプラントなのです。

  • 1九州電力(株)八丁原発電所では、地下2,000~3,000メートルの地熱貯留層から蒸気と熱水を取り出しています。
写真:大分県・九州電力(株)八丁原発電所
地中からの熱源は、気水分離器(写真右側)で蒸気と熱水に分けられ、蒸気はタービンへ送り発電機を回転させます。その力は、およそ25トンのタービンローターを毎分3,600回転させ、55,000キロワットもの電力を生み出すほどです。(写真は、メンテナンスで発電設備を止めた際に、本来タービンへ届けられる蒸気をサイレンサから放出したときのもの。通常はこの蒸気が発電に使用されます) 〔大分県・九州電力(株)八丁原発電所〕
写真:大分県・九州電力(株)大岳発電所
山中の生産井から発電プラントへ蒸気を運ぶ輸送管。自然の地形に合わせ、木々の中をめぐる姿は山間部に立地することの多い地熱発電プラントの象徴的な景観です。 〔大分県・九州電力(株)大岳発電所〕
写真:大分県・九州電力(株)八丁原発電所
生産井から取り出した蒸気と熱水(二相流体)を1本の管で低コストに発電所へ送る「二相流体輸送管」。三菱重工が世界で初めてダブルフラッシュサイクルと併用稼働し、今や世界標準となりました。
〔大分県・九州電力(株)八丁原発電所〕
写真:大分県・九州電力(株)八丁原発電所
気水分離器(写真左側)で蒸気と分けられた熱水は、フラッシャ(写真右側)へ送られます。フラッシャで減圧することで発生させた蒸気をタービンへ送り、ここで分離された低温の熱水は還元井から地中へ戻します。
〔大分県・九州電力(株)八丁原発電所〕
写真:大分県・九州電力(株)八丁原発電所
タービンから排気された蒸気は、復水器で冷やされて温水となり、冷却塔(クーリングタワー)に送られます。ここで大気に触れてさらに冷やされ、復水器に戻り冷却水として再利用されます。このように地熱発電プラントでは、外部から冷却用の水を補給する必要がなく、水源が限られる山間部に適したシステムといえます。
〔大分県・九州電力(株)八丁原発電所〕

挑戦の蓄積なしには得られない、地熱の恩恵

地熱エネルギーを発電プラントで活用するためには、高度な設備設計や入念な材料選定が欠かせません。地中に貯まる天然の蒸気や熱水には多量の不純物が含まれ、プラントの配管やタービン内部に入り込み、金属の腐蝕・浸食による損傷や設備の機能低下を招くからです。また、含まれる成分はその土地ごとに異なるため、ここで活きるのが世界13カ国におよぶ現地材料試験や実運転で蓄積した膨大な知見です。これにより環境やニーズに合わせて的確で柔軟な設計・材料選定を行い、火力発電にも並ぶ稼働率と信頼性をさらなる高みへ導こうとしています。

写真:大分県・九州電力(株)八丁原発電所
保守・点検を終えた地熱発電用蒸気タービンが100分の1ミリメートルの精度で調整され、上車室が被せられます。三菱重工は、蒸気タービンを日本で初めて製造。以降、火力、原子力などさまざまな発電プラント向けに蒸気タービンを開発・製造してきただけでなく、保守まで一貫して提供。その豊富な実績と、そこから得られる知見により、つねにタービンの開発技術を磨き続けています。
〔大分県・九州電力(株)八丁原発電所〕
写真:長崎県・長崎研究所
タービンに使用する素材を検討するために行う「電気化学腐食試験」。地熱用タービンの過酷な腐食環境を人工的につくり出し、そこに候補材料を入れて腐食性を確認・調査して、腐食環境に強い材料を絞り込みます。
〔長崎県・長崎研究所〕
写真:長崎県・長崎研究所
タービンの信頼性を高めるための、候補材料の腐食環境下での動的応力に対する強度の検証。直径6ミリメートルの候補材料を天然の地熱蒸気にさらし、繰り返し数百万回の負荷をかけ、疲労強度を調べる「片持式回転曲げ腐食疲労試験」。この素材研究の膨大なデータによって、世界各地の地熱蒸気に応じた蒸気タービンの設計が可能です。
写真:長崎県・長崎造船所
写真:タービン内で最も蒸気入口に近い第1段ノズルに、スケール(湯垢)が付着している様子。

鋳物工場における鋳造工程の様子。地熱発電プラントで使用される機器・部品のなかでも特に主機の蒸気タービンや地熱特有の機器などは自社内で製造され、鋳造部品もそのひとつ。約1,600℃に溶けた金属を人工セラミック砂でつくった鋳型の中に流し込む作業は圧巻です。

写真:スケール(湯垢)が付着している様子

タービン内で最も蒸気入口に近い第1段ノズルに、地熱蒸気中の不純物であるスケール(湯垢)が付着した様子。発電機の出力低下の要因になり、発電中でもノズルの洗浄が可能なシステムを開発し、実適用しています。

大地のエネルギーを、その先へ

写真:レイキャビクエナジー社・ヘッドリスヘイディ地熱発電所(アイスランド)
レイキャビクエナジー社・ヘッドリスヘイディ地熱発電所(アイスランド)

世界が関心を寄せる地熱のパワー

写真:ミンダナオ発電所(フィリピン)
ミンダナオ発電所(フィリピン)

今、米国をはじめ世界各地で地熱開発が拡大し、世界の地熱発電における発電設備容量は、2015年には現在の約1.8倍の約1,850万キロワットに達する見込みです。
地熱発電は「燃料価格の影響を受けない」、「天候や季節、昼夜を問わず安定的に稼働」、「数百キロワット程度の自家発電から数十万キロワット規模の発電所まで幅広いレンジで運用可能」などの理由から有望視されています。とりわけ地熱の資源量で世界第3位の日本を含め、地下熱源が豊富な火山国では、純国産のエネルギーとして活用できる点も魅力です。

地熱事業を開拓してきた三菱重工

三菱重工が地熱発電プラントを初めて納入したのは1967年稼働の大岳発電所向けでした。九州電力による日本初の熱水卓越型地熱発電所で、蒸気と熱水が混在する生産井での地熱発電は、当時、高度な技術力を要しましたが、地熱流体を気水分離器で蒸気と熱水とに分離し、その乾燥した蒸気でタービンを回す「フラッシュサイクル方式」によって見事、成功しました。
1977年には気水分離器で分離した熱水から再度蒸気を取り出し、タービンに追加投入して発電効率を高める「ダブルフラッシュサイクル方式」を八丁原発電所で実現。これを二相流体輸送とともに適用したのは世界初の技術的快挙であり、"ハッチョウバルタイプ"として三菱重工の地熱発電プラントの実力を世界に知らしめる契機となりました。

写真:オルカリアII発電所(ケニア)
オルカリアII発電所(ケニア)
写真:モカイII発電所(ニュージーランド)
モカイII発電所(ニュージーランド)

さらにこの年、地熱資源が低温の場合でも効率的に発電が行える「バイナリーサイクル方式」のプラント開発を大岳発電所で手がけるなど、三菱重工は日本だけでなく世界の地熱発電でも、つねに新たな時代を開拓・牽引してきました。
また、1975年にスタートした海外展開も中米・エルサルバドルを皮切りに、北米やアイスランド、フィリピンなど、世界13カ国で受注し、今や地熱発電での総出力で世界一を達成。地熱発電プラントのエキスパートとしての存在感を国内外に示しています。

累計100基の実績を誇りに、前へ

地熱発電に早くから関わる中で、三菱重工が実らせた発想や技術は少なくありません。先に紹介した腐食対策やダブルフラッシュサイクル、周辺の景観を守るためのプラントの低床設計など、今や地熱発電でスタンダードといえる技術を数多く生み出しています。
現在、三菱重工は地熱発電の受注件数が累計100基に達し、その背景にはこうした高い技術水準をはじめ、地熱発電の設計、開発、施工、運用管理や保守まで全プロセスを託すことのできる信頼感、つねにユーザー視点でご対応する日本企業ならではの細やかなサービスがあります。
地熱への情熱は三菱重工に脈々と息づくDNAであり、この可能性あるエネルギーの拡大にかける使命感はこれからも途絶えることはありません。

写真:ゲルメンテック発電所(トルコ)
ゲルメンテック発電所(トルコ)

地熱発電プラント 受注実績

写真:地熱発電プラント 受注実績(2010年12月現在、総出力ベース)
(2010年12月現在、総出力ベース)

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