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高度な要求に技術でお応えするターボ冷凍機の精鋭たち 高度な要求に技術でお応えするターボ冷凍機の精鋭たち

三菱重工グラフ(2012年10月発行)に掲載

実績[ インフラ設備 ]

高度な要求に技術でお応えするターボ冷凍機の精鋭たち

マリーナベイエリアの地域冷房システム

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オフィスビルやホテルなどへ冷水や温水を一括供給し、その冷水・温水を建物内に循環させて冷暖房を行う「地域冷暖房システム」。1台でエアコン数千台分もの能力を持ち、個々に熱源設備を設ける場合に比べて大幅な省エネを実現し、今、世界中で導入されています。
三菱重工は2002年、開発が進むシンガポールの新都心「マリーナベイエリア」の大型地域冷房プラントを初受注。現在ではその主機となるターボ冷凍機(注1)が総計14台活躍し、リゾート施設やビジネスセンターのあるマリーナべイエリア全域の空調を支えています。2012年、3回目の受注となったプロジェクトで、顧客からの新たな要求は「1台で冷房と氷蓄熱の2通りの使い方」の実現。この課題にお応えしたのは、ターボ冷凍機に飽くなき情熱を注いできた技術者たちでした。

  • 1地域冷暖房システムの主機として使用される大型冷凍機。機内で冷媒を蒸発・圧縮・凝縮・膨張させて循環し、冷房用の冷水を製造します。
  • 上部写真:国際的なリゾート施設の建設が進む、シンガポール新都心「マリーナベイエリア」。

要求を引き出し、応えるのはリーダーの責任

写真:大型冷凍機部メンバー
冷熱事業本部 大型冷凍機部
設計課 ターボチーム主任 竹本 明広
設計課 電気チーム 池野 泰弘
設計課 主席技師 白方 芳典

世界の中でも環境意識が高い国、シンガポール。近年は、ビルにも環境性能の評価基準が設けられ、高い省エネ基準をクリアするビルへの入居はテナントにとっても名誉になるとされています。それだけに、ビルの空調を担う地域冷暖房システムにも省エネ性能が厳しく求められます。シンガポール経済の目覚しい成長を象徴するマリーナベイエリアを担当し、現在、プロジェクトリーダーを務める白方は顧客との橋渡しを務め、ニーズを引き出し、それにお応えする技術をご提案。性能に関心が高い顧客には、営業部門だけではなく、彼のような技術者も顧客と向き合います。白方は「第1、2期のプロジェクトで先輩方が残してきた実績が、お客さまの信頼につながっています。要求はとても厳しいですが、それも弊社の技術への期待感からだと思います。その要求にお応えし、自分も次のプロジェクトへとつないでいかなければならない」と第3期リーダーとしての責任の重さを語ります。事実、第1期に比べて第2期の要求はよりシビアになり、この第3期プロジェクトで彼は新たな課題に直面します。

電力市場の自由化が進むシンガポールでは、30分ごとに電力価格が変動し、無料に近いほど極端に安い状況も発生。この時間帯につくった氷の蓄熱槽で冷やせば、大幅な省エネが可能です。そこで求められたのが通常の冷水で冷やす「冷水運転モード」と、氷蓄熱のために0度以下に冷却された不凍液で冷やす「製氷運転モード」を備え、1台で2通りの運転ができるターボ冷凍機です。そのうえコンパクトで、約3,700RT(注2)という大容量のものでした。このオーダーに白方は、効率的な運転には、冷水運転用と製氷運転用の蒸発器を別に備える「ダブルエバポレータ仕様」が最適だと考えました。「技術的には可能ですが、大容量で実現するのは初めてのことで、さらに設置スペースにも課題がありました。そこで、計画段階での打ち合わせのその場でレイアウト図を描き、お客さまにどう省スペースに設計するかをご提案しました」と振り返ります。結果、他社を凌ぐ技術と発想で第3期も受注を獲得しました。

  • 2RT=冷凍トン。ターボ冷凍機の冷凍能力の単位。1RTはおよそ家庭用エアコン1台分。

複雑な構造を具現化する、ターボの精鋭たち

プロジェクトチームを結成する際、白方は機械の設計に竹本、制御担当に池野を起用。竹本は横浜みなとみらい21地区や成田空港の大型冷凍機を担当したスペシャリスト。池野は、日頃から開発品と受注品の両方の設計をこなしスピード感のある対応で、この2人を白方は迷いなく選びました。

竹本はかつて、別の納入先で容量の小さなダブルエバポレータ仕様の冷凍機を手掛け、その経験が今回活かされたと語ります。「そのとき、製氷運転中に誤って冷水用の装置が凍り、機械が破損するトラブルがありました。そこで今回は配管をシンプルな構成にして、製氷運転用と冷水運転用の蒸発器をしっかりと隔離しました」。さらに大容量ゆえに機械自体の大きさにも悩み、「機械の全高は6メートル以上もありますが、組立時の要求精度は1ミリメートル以下です。設計上、十分配慮したつもりが、現場ではその大きさから設計変更が求められ調整が必要となったこともしばしば。そのたびに、設計をやり直し調整をしました。組立など現場のスタッフも一丸となって解決してくれました」と力を合わせた当時を語ります。

写真:大型冷凍機部メンバー
世界最高レベルの冷房効率を誇るターボ冷熱機を手掛けた大型冷凍機部メンバー

また今回のダブルエバポレータ仕様は熱交換器の数が多く、その分、池野にも多くの苦労がありました。「制御の図面だけでも600枚ほどになる複雑なプログラムでした。制御担当としては、何より避けたいのが機械自体を損傷してしまう制御上のミス。今回の構造は、もし何かのトラブルで製氷運転の影響を受けて冷水運転用の水が凍ると、破損の恐れがある難しい構造でした。そのため機械的な問題が生じても、破損を防ぐことができるプログラムに設計する必要があり、とても神経をすり減らしました」と精力を注いだ日々を振り返ります。

彼ら技術者たちの努力が形となり、晴れて日本での性能試験の日を迎えました。来日した顧客が注視する中、実機は見事性能を発揮。顧客から「三菱重工はいつも求める性能を発揮する製品をつくりあげてくれるが、今回もまさにきちんと仕上げてもらった」という言葉とともに、次の計画につながるご相談もいただいたそうです。白方はその喜びを思い出しながら「試運転で性能を発揮できて当たり前。その後、運用でも満足いただきたい。だからこそ、そこで獲得した信頼が次のオーダーにつながったとき、まさに技術者冥利につきます」と語りました。

これからも、その先も求められる製品へ

顧客の要求を、技術と経験を存分に活かし具体化した技術者たち。竹本はこの仕事の面白みについて「製品の設計から、最終的に性能が発揮されるまで一貫して担当できます。責任は重いですがやりがいも大きい。また製品は冷房だけでなく、シビアな湿度・温度管理が求められる工場空調でも活躍しています。自分の手掛けた"ものづくり"が次の"ものづくり"も支えていると思うとさらにやりがいを感じます」と語りました。また池野は「冷凍機は世の中に必要なもの。だからお客さまの要求にひとつずつお応えして良い製品をつくっていくことが、人の役に立ち、エコにもつながります。当社は機械部分だけでなく、制御基盤も一貫して自社内で手掛けているので、お客さまの多様な要求にお応えできることが多い。だからこそ、もっと多くのお客さまを獲得できるチャンスがある」と夢を描きます。そして彼らを率いた白方は「空調のニーズは絶対になくならない。だからこそ信頼性の高いターボ冷凍機をお客さまにご提案し、次のプロジェクトへつないでいきたい。また、若手に自分の世代の経験を伝え、海外で活躍する機会を与えて、同じ仕事をする仲間を増やしていきたい」と未来を見つめます。

三菱重工のターボ冷凍機はマリーナベイエリアを足掛かりに、近隣国や新たなマーケットの開拓を目指します。世界を舞台に彼らは信頼をつなぎ、さらなる認知、普及拡大へつなげていくことでしょう。

写真:シンガポール新都心マリーナベイエリア
イラスト:マリーナベイエリア第3期プロジェクトで2台納品予定の「AART-380PLS」
マリーナべイエリア第3期プロジェクトで2台納品予定の「AART-380PLS」(イメージ)。1台の冷房能力は、家庭用エアコン3,697台分相当。冷水運転用と製氷運転用の蒸発器を備えた「ダブルエバポレータ仕様」が特長です。

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