Mitsubishi
Heavy
Industries
PROJECT STORY
ターボチャージャ

サステナブルな
社会を実現するために。
世界中から求められる
高品質のターボチャージャ。

Project Outline

地球規模の課題に応える

CO2など温室効果ガスの増加で地球の平均気温は上がり続け、各地で異常気象が頻発する中、新しい国際ルール「パリ協定」が発効されるなど、地球温暖化対策はまさに世界共通の喫緊の課題となっている。そうした中で、三菱重工のターボチャージャはエンジンの空気を制御し、排気ガスをクリーンにするものとして大きな関心を寄せられている。
ターボチャージャは、スポーツカー等、特別なものに搭載されるイメージを持たれているが、実は一般の自動車やバス・トラック、建設機械や発電機、さらには船舶のエンジンに至るまで、その活躍の場は実に様々で幅広い。その市場規模も欧州やアジアを中心に拡大基調にあり、年間10数%ずつ成長するとも言われている。

ターボチャージャを
抜きにしては語れない時代

2000年代から排ガス規制が強化されてきた欧州では、燃費のいいディーゼルエンジンが普及し、ターボチャージャで出力を増強することが常識となっていた。現在ターボチャージャは、エンジンのダウンサイジングを可能にし、排ガスを抑制する有効な手段として、ディーゼルエンジンのみならず、ガソリンエンジンにも広く搭載されている。環境・省エネ社会の救世主として、今やエンジンは、ターボチャージャを抜きして語れない時代に突入している。
ターボチャージャの開発・製造には、緻密な設計・生産技術や高度なノウハウの蓄積が求められ、現在、これらを備えた三菱重工を含むメーカー4社が世界市場の9割以上のシェアを握っている。三菱重工はこのアドバンテージを活かし、一層のシェアの拡大に取り組んでいるのだ。2015年には、これまで需要が低調だった米国(インディアナ州フランクリン市)において、ターボチャージャの本格的な量産を開始。燃費規制強化を背景に高まってきた、ターボチャージャ搭載エンジンへのニーズにいち早く応えている。北米での現地生産は、品質・コスト面での競争力強化、納期短縮につながる。三菱重工は、グローバル生産能力年間1,100万台体制構築に向け、各拠点で生産増強に向けた投資を行っており、この米国工場稼働は、まさにその取り組みの礎となるプロジェクトなのだ。

技術の可能性を
さらに広げるために

今日、自動車業界は排ガス規制の強化が著しく、欧州では2014年に新たな基準「ユーロ6」が施行され、ターボチャージャなくして基準をクリアすることはまず不可能と言われている。三菱重工はターボチャージャ技術の可能性をさらに広げるため、ハイブリッドエンジン向けの電動2ステージターボの開発等にも力を注いでいる。
これらは、環境・省エネ社会の実現に大きく貢献するもので、ターボチャージャは、まさにサステナブル(持続可能)な社会づくりを加速させる、希望の装置。三菱重工は、自動車用ターボチャージャでの世界トップシェアの獲得を目指し、世界中の期待に応え、環境とクルマの新たな関係性を描いていく。

現地担当者の声
仲村 理

Osamu Nakamura
三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
品質保証部 ターボ保証課
2010年入社
機械工学専攻修了

高品質の製品作りを支え、
北米シェア拡大に向き合う

ターボチャージャの北米シェア拡大とお客様である自動車メーカー対応のため、三菱重工がインディアナ州に工場を立ち上げたのが2014年のこと。私は2016年から北米駐在となり、Quality Advisorという立場で品質保証体制の構築に携わることになりました。品質保証部の役割は大きく分けて2つあり、1つは納入される部品の品質保証と取引先の品質管理といった取引先(サプライヤー)対応で、もう1つは不具合発生時の対応(原因調査と対策実施)や新規モデル立ち上げ時の顧客要求事項への対応及び製品の保証といったお客様(カスタマー)対応です。私は主に取引先の品質管理業務(新規部品の工程監査、工程変更の確認、取引先指導等)を担うと同時に、現地スタッフ7名の教育とお客様対応のサポート(新規プロジェクトの客先説明、原因調査の技術的説明等)にも関わっています。ターボ保証課は、オランダ、中国、タイにも現地拠点があるのですが、重要なのは三菱重工としてのターボチャージャの品質保証とはどのようなものか、という部分がぶれないようにすること。世界標準の品質保証を実現するため、日々意見交換をしながらスタッフのマネジメントに向き合っています。現地スタッフの製品に対する理解度も徐々に深まってきており、今後は、各スタッフが自らの意思で行動するような環境づくりを整えていきたいと思っています。

お客様の声を一番近くで聴き
情報を伝える重要な役割

実は赴任早々、日本とタイで生産していたコア部品において不具合が発生したのですが、米国と日本(マザー工場がある相模原)、タイの製造工場との連携に時間がかかり、スピード感を持って対応をするのに非常に苦労しました。同時に、他の拠点でもマザー工場からのサポートがないと現地だけでは対応しきれない問題が起きていたため、タスクフォースを結成しました。現在も定期的にマネージャークラスが集まり、問題をまとめて対応するためのルールづくり、迅速に対応するための体制づくりに取り組んでいます。世界の拠点を横通しする体制づくりには苦労しましたが、比較的共通部品が多いターボチャージャなら、各拠点とマザー工場の連携をもっと密にできると思いました。このように、品質保証はお客様や現場の声を一番近くで聴ける立場であり、一つの課題から会社の仕組みづくりにまで携わっていくことがQuality Advisorに求められるもう一つの重要なミッションといえます。

高性能、高効率を追求し
製品を通じて世界に貢献したい

自動車業界の環境規制は年々厳しくなっており、自動車メーカー各社のニーズも、より高性能でより高効率な要求へと変化してきています。さらに地球環境保護の観点からも、これまでに培ってきた技術力を高め、応用し要求に応えることが三菱重工の果たすべき使命です。高性能、高品質なターボチャージャを北米でも提供できるような品質保証体制を構築し、日本側のサポートがなくとも北米単独で迅速に不具合の原因究明と対策実施ができるよう、現地スタッフのスキルを向上させ、ターボチャージャを通じて自動車社会の発展と地球環境の保護に貢献していきたいと思います。世界中で活躍する製品に携われる、という現在の環境を活かし、生産の現場から製品を納め使用してもらうまで、三菱重工ならではの高品質なものづくりを成立させたいと思っています。