サビヤ発電所
Mitsubishi
Heavy
Industries
PROJECT STORY
スチームパワー
Heavy
Industries
クウェート国内発電量の
40%を供給する三菱重工の新たな挑戦。
サビヤ発電所蒸気タービンリハビリプロジェクト。
INTRODUCTION
2023年4月、三菱重工はクウェート電力・水・再生可能エネルギー省と、サビヤ発電プラントの主要機器である蒸気タービン8ユニットのアップグレードに関する長期契約を締結した。海外勢との競争入札で三菱重工が選定され、価格・技術審査を経て晴れて契約に至った。本契約は国家エネルギー戦略「クウェートビジョン2035」に沿うもので、1997年から20年以上稼働し経年劣化した蒸気タービンの機能回復と今後20年間の電力安定供給維持のための更新を目的としており、発電所の“リハビリテーションプロジェクト(リハビリプロジェクト)”と呼ばれる。一国のエネルギー戦略を担うという、壮大なミッションに挑む3人のプロフェッショナルに話を聞いた。
50年に及ぶクウェートの国内電力安定供給への貢献

三菱重工のクウェートでの歴史は、50年以上の実績を誇り、1970年にまで遡る。ドーハウエスト、アズールサウス、サビヤといった主要発電所に高度な発電ソリューションを提供し、これまでに納入した発電設備は、クウェート国内全体の発電設備容量の約40%を占めており、同国の電力インフラを支える重要な存在となっている。
同国から厚い信頼を寄せられてきた背景にあるのが、三菱重工の高いEPC(設計・調達・建設)能力だ。クウェートでは、夏季には最高気温が50℃に達し、空調需要の増加により発電所はフル稼働となる。 電力需要が高まる前に確実に工事を完工させることが何より重視されるため、遅延なく全ての工程を一括して対応するターンキー契約での発注を期待されることが多い。三菱重工は設計から調達、製造、建設、試運転、引き渡しまでを一貫して遂行することができ、同国のニーズに応えて計画通りに工事を完工してきた。こうした長年に亘る実績の積み重ねの評価が、サビヤ発電所リハビリプロジェクトへとつながっている。
「サビヤリハビリプロジェクトの受注もこれまでの実績が高く評価された結果にほかなりません。」そう語るのは、本プロジェクトでエンジニアリングマネージャー(EM)を務める志岐だ。志岐は10年以上クウェート案件に携わり、2014年から2019年にかけて行なわれたドーハウエストリハビリプロジェクトでは蒸気タービンの設計担当を務めた。「同プロジェクトの成功を受けて、サビヤ発電所のお客様より、初号機運転開始から20年超が経過したサビヤ発電所でも、今後20年の電力安定供給のための更新工事を計画したいとの声が上がったことが、本プロジェクトの発端です。」
ターンキー契約では、製品性能の高さだけでは顧客の要求をすべて満たすことはできない。設計、調達、製造、建設、試運転の各ステージで発生する様々な課題を解決し、すぐに運転開始が可能な状態で引き渡す必要がある。そのためにはプロジェクトメンバーそれぞれがプロフェッショナリズムを発揮して、想定外の事態にも柔軟に対応することが求められる。本プロジェクトでも、各メンバーに様々な課題が突きつけられた。
想定外に備え、現場力と組織力で納期を守り抜く。
プロジェクトにおけるEMの役割は多岐にわたるが、重要な業務のひとつが契約仕様書を社内基準、国際基準に基づいてかみ砕き、技術サイドのとりまとめ役として工事引き渡しまで工程と品質、性能を満たし、主導することにある。しかし、それは単に契約仕様書上の要求事項を満たせば良いというものではない。
「タービン更新工事にあたり、お客様要求仕様に沿って設計、製造部門と協議を重ねて進めていましたが、初号機の機器納入後にリハビリ計画に対して変更インパクトの大きなものから小さなものまで、様々なコメントを受けました。」

「性能はアップグレードしたいが、20年以上運転してきた愛着ある設備であり、リハビリ後も同様の操作性を実現して欲しい。メンテナンスの方法も変えたくない。」これまで長年に渡り設備を大事にご使用頂き、今後も長くご愛用頂く顧客である。そうした顧客意向をできる限り尊重しながら、志岐はその都度顧客と折衝を繰り返し、商務担当者とも協議しながら顧客が満足する打開案を見出していった。
また、納期を遵守するために資材調達の面でも策を講じた。「本プロジェクトは蒸気タービンを8ユニット連続で製作、納入する計画です。プロジェクトを遅延なく遂行するためには万が一のトラブルへの対策も備えておく必要があります。そのため、重要機器であるタービンロータについては、常に次号機の素材をバックアップとして繰り上げ可能なように調整し、最終的にドイツから25トン以上のロータ材を空輸するという手法を採用しました。空輸は海上輸送と比較すると高額ですが、当社内の物流担当部門 の協力を得てコストの抑制にも成功。これにより近年高まりを見せるソマリア海賊によるスエズ運河周辺海域の治安悪化のリスクを回避し、安定した資材調達への道筋をつけることができました。」
三菱重工のEPC能力の高さは、こうした担当者の柔軟さと、それを実現する組織としての総合力が揃ってこそ発揮されるのだ。
20年の間に無数の改造の痕跡。
それを読み解き、最新の制御システムへ落とし込む。

本プロジェクトの計装制御エンジニアとして、重要な制御装置を最新式のシステムに更新する設計業務を担当したのが栁川だ。入社以来一貫して国内案件を担当してきたが、2022年、横浜から長崎への異動を機に新たなことに挑戦したいと考え、翌年、サビヤ発電所リハビリプロジェクトの発足と同時に志願してメンバーに加わった。その栁川が直面したのは海外リハビリプロジェクトならではの特殊事情だ。
「タービン制御装置は、目標の発電量に応じてタービンに送り込む蒸気流量を制御しますが、サビヤ発電所では蒸気を海水の淡水化にも使用するため、発電量と同時にタービンから部分的に抽出する蒸気の圧力を制御する必要がありました。マトリクス制御と呼ばれるこの制御方式自体は決して珍しいものではありません。しかし、建設当時の制御回路が非常に複雑で、さらに20年の間に度重なる改造が施されていたため、その意図を読み解くことが最大の課題でした。」
最初に現地調査に訪れたとき、制御装置には20年の間に何度も改造された痕跡があり、本来あるべきでない場所にもケーブルが延びていた。どういう目的で改造したのかを尋ねても、顧客はよくわからないと首を振るばかり。日本では考えられない事態に海外プロジェクトの難しさを痛感したと栁川は苦笑しながら振り返る。
「最新式のシステムに更新するにあたって、タービン制御のベテラン技術者にも参画いただき入念に設計・検証したつもりでしたが、初号機の試運転で想定と異なる挙動をしたときには頭を抱えました。今後20年間の安定稼働を考えると、懸案はすべて解消しておきたい。幸い現地調整メンバーの尽力もあり、粘り強く調整・改善して無事に初号機を引き渡すことができました。」
納得感を作り出すための準備と
ストーリー作りでビジネスを整流化。
古薗は入社3年目の2022年、本プロジェクトの入札段階から商務担当に着任、2024年9月からはリハビリ現地で営業アドミとしての業務を経験した。商務担当は、顧客のニーズを捉え、技術部門と連携しながら提案内容を取りまとめる引合・提案対応、契約折衝から代金回収までプロジェクトの一連の流れに携わる。契約交渉では、何を、いくらで提案し、どこで折り合うか。その判断ひとつでプロジェクト全体の収益性が左右される重要なポジションだ。
「これほどの大プロジェクトを任されたのは初めてです。新たな挑戦が始まる期待感の一方、ほんの少しのことで数億円ものお金が動くので責任の重さも感じました。また、海外プロジェクトならではの文化の違い、商習慣の違いにも最初は戸惑いました。」
その文化の違いの最たるものが、中東ならではの「大らかさ」だ。同じ組織内でも発電所の担当者や課長、発電所長といった縦の組織間、発電所の運営部門、財務などの本社管轄部門といった横の組織間でもそれぞれ求めていることが少しずつ異なり、共通見解を引き出すことが難しい。工事代金の回収に必要な証明書の発行など依頼事項に対しては「インシャアッラー(神の思し召しのままに)」とアラブ流の時間軸で時が経過していくことも日常茶飯事だった。
「そこで心がけたのが納得感を作り出すための準備とストーリー作りです。その場にいるお客様に納得してもらうだけでなく、そのお客様が内部で説明するうえで困らないように、一緒に説得方法を検討したり、理由付けを考えたりして、ビジネスの整流化に努めました。」
ロジカルに主張すべきことは主張しつつも、最後は人と人の関係だ。相手を言い負かすのではなく、相手に寄り添い、自分も困っているから一緒に考えて欲しいという姿勢で臨むことで、顧客と共に課題を乗り越え、結果的に商務としての責務を全うした。
文化を超えて、商習慣を超えて、
クウェートの電力安定供給に貢献する。

計装制御エンジニアとして初めて海外プロジェクトに挑んだ栁川は、キックオフミーティングで最初に文化の違いを味わったことが良かったと振り返る。
「志岐さんや古薗さんをはじめとしてプロジェクトメンバーでケバブ料理屋に入ったのですが、料理は運ばれてくるものの周りのテーブルは誰も手をつけません。ラマダンで日が落ちるまでは食事を開始できないのです。断食の始まりは食への感謝があり、最初はデーツから口にすることもそのときに知りました。こうした異文化体験があったから、商習慣の違いから来るお客様の追加要望にも『そういうものか』と対応できたような気がします。」
プロジェクトを通して古薗や栁川と連携する機会の多かった志岐は「商習慣の違いを乗り越えて、それぞれがプロフェッショナリズムを発揮できるところが三菱重工の強さであり、EPC能力の高さを支えている。」と力説する。
「本プロジェクトのEMにアサインされた際、大型プロジェクトをまとめるという大役にプレッシャーを感じるとともに、クウェートの安定的な電力網を支えなければならないという使命感を持ちました。それをメンバー全員が共有して、自らの役割を全うするところに三菱重工の強さがあると思います。」
古薗も同意見だ。「何年もかけてお客様と信頼関係を構築し、設計、調達、製造、出荷、据付、試運転、性能試験とそれぞれがプロフェッショナルな襷リレーをすることで、はじめて成果を刈り取れるようになります。営業としてそのリレーの一端を担っていることに誇りを感じます。」
プロジェクト関係者の集合写真。
PERSONAL DATA

エナジードメイン
スチームパワー事業部
プロジェクト推進部
蒸気タービンAS技術グループ
2010年入社
工学部 地球環境工学科(土木系学科)卒

エナジードメイン
スチームパワー事業部 営業部
海外営業2グループ
2019年入社
国際教養学部 国際教養学科卒

エナジードメイン
スチームパワー事業部
技術部 制御ソリューション課
(2026年2月時点:株式会社MHIパワーコントロールシステムズに休職派遣)
2014年入社
知能機械工学専攻 電子制御システムコース修了





























