プロジェクトストーリー vol_03

個別制御盤のコンパクト化による普及型ホームドア特殊扉の開発

クライアント(鉄道会社)の特別な要望に応えるコンパクトな「どこでもドア」と、多様な扉位置に対応できるテレスコピックタイプの扉に納める個別制御盤のさらなる小型化・軽量化に挑むプロジェクト。

PROJECT 乗客の安全を守るホームドアは注目の事業 MHI-TC独自の製品をさらに進化させる

競合他社がしのぎを削る「ホームドア戦国時代」とも呼ばれる現代。同じ駅でも普通・特急列車の違いや、相互乗り入れなどでドア位置・ドア数の異なる車両に対応する必要があります。MHI-TC(当社の略称)の手がける「特殊扉」は、2段伸縮の入れ子構造で戸袋に納まるテレスコピックタイプ(以下テレスコ)と、ドアとドアの間の小さな開口部に設置可能な「どこでもドア」があります。今回はお客様の要望で、MHI-TC独自の製品でもある「どこでもドア」の出番となり、さらなる小型・軽量化に向けて設計段階から開発することになりました。

より薄く、より細く、コンパクトな制御盤を。
最新技術を結集した設計開発物語

ホームドアを動かすためには、それぞれのドアの内部に個別制御盤があり、制御盤の中には心臓部ともいえる基板が設置されています。戸袋に納まるテレスコは制御盤をより薄く、幅狭のどこでもドアは制御盤をより細く設計しなければなりません。この難しい課題をクリアすれば、今後のホームドアへの共通化も図れます。新たな可能性に挑んだ機械設計・電気設計のベテラン陣、そして試行錯誤しながらも設計と情報のとりまとめを行った入社3年目の若手エースに、設計開発物語を語っていただきました。


 

ROUND TABLE「これ以上小さくできるだろうか?」鉄道会社の要望がプロジェクトのスタート

PROFILE

久保裕樹

【このプロジェクトでは】
どこでもドアの機械設計を担当。お客様との商談と社内の取りまとめも行う。

栗森陽一

【このプロジェクトでは】
制御盤の設計および基板設計、CADを用いた電気回路・制御盤図の作成等。

日髙天鐘

【このプロジェクトでは】
制御盤の設計と情報収集・調査・データとりまとめ。現在は基板設計。

 

QUESTION 1 このプロジェクトでどんなお仕事を担当されましたか?
  • 久保
  • 【久保】
    私は機械設計の担当ですが、最初のお客様との打ち合わせも行いました。今回は非常に幅狭のドアじゃないと納められないというケースで、「どこでもドア」なら対応できる、それをつくる技術を持っているのはMHI-TCだけだというのが決め手になって選ばれたんです。でも、客先のニーズに応えるためには、従来機よりもさらにコンパクトなドアの開発が必要になるため、「このサイズに納められる制御盤を設計してくれないか?」と電気部にお願いしたところから本プロジェクトはスタートしています。

  • 栗森
  • 【栗森】
    その依頼を受けて、私は制御盤や基板など、電気系の設計全般を担当しています。どこでもドアはもともと小さい上にさらに小型化したいということで、機器自体を見直したり、内部の配置や配線の位置を変更したり、基板の部品を見直したり、あらゆる可能性を探っています。どこでもドアだけではなく、全体のホームドアも設計しますから、入れ子構造のテレスコ扉は、逆に戸袋に納めるために厚みを縮める必要があります。大きく分けてこの2種類の制御盤を開発することになりました。

  • 日髙
  • 【日髙】
    僕は入社3年目で、栗森さんの下でいろいろ教えていただきながら、制御盤の内部の設計や、プロジェクト全体の情報のとりまとめを行いました。最初はホームドアにしろ電気系統にしろわからないことだらけだったので、上司に聞いたりインターネットで調べたり、自分なりに頑張って調べました。

 

QUESTION 2 苦労された点や、その克服方法などを教えてください。
最大50%のコンパクト化をめざして電気設計×機械設計のタッグが始まる
  • 栗森
  • 【栗森】
    電気設計の側から言うと、既存品と比べて30~50%ぐらいスペースを削減しなくてはならないので……ほとんど半分ですよね。でも、どこでもドアは非常にコンパクトになる分、戸袋に納めなくてもいいので厚みはとれるんです。そこに目を付け、制御盤の内部の基板を3分割し、2枚分を重ね置きしてスペースの削減に成功しました。もちろん、コスト的には1枚で作った方が安いのですが、今回は小型化が譲れない条件だったので。分割するとフレキシブルなレイアウトが可能になり、必要な部分だけを交換・メンテナンスできるというメリットもあります。

  • 久保
  • 【久保】
    電気設計が試行錯誤している間、こちらは機械設計の立場から、筐体(ホームドア、戸袋等を含めた構造全体)の方でも極力内部スペースを確保するために、構造から見直しています。筐体構造の見直しに当たっては、他にも強度の確保やメンテナンス性、今後の共通化などいろいろな検討要素があるので苦労しましたね。

  • 日髙
  • 【日髙】
    その間、僕はCADを使って、図面から実際のドアを作成する作業をしていました。今、久保さんの方から「共通化」のお話がありましたが、今回のプロジェクトで小型化した制御盤が製作可能になれば、今後他のホームドアにも共通して使えるようになるので、その見通しを探るため、社内の新人研修も兼ねて、論文をまとめて社内プレゼンもしています。

  • 栗森
  • 【栗森】
    自分でわかっていても人にわかりやすく伝えるのは難しいので、プレゼン資料の作り方も含めて指導しましたね。MHI-TCはそういう新人教育にも力を入れています。

 

QUESTION 3 プロジェクトを通して嬉しかったこと、感動したことを教えてください。
設計図が実物になった時の感動「ものづくりに関われてよかった!」
  • 久保
  • 【久保】
    個別制御盤の小型化を依頼したものの、大幅なサイズダウンで製作可能かどうか不安だったので、電気部からOKの返事をもらった時は本当に嬉しかったです。もしこの制御盤ができなければ、MHI-TCのホームドアがお客様に提案できないという状況だったので、これで自信をもって納められるとホッとしました。まあ、何とかしてくれるだろうという信頼関係はもともとありましたけどね。

  • 栗森
  • 【栗森】
    やれと言われればやりますよ(笑)。まあ、MHI-TCのホームドアの製作は実績があるのでゼロからのスタートというわけでもないし。僕の設計はこれで完了なのですが、今後は実際のドアに制御盤を据え付け、動作チェックをしたり、施工時の検証や確認で現地に行くことになると思います。制御盤の小型化という課題が成功した喜びも大きいのですが、やはり現地で据え付けてそこに車両が入って来た時が、一番感動する瞬間になるでしょうね。

  • 久保
  • 【久保】
    そう思います。完成した暁には、200mから300mあるホームに自分たちが設計したホームドアがずらーっと並び、それを実際に多くの人が使うわけですから。自分たちの努力が形になったという実感が湧きますよね。

  • 日髙
  • 【日髙】
    僕はまだ完成の瞬間を見た経験がないのですが、自分がCADで作った図面を使って、実際のものができた時は、「ものづくりに関われてよかった!」と思いました。設計したものが実物になって出てきて、しかも動いているところが見られるなんて、そんな感動はこの仕事じゃないと体験できないと思います。

  • 栗森
  • 【栗森】
    電気関係の知識もわからないところからスタートした日髙君が、少しずつ成長して図面をつくれるようになり、ものづくりの楽しさを実感している。そんな姿を見られるのも、私のもうひとつの喜びなんですよ。

  • 日髙
  • 【日髙】
    いい上司に恵まれて幸せです!

 

QUESTION 4 あなたにとってこのプロジェクトとは?
受注から設計、施工へと繋がるリレーの中で全体を見通したチームワークが大切
  • 久保
  • 【久保】
    担当しているお客様のご要望に沿ったホームドアを納めるためには、どこでもドアが必須となるので、その構造を成立させるためには絶対に必要なプロジェクトでした。コンパクトな制御盤が実現すると筐体設計の幅もかなり広がりますので、今後も可能になることがより広がったという感じです。

  • 栗森
  • 【栗森】
    私は後輩への教育や指導の仕方、フォローの方法について考えるきっかけになりました。私自身も先輩から教えてもらったり、現場の中で見て学んだりしてきたので、今回は日髙君に対してCADの使い方や図面の見方を教える立場として勉強になりました。あと、自分の設計箇所だけではなく、これから機械設計や電気工事をする後工程の人たちが、なるべく作業しやすいように配慮して設計するということも大切にしています。

  • 日髙
  • 【日髙】
    まさに栗森さんから、そこが大事だと学びました。僕が図面の中だけで判断して、これなら筐体に納まるだろうと隙間なく作成していた時に、「後で配線工事とかする人のことを考えてつくるといいよ」と言われ、そういう視点が大事なんだと気づきました。今回、入社して初めて大人数が関わるプロジェクトに参加できたので、チームワークや情報共有の大切さも実感しました。

 

QUESTION 5 今後の目標や、チャレンジしたいことについて教えてください。
経験を蓄積してこそわかる仕事の醍醐味 何年目でも学び続ける姿勢は変わらない
  • 栗森
  • 【栗森】
    ホームドアの需要は年々増加し、今後も仕事は続きますので、今回のプロジェクトで実現できたことを活かしてさらに軽量化やコスト削減を追求していきます。また、制御盤や基板の設計以外にソフトウェア設計もやっていますので、画像処理やAI技術の習得などにもチャレンジしていきたいと思っています。ソフトウェアはこれから力を入れたい分野ですね。

  • 日髙
  • 【日髙】
    僕は今、制御盤から基板を設計する部署に異動して、新しいことに挑戦しています。またわからないことをイチから学び直しですけれど、今回のプロジェクトで理解が深まったことも活かされますし、少しずつ力をつけて仕事の楽しさもわかるようになってきました。

  • 久保
  • 【久保】
    私はお客様に接する機会が多いので、相手が何を望まれているか、どうやったらそのニーズを設計に反映し、期待通りのものをつくれるのかに注力し、引き続き多くのお客様にご満足いただける製品の開発を行っていきたいと思います。お客様との信頼関係をつくるには、技術力はもちろん、要求されたらすぐに応えるというスピード感も大切だと思います。

 

QUESTION 6 最後に、学生の皆さんへメッセージをお願いします。
社会のインフラを支え、成果が実感できるものづくりが好きな皆さん、お待ちしています!
  • 久保
  • 【久保】
    自分たちが携わった機械が実際にホームに設置され、多くの乗客の安全を守り、社会貢献できるのがMHI-TCのホームドア事業の醍醐味です。努力がちゃんと形になり、その成果が目で見て実感できるのもこの仕事の大きな魅力だと思います。学生の皆さんもぜひ、その醍醐味を私たちと一緒に味わいましょう。

  • 栗森
  • 【栗森】
    社会人になると学生の時とは違って、やったことがないこと、わからないことがたくさん出てきます。でも、意外と何とかなるものですよ。やったことがないことを通して、その都度成長していけばいいので、安心して社会に出てください。MHI-TCはホームドアや旅客搭乗橋、産業機械など、インフラ製品のものづくりを行っている企業です。ものづくりの好きな方は大歓迎ですので、お待ちしております。

  • 日髙
  • 【日髙】
    何事も挑戦しないことには始まりません。失敗を恐れずに、興味をもっていろいろなことに挑戦してください。MHI-TCは、新人でもアイデアを採用してくれたり、プレゼンの機会をつくってくれたり、チャレンジ精神を買ってくれる会社です。一緒に頑張りましょう!