プロジェクトストーリー vol_02

航空エンジン向け燃焼器製造の「MHIAEL長崎工場」拡張工事

三菱重工業長崎造船所(長崎市飽の浦町)の敷地内にある航空エンジン部品製造工場の大幅拡張工事。着工から完成まで約2年をかけた一大プロジェクトで、完成すれば同業工場としては世界最高レベルの生産性を実現。

PROJECT アフターコロナ後の航空需要に対応 飛躍的な事業拡大の拠点となる大規模工場

「三菱重工航空エンジン(MHIAEL)長崎工場」は、航空エンジンの重要部位である燃焼器の製造に特化した、九州地区初の本格的な航空機関連工場です。今回のプロジェクトは、アフターコロナで再成長が見込まれる短・中距離旅客機用のエンジン部品の需要増、性能向上に対応する拡張工事。現在稼働中の工場5,400m2から約2倍の1万1,000m2に拡張し、完成の暁には、完全一貫体制や自動化、IT・AI技術などを活用した更に進化した工場が実現します。MHI-TC(当社の略称)では、この工場建屋の企画設計から工事管理までを請け負っています。

過去の遺産を継承しながら最先端の未来へ!
困難な課題をチームワークで克服する挑戦

設計監理(構内管理グループ)

設計監理(構内管理グループ)

現地作業所(建築工事グループ)

現地作業所(建築工事グループ)

このプロジェクトでは特に、現役の工場を稼働させたまま拡張するという特殊事情のため、新設とは違う課題がありました。また建設地の周辺には、同型としては日本初の電動クレーン(1909年竣工)と長崎造船所に現存する最古の建物(1897年竣工)という二つの世界遺産があります。その景観と価値を損ねることなく、いかに最先端の工場を調和させるか、という課題にも挑まねばなりません。座談会では、意匠設計・施工管理・内装提案など三者三様の立場の方に、プロジェクトに懸ける思いを語っていただきました。


 

ROUND TABLE 意匠設計から現場工事への橋渡し どの部署にも頼れるプロフェッショナルがいる強味

PROFILE

小松健太郎

【このプロジェクトでは】
意匠設計責任者として、企画・基本・実施設計から工事管理までを担当。

濵﨑楓花

【このプロジェクトでは】
意匠設計のうち内装仕様の提案や、建築上必要な行政協議も担当。

伊藤孝司

【このプロジェクトでは】
現場所長として総合施工計画や全体工程表等の作成と工事の統括管理。

 

QUESTION 1 プロジェクトでどんなお仕事を担当されていますか?
  • 意匠設計の仕事の流れ

    意匠設計の仕事の流れ
  • 小松
  • 【小松】
    意匠設計の責任者として、図のような仕事をしています。
    わかりやすく家で例えると、企画設計は、お客様の要望などを考慮しながら、どのような建物を作るかを提案する段階です。
    基本設計では、法律に適合しながら具体的な間取りや建材などの仕様を決定します。
    そして、実施設計では、建物の空間をどのように具現化するかを確認できる詳細図面を作成していきます。
    工事監理が最も大変な仕事の一つですが、当社には非常に優れた現場所長がいるため、安心して仕事に取り組むことができます。

  • 伊藤
  • 【伊藤】
    私は現場所長で腕を組んで見張っているだけ…と言いたいところだけど。具体的には意匠設計から出てきた設計図の内容を汲み取って総合施工計画書を作り、それを日数に落とし込んだ全体工程表を作ります。さらに職方専用の施工図を作成し、図面だけで伝わらないところは詳細な打合せを重ねるのも大切な仕事です。その他、安全・品質・コスト面はもちろん、職場環境や現場の士気向上など、全体の統括管理も行っています。

  • 濵﨑
  • 【濵﨑】
    私は小松さんの下で、内装デザインに関する提案をお客様に行ったり、施工の納まりが建築基準法に適合しているかなどを行政に確認するなどの業務に従事しています。入社して初めての仕事だったので、最初は上司の後ろについていくだけで精一杯でしたけど、お2人に詳しいことを教えていただきながら、今では1人で行政確認に行くことも増えました。

 

QUESTION 2 苦労された点や、その克服方法などを教えてください。
建築の世界はミリ単位で攻めるのが勝負!伝統ある世界遺産と、最先端の工場の調和に挑む
  • 伊藤
  • 【伊藤】
    現場サイドで言うと、稼働中の第1期工場と、今回拡張する第2期工場で床・壁・屋根が繋がる部分があるので、何度も測量して納まりを確認する必要がありました。建築はミリ単位の世界なので、何ミリまで攻めていくかが勝負です。また繋げた後の外壁解体時に、第1期工場に粉塵などが流入しないよう対策を講じるのも苦労した点ですね。

  • 濵﨑
  • 【濵﨑】
    「納まり」っていうお話がありましたが、経験が浅いうちは施工の細かいことがわからなくて、まさにそこが一番苦労した点です。でもMHI-TCでは新入社員教育の一環で、私のような設計担当でも施工現場に一定期間実習する決まりがあるので、とても勉強になります。今回も施工図を見てわからないところは、現場に行って直接確認して徐々に理解していきました。

  • 伊藤
  • 【伊藤】
    事務所と現場も距離があるので、最近では現場にWebカメラを導入して、事務所のパソコンから施工現場を見渡し、即時管理することが可能になりました。現場側も見られているという意識が常にあるので士気も上がります。作業の進捗や全体像はデジタルサイネージを活用してパソコンで管理したり。会社は「モデル先進事業所」として総力を結集しています。

  • 小松
  • 【小松】
    意匠設計者として苦労したのは、今回の建設地が2つの世界遺産に囲まれていたので、雰囲気を壊さないために外観や色使い、植栽まで含めた設計が必要だったことです。お客様と何度も話し合ってイメージを共有し、「過去から未来へ」というテーマで設計しました。でも、どれだけ事前に確認しても途中変更は必ず発生するので、お客様と普段から密なコミュニケーションをとり、チームで協力して柔軟に対応することが大切ですね。厳しい設計スケジュールにも関わらず頑張ってくれたチーム全体の協力と努力に感謝しています。

 

QUESTION 3 プロジェクトを通して嬉しかったこと、感動したことを教えてください。
お客様からの感謝の言葉が次の仕事への原動力 引き渡しの竣工式では涙のシーンも
  • 濵﨑
  • 【濵﨑】
    入社してすぐ定例会議などに参加したプロジェクトなので、何もかもが初めての経験で思い入れはあります。特に、一通りの部屋の内装を自分で考えてお客様に提案し、それが採用された時は嬉しかったですね。

  • 小松
  • 【小松】
    私が一番嬉しかったのは、実施設計が完了し、予定通りに工事が開始された時にお客様から感謝の言葉を言われたこと。多くの労力が報われる瞬間です。「ありがとう」の次は「飲みに行きましょう」になるので、「ああ、満足していただけたんだな」と。常にお客様の要望に応え、期待以上の価値を提供することは、長期的な信頼関係の構築につながります。それが新たなプロジェクトに取り組む原動力にもなりますね。

  • 伊藤
  • 【伊藤】
    私も以前のプロジェクトの竣工式で、お客様の社長から直接「ありがとう」と言われて初めて泣きましたよ。今回はまだ工事中なので気が張っていますが、以前よりも大きなプロジェクトですし、今回も私の涙が見られるかも?あと、足場を崩して外観が一望できる瞬間や、最後の引き渡しの瞬間などは、やはり格別な感動が味わえます。

 

QUESTION 4 あなたにとってこのプロジェクトとは?  
1万7千人が動く一大プロジェクト 大切なのは世代や職種を越えたチームワーク
  • 伊藤
  • 【伊藤】
    私にとって今回のプロジェクトは “自分自身への挑戦” です。施工管理経験の中で最大規模の工事なので、金額も大きいですが、着工から竣工まで延べ1万7千人もの職方が工事に携わります。すべての働く人に無理のない環境をつくりながら、安全を最優先とする施工管理を実施し、高品質な建屋を竣工するのが目標です。

  • 小松
  • 【小松】
    私にとってはチームワークの重要性を再認識する機会でした。建物を建設するためには、構造・設備など他の設計関係者や、伊藤さんのような現場所長などとの連携と協力が不可欠だと改めて学びました。濵﨑を含め3人の部下も頼りになります。1つのプロジェクトでせっかく同じ時間を共有するのなら、極力楽しく仕事をした方がいいし、連携の大切さや感謝の気持ちを忘れずにいたいですね。

  • 濵﨑
  • 【濵﨑】
    小松さんがチームワークの大切さを日頃からよく言ってくださるので、私たちもそれを大切にしていて、思ったことも言いやすく職場環境はとてもいいと思います。これからプロジェクトの竣工に向けて、最後までお客様の意見に耳を傾け、関係者一体となって取り組んでいけたらと思います。

 

QUESTION 5 今後の目標や、チャレンジしたいことについて教えてください。
若手の長所を伸ばし、きちんと評価する社風 向上心さえあれば、どんどん自己成長していける
  • 小松
  • 【小松】
    職場環境をもっといい雰囲気にしたいと思っています。特に頑張っている若手社員を見極め、それぞれの個性を最大限に活かしながら成長できる機会を提供したい。努力と成果を適切に評価することも大切です。たとえば濵﨑は誰からも好かれるという長所があります。行政関係の折衝でも、彼女がいると場がなごんで相手も胸を開いて話してくれる。そういう個人の得意分野を活かし、皆で協力して仕事をする方が楽しいですしね。

  • 濵﨑
  • 【濵﨑】
    え?そうだったんですか?小松さんこそ、打合せ前には事前の情報収集をしっかりされて見習いたいなと。私はこれから一級建築士やインテリアコーディネーター、インテリアプランナーなどの資格にも挑戦したいです。いろんな知識をつけて、小松さんのように説得力のある提案ができるようになりたい。与えられた仕事は何でもチャレンジして、常に向上心を忘れないようにしたいと思っています。

  • 伊藤
  • 【伊藤】
    若手社員の育成は、私も力を入れていきたいですね。自分も先輩たちに鍛えてもらったので、次の世代に自分が持てる知識をしっかり継承するのが役目だと思っています。特に今回のような大きなプロジェクトに挑む時は、コミュニケーションをおろそかにすると進行が滞ったり、怪我のリスクが発生したりするので、日頃から意見交換して関係性を築くのは欠かせません。そういうことを若手社員に身をもって伝えていけるといいですね。

 

QUESTION 6 最後に、学生の皆さんへメッセージをお願いします。
自分の仕事が、遠い未来に残る達成感!「ものづくり」の醍醐味はここでしか味わえない
  • 濵﨑
  • 【濵﨑】
    工場などスケールの大きな建物に携わるので、大変なこともありますが、多くの方と協力して1つのものをつくりあげる、やりがいの大きな仕事です。私は最初はハウスメーカー志望でしたが、MHI-TCは意匠設計だけではなく、構造・設備・土木など設計だけでも多くの種類があるので「この会社で新しいやりがいを見つけたい」と思い決めました。建築業界にもいろんな職種があるので、多くの企業の話を聞いて、自分に合った天職を見つけてほしいです。

  • 小松
  • 【小松】
    自分が建築に携わった作品が未来に残る、という達成感は何物にも代えがたいものです。また、建築とは単に建物だけではなく、その中で生活し、働く人々の笑顔を創る仕事であり、美しさや機能性を追求するという点では「芸術的な仕事」とも言えます。自分の手で創り上げた作品が、世代を越えて受け継がれる可能性があるなんて、これは建設業ならではの特権です。仲間との絆を大切にして大きな仕事を成し遂げたい、という志のある方でしたらMHI-TCは最適な環境だと思います。ぜひ、この世界に飛び込んでください。

  • 伊藤
  • 【伊藤】
    同感です。何もない土地から、自分で考えた計画を元に工事管理を行い、地図に残る建築物を生み出せる仕事。それが社会貢献にもつながる喜び。だからこそ竣工した時の感動はひとしおです。ものづくりの素晴らしさをMHI-TCで一緒に体感しましょう!