プロジェクトストーリー vol_01

神戸市営地下鉄16駅における 可動式ホーム柵整備事業

神戸市交通局が運営する地下鉄 西神・山手線/北神線にて、既に設置済みの三宮駅を除く全16駅666間口にホーム柵(ホームドア)を設置。土木工事を含むホーム柵の設計・製作・施工・サービスまでを一括して請け負い、MHI-TC(当社の略称)としての総合エンジニアリング力を発揮。

PROJECTものづくりの技術力 × 土建のエンジニアリング力 競合を凌ぐ “One Team事業管理体制”

可動式ホーム柵を設置するためには、ホーム柵の設計・製造業務に加え、設置するホームの健全性診断や補強工事などを含む土木建築業務が発生します。一般的には、業務毎に複数社を鉄道事業者が選定しなくてはなりません。そこで名乗りを上げたのがMHI-TC。交通機器の設計・製作・サービス会社(現在の交通・機器事業部)と土木・建築・プラントのエンジニアリング会社(現在のエンジニアリング事業部)とが統合してできた会社としての強みを最大限に活かし、一社完結型の “One Team事業管理体制” で取り組みました。これにより工程の短縮、コスト低減、現場での俊敏な対応を実現。会社としての総合力が評価される結果に。

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前例のない取り組みのために一致団結
次世代の新しいビジネスモデルをつくる!

このプロジェクトは、2020年4月の会社統合後、交通・機器事業部とエンジニアリング事業部とが初めて協同で行う取り組みとなりました。同じ会社で働いているとはいえ、各事業部の担当者は仕事のジャンルも勤務地も経歴も全く異なる、見知らぬ者同士。またホーム柵は稼働中の駅に設置するため、作業は夜間の限られた時間内に行わなくてはなりません。制約の多い中どのようにして “One Team” をつくり上げていったのか、今後の事業展開のカギをも握るべく、社運を託され立ち上がった4名のプロジェクトメンバーから話を聞きました。


 

ROUND TABLE

PROFILE

吉本一馬

【このプロジェクトでは】
プロジェクトマネージャー及び統括安全衛生責任者。

相良俊彦

【このプロジェクトでは】
入札前の準備段階から契約・引き渡しまで、営業を担当。

山際友剛

【このプロジェクトでは】
土建工事の現場所長。設計・工事・予算の管理を行う。

屋敷迅

【このプロジェクトでは】
施工管理担当者。全体の工程や現場管理を行う。

 

QUESTION 1 プロジェクトでどんなお仕事を担当されていますか?
  • 吉本
  • 【吉本】
    プロジェクトリーダーで、チーム全体を統括する立場です。通常は広島の三原に勤務しています。プロジェクト開始前とその直後は神戸によく来ていましたが、工事が順調に進んできたので最近は月2回くらいのペースで通っています。土建の分野に関してはこれまでは外注していましたが、社内の専門家にお願いできることになり、協力体制が築きやすくなりました。

  • 相良
  • 【相良】
    私は営業担当として、入札前の準備段階から携わってきました。普段は関東で営業をしています。このプロジェクトは私自身が神戸出身で市営地下鉄をよく利用していたため、個人的な思い入れがありました。交通機器の専門家と土建の専門家、二つの事業部が力を合わせれば絶対にいい仕事ができると思っていたので、営業としてそこはしっかりアピールしました。

  • 山際
  • 【山際】
    現場所長です。ホームドアを設置する工事や、電車とホームの隙間をなくすための床改修工事、安全性を高めるための手すりの設置工事など、各種工事の現場管理と、土建工事のための予算管理を行っています。ホームドア設置後の動作調整や電気関係の部分は交通・機器事業部が担当しますが、社内に各専門家がいて一社で全て完結するというのは強いですよね。

  • 屋敷
  • 【屋敷】
    施工管理を担当しています。各駅の工事着手に伴う仮設計画~施工図の作成や、全体の工程管理を行っています。土建の技術・知識が豊富な山際さんの指導の下、本当に多くのことを学ばせてもらっています。現場では、機械や電気などホームドアの専門分野の方とも一緒に作業ができるので、良い経験になっています。

 

QUESTION 2 苦労された点や、その克服方法などを教えてください。
予算、時間…様々な壁を総合力で突破!チームの絆を育んだ、活発なコミュニケーション
  • 相良
  • 【相良】
    統合前の交通機器部門では、可動ホーム柵の施工は建設会社と構成企業を組んで行っていましたが、仕様や技術員の確保、コスト面から折り合いがつかずパートナー企業を見つけるのに頭を抱えていました。そんな中で建設のプロフェッショナル集団である土建分野の会社と統合。1社として受注できたことが大きな強みとなりました。最初は交通・機器事業部の片思いのような状況でしたが(笑)、両事業部で議論を重ね、シミュレーションを何度もして協力体制を築くことができました。

  • 吉本
  • 【吉本】
    最初はそうでしたね(笑)。交通・機器事業部としては官公庁向けの導入も初めてという中で、お客様はもちろんエンジニアリング事業部とも互いの目的を明確化し、価値観を合致させる必要がありました。工事立ち上げの前から神戸を何度も訪れて、関係者と何度も顔を合わせるうちに、コミュニケーションが活発になり、早い段階でチームに一体感が生まれたと思います。

  • 山際
  • 【山際】
    予算や施工の方法など、土建部門も初めてづくし。互いに折り合いをつけてスタートを切るまでが大変でしたよね。でも吉本さんと相良さんが「みんなで楽しくやろう」という雰囲気をつくってくれたおかげで話がしやすく、たくさん議論できました。やっていくうちにお互いの仕事を実際に見て、理解が深まったことも多くあります。

  • 屋敷
  • 【屋敷】
    施工の面では、駅構内で作業ができるのは夜間、終電から始発までの約4時間だけ。ペース配分を考えることには苦労しました。翌朝には滞りなく駅を稼働できるように、片付け清掃までの時間を逆算して工程を練りました。

  • 吉本
  • 【吉本】
    山際さんと屋敷さんは夜間工事に出られるので、昼勤メインの私とは動きが別。そこは連絡をとる際に結構気をつかっています。パソコンの電源がついたらすぐに電話したりして(笑)。

 

QUESTION 3 プロジェクトを通して嬉しかったこと、感動したことを教えてください。
乗車口は段差20mm以下、隙間50mm以下 圧巻!社会インフラを支える職人の緻密な技
  • 山際
  • 【山際】
    スロープ改修では、ホームの先端と電車の乗り入れ口を合わせることが難しかったのですが、身障者団体から「列車との隙間や段差がなく、車椅子での乗車に助けが要らず、喜んでいます」と褒めていただき、嬉しく思っています。

  • 吉本
  • 【吉本】
    それが今回の最大のポイント。普通は前の車輪が引っかかることが多いのですが、今回工事した場所に関しては引っ掛かりが一切ありません。日本一と言っても過言ではないレベルの仕上がりで、それこそが細部にまでこだわった素晴らしい土建技術のおかげなんです。

  • 屋敷
  • 【屋敷】
    ベビーカーでも乗り入れがしやすくなったと聞きました。視覚障害のある方や車椅子を利用されている方、お年寄りや小さなお子様にも安心してご利用いただけるようになったことが嬉しいですよね。

  • 相良
  • 【相良】
    自分でもよく利用する路線なので、各駅で自社製品を見られるというのも、やはり感慨深いものがあります。

  • 吉本
  • 【吉本】
    今回のプロジェクトでは、三宮駅には既にホームドアが設置されていたため、当社のものは設置していません。ですがお客様のオペレーションの都合上、車両ドアが開いてからホームドアが開くまでの時間を短縮したいというご要望がありました。そこでこの機会に当社製のセンサーを導入してもらったところ、タイムラグがなくなりスムーズに運用ができるようになりました。三宮駅では今後、ホームの段差と隙間を埋める床の改修工事も行う予定です。お客様に喜ばれ、評価いただけていることが嬉しいです。

 

QUESTION 4 あなたにとってこのプロジェクトとは?
情熱と成し遂げる決意、それを引き出したのは 世の中の役に立つ仕事に携わる意義
  • 相良
  • 【相良】
    難題に直面し、心が折れそうになることも多々ありましたが、チームの皆さんの諦めない気持ち、熱量に引っ張られここまで来ました。
    「意思あるところに道は拓ける」ではないですが、やり遂げる強い意思を持つことで結果が変わることがあるのだと実感しました。

  • 吉本
  • 【吉本】
    プロジェクト開始から約3年が経ち、今はこれが生活そのもの、常にこのプロジェクト最優先で行動しています。また私個人としてはプロジェクトマネジメントという立場を経験したことで、コミュニケーションを今まで以上に重要視するようになりました。

  • 山際
  • 【山際】
    私はこれまで何も考えずに電車に乗っていましたが、このプロジェクトに携わったことで、実はホームの様々な場所に、転落やつまずきが起こりやすいポイントがあるのだと知りました。不便を感じていらっしゃった方々のためにも、良いものをつくらなければならないと思っています。

  • 屋敷
  • 【屋敷】
    同感です。以前は深く考えずに駅を利用していましたが、知るきっかけになりました。意外と身近なところに危険が潜んでいることが分かったので、その危険を少しでも減らして、乗客の方々に安心して電車をご利用いただけるようにしたいです。

  • 吉本
  • 【吉本】
    駅での悲しい事故や転落を防ぐために、ホームドアの設置やバリアフリー化は大変有効です。政府の方針としても各鉄道会社の間でも優先的な課題とされています。我々の仕事がそうした社会の役に立っているのだという自覚を持ち、取り組んでいます。

 

QUESTION 5 今後の目標や、チャレンジしたいことについて教えてください。
先駆者として切り拓いた未来への道 各々の課題を胸に、新たなステージへ
  • 山際
  • 【山際】
    今後も “One Team, One TC” として、ホームドア設置と土建工事をセットで進め、お客様に満足していただけるものづくりをしていきたいですね。

  • 吉本
  • 【吉本】
    実は別の鉄道会社様からの受注が既に入っています。メンバーは多少入れ替えがあると思いますが、また “One Team” として一緒にできる機会がありそうです。

  • 相良
  • 【相良】
    難しい工事になりそうな案件ですが、次もこのチームならできると確信しています。ホームドア整備計画は全国的に加速している一方で、それを支える鉄道事業者の業務負担が大きくなっているという懸念もあります。今後はその課題解決にも取り組まねばなりません。

  • 屋敷
  • 【屋敷】
    私自身はこのプロジェクトをやってみて、一般的な建築工事の経験や技量が大きく不足していると痛感しました。今度はそちら側もチャレンジしてみたいです。

  • 山際
  • 【山際】
    頑張ってください。屋敷さんはこのプロジェクトを通してかなり成長しました。これをベースに、新しいことに挑戦するのはいいことだと思います。

  • 屋敷
  • 【屋敷】
    えっ、褒められてる?そんなこと言われたのは初めてですよね。どう反応したらいいですか(笑)?

  • 吉本
  • 【吉本】
    私も屋敷さんは成長したと思いますよ。どんどんしっかりしてきて、今では山際さんが不在でも率先して大勢の協力会社の作業員さんをまとめ、的確なアドバイスをしている。最初よりもかなり信頼度が増し、任せられることが増えました。今後が楽しみです。

 

QUESTION 6 最後に、学生の皆さんへメッセージをお願いします。
建設と機械の分野が共存する世界 型にハマらない楽しさが、ここにはある!
  • 屋敷
  • 【屋敷】
    建設と機械の分野を一緒にやるという、結構マニアックな工事をしている会社なので、一般的な建設会社とは異なる、様々な工事パターンを経験できます。色々なことをしてみたい方には向いていると思いますよ。

  • 山際
  • 【山際】
    より良いものをつくるために、設計から施工まで一括で請け負い、管理を行う。そんな皆様の生活になくてはならないものづくりをしてみませんか。形に残るやりがいのある仕事だと思います。大変ですけどね(笑)。

  • 相良
  • 【相良】
    社会に出ると思い通りにいかないこと、難題に直面することは多々あります。そういった中で、自分がやりたいこと・関わったことが、何かしら形となり社会の役に立つことは、思っていた以上に感慨深いものです。社会に寄与できる製品を提供できるように、一緒に挑戦しましょう!

  • 吉本
  • 【吉本】
    ポジティブ思考で前向きな人は物事を柔軟に捉えることができ、周りを明るくしてくれます。皆さんのような若い力をお待ちしていますので、ぜひホームドアというフィールドに飛び込んでみませんか?