CCUS バリューチェーン構築に貢献するCO₂コンプレッサ
三菱重工技報 Vol.60 No.1 (2023) 新製品・新技術特集
事業推進センター
営業グループ
脱炭素化のニーズが急速に高まる中、産業分野で排出される二酸化炭素(以下、CO₂)を回収、輸送・利用、貯留するCCUS(注1)が注目を集めている。地球温暖化の原因とされるCO₂を大気に放出させないため、排出ガスからCO₂を回収し、パイプラインや液化CO₂船で貯留地まで運び、塩水帯層や枯渇油田などのCO₂を長期に亘り閉じ込めることが出来る地層に圧入する。
三菱重工コンプレッサ株式会社(以下、当社)は一軸多段コンプレッサとギアドコンプレッサの2種類のコンプレッサを設計/製造/販売しており、お客様の計画に合わせた最適なCO₂コンプレッサを提案できる。
現在世界各地で大規模なCCUS プロジェクトが計画されており、これらのニーズに合った大容量のCO₂の圧縮機としてギアドコンプレッサに改良を加えた新型ギアドコンプレッサを開発した。
本報では当社のCO₂コンプレッサに関する技術と開発した新型ギアドコンプレッサの特長を解説し、CCUS バリューチェーンの構築に貢献する当社の取組みを紹介する。
- 1Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage:二酸化炭素回収・利用・貯留
1. CCUS バリューチェーンで活躍するコンプレッサ
CO₂を回収、輸送、圧入するCCUS バリューチェーンの実現には各プロセスで効率よくCO₂を圧縮するコンプレッサが欠かせない(図1)。ここでは当社のCO₂コンプレッサの機種と特長、納入実績について紹介する。
1.1 一軸多段コンプレッサ
一軸多段コンプレッサは、図2に示すように1本の軸に複数のインペラを取り付けたロータをひとつのケーシング内で保持する構造となっている。吸込ノズルから入ったガスは、高速回転するロータに取り付けられたインペラの内部を通ることで遠心力によって圧縮され、所定の圧力となって吐出ノズルから排出される。
当社は1990年代より世界中の肥料プラントにCO₂コンプレッサを100台以上納入しており、その豊富な経験と実績に基づいたCO₂特有の炭酸腐食に対応する防食技術(ステンレス鋼のオーバーレイなど)や物性変化の大きいCO₂ガスの特性を考慮した性能予測技術を確立している。また、ガス密度が高いCO₂は圧力が高くなるとインペラやシール部で発生するロータを加振する力が増加するが、ロータ体格の剛性を上げる高ボス比インペラや、シール部に減衰機能を持たせたホールパターンシールなどの技術によってロータの安定運転を実現している。
一軸多段コンプレッサは、その構造的な特徴により、高圧あるいは圧力比率の高い圧入サービスに適している。また将来的にCO₂の回収量が増えた場合、既設のケーシングを流用してインペラや内部品を改造することで、大容量化することが可能である。
1.2 ギアドコンプレッサ
ギアドコンプレッサは図3に示すようにケーシング内に歯車を内蔵した構造となっており、一般的にひとつの大歯車軸と複数の小歯車軸で構成される。小歯車軸の両端にはインペラが取り付けられ、各インペラには、それぞれスクロールと呼ばれるケーシングを備えており、スクロールから排出されたガスは、配管を通って次の段のスクロールに流入し、圧縮される多軸多段の構造となる。なお、一軸多段コンプレッサと同程度の吸込圧と吐出圧の仕様となる。
大歯車軸はモータなどの駆動機によって駆動され、その動力は歯車を介して小歯車軸に伝達される。小歯車軸の回転数は大歯車軸との歯数比で調整され、各インペラは各々の最も効率のよい回転数で回転できる。
さらにインペラ毎にケーシングをもった構造的な特長により、スクロールと次段のスクロールとの間にガスクーラを配置することが可能で、各インペラの入口温度を下げることで、ガスの圧縮に必要な動力を低減できる。そのため、ギアドコンプレッサは、コンプレッサだけでなく、ガスクーラ、潤滑油設備、軸封システムなどの複数の関連機器とコンプレッサをまとめてお客様に納入する場合が多い。
また一軸多段コンプレッサと比べ、容量の大きいガスの圧縮に適しており、CCUS バリューチェーンの上流で必要となる大容量のCO₂の圧縮に向いている。
1.3 CCUS 向けコンプレッサの実績
表1に当社のCCUS 向けコンプレッサの主な納入実績を示す。一軸多段コンプレッサは2003年にアルジェリアのガス処理プラントに吐出圧200barのコンプレッサを納入して以来、研究開発を重ね、2019年にはさらに高圧の吐出圧550barのコンプレッサをブラジルのFPSO(注2)向けに納入している。
ギアドコンプレッサは2017年に米国のペトラノヴァ炭素回収プロジェクト向けに吐出圧130barの8段型のギアドコンプレッサを納入しており、その容量はおよそ5000ton/dayとなり、世界最大容量の実績がある。
- 2Floating Production, Storage and Offloading System:浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備
| 納入年 | 国名 | 納入先 | 機種 |
|---|---|---|---|
| 2003 | アルジェリア | ガス処理プラント | 一軸多段 |
| 2015 | ブラジル | FPSO | 一軸多段 |
| 2017 | 米国 | 炭素回収プロジェクト | ギアド |
| 2019 | ブラジル | FPSO | 一軸多段 |
表1 CCUS 向けCO₂コンプレッサの主な納入実績
2. 新型ギアドコンプレッサパッケージ
CCUS はEOR(Enhanced Oil Recovery:石油増進回収)やガス処理プラントを中心に50年近い歴史があるが、近年の脱炭素化の潮流を背景に世界各地でこれまでにない大規模なCCUS 計画が検討されている。
EOR ではなくCO₂を貯留するためだけのCCUS は、これまで必要とされなかった設備であるため、可能な限り設備投資にかかる建設費用や設備維持のためのメンテナンス費用の低減が求められている。
そこで、大容量のCO₂の圧縮に適したギアドコンプレッサの大幅な改良を行い、コスト低減、現地据付期間の短縮、メンテナンス性の改善といったニーズに合わせた製品開発を実施した。
2.1 新型ギアドコンプレッサの開発
ギアドコンプレッサは、各インペラに備えたスクロール同士が干渉しないように大歯車の大きさを決めるが、歯車の周速を基準値以下に抑えるため、大歯車のサイズに合わせて高価な6極のモータで駆動する必要があった。また、スクロール同士が近接するため、コンプレッサのメンテナンススペースが狭いという課題を抱えていた。
そこで、コストとメンテナンスの課題を解決すべく、図4に示すように大歯車の大きさを小さくし、アイドルギアを追加した新たなギアドコンプレッサを開発した。これにより大歯車のサイズが小さくなり、6極モータより安価な汎用の4極モータでの駆動を可能とした。
またアイドルギアアレンジとすることで、コンプレッサは幅広の体格となり、近接していたスクロール間の距離が広がることで、コンプレッサ周りのメンテナンススペースを広く確保できるという利点も出せた。
2.2 据付け期間の短縮とメンテナンス性を向上したコンパクトモジュール
新型コンプレッサに加え、現地据付け期間の短縮、メンテナンス性改善を図るためギアドコンプレッサパッケージ全体をコンパクト化した。
CCUS の導入が進む先進国を中心に設備建設時にかかる高い人件費の低減が課題となっている。そこで、現地での作業期間を短縮するため、図5に示すようにコンプレッサとシールシステムや計装をひとつのモジュールとし、ギアドコンプレッサとその周辺機器を現地への輸送制限を考慮して4つのモジュールで構成することで現地へ輸送する部品点数を最小限にし、モジュールを設置後に機器間の配管や計装を繋ぐことで、現地作業日数の大幅な短縮に貢献する。
また、メンテナンス性を改善するため、従来はガスクーラの冷却水配管ヘッダをガスクーラの手前に設置し、パイプラック上に配置していたが、ガスクーラのメンテナンス時にバンドルを引き抜き易いように冷却水配管を埋設もしくは鉄骨架台上に設置する配置に変更した。機器のメンテナンスの邪魔になる付帯設備を削減する設計とした。
さらに、コンプレッサ周りの配管をまとめ、コンプレッサ周りのメンテナンススペースを広げ、メンテナンス時に分解が必要となるコンプレッサと接続する補助配管をブロック化することで、メンテナンス時のコンプレッサの分解組立てが容易になる工夫をした。
図6に従来と新型のコンパクトモジュールの比較図を示す。従来機に比べフットプリントは約20%減となり、限られたスペースに設置し易い仕様となった。
3. カーボンニュートラル達成へ向けて
当社はCO₂コンプレッサの豊富な実績と技術力を持ちお客様のCCUS 計画に一軸多段コンプレッサや新型ギアドコンプレッサの特長を活かした最適なコンプレッサパッケージを提供している。三菱重工グループの一員としてCO₂回収設備などの他製品とのシナジーを活かし、カーボンニュートラルの達成に貢献する。