クリ-ンエネルギーとして期待高まるアンモニア
プラントの多様なニーズに応えるコンプレッサ

三菱重工技報 Vol.60 No.3 (2023) エナジードメイン特集

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アンモニアは肥料や工業用途として利用される。近年ではカーボンニュートラルへの移行を背景に二酸化炭素を排出しないクリ-ンエネルギーとしての活用に期待が高まっている。生産、運搬、貯蔵にいたる技術が既に確立していることから、火力発電、工業炉、船舶燃料での利用技術開発が進む。また大量輸送が難しい水素を輸送するキャリアとしての利用にも注目が集まる。
こうした状況から世界各国でアンモニア製造プラントの計画が増加傾向にある。また低・脱炭素化やプラントの拡張・更新など多様なニーズが生まれている。
本報では三菱重工コンプレッサ株式会社(以下、当社)アンモニアプラント用コンプレッサパッケージの特長及び、低・脱炭素化や既存プラントの更新ニーズを紹介する。

1. アンモニアプラントにおけるコンプレッサ

アンモニアの製造工程(ハーバー・ボッシュ法)では空気やガスを圧縮するコンプレッサが中心的な役割を担っている。アンモニア製造工程で使用される主なコンプレッサとその役割を図1に示す。コンプレッサの効率や性能はプラントの操業そのものに直結しており、高い信頼性が要求される機器である。

アンモニア製造工程で使用される主なコンプレッサとその役割
図1 アンモニア製造工程で使用される主なコンプレッサとその役割
アンモニア製造工程で使用される主なコンプレッサとその役割
図1 アンモニア製造工程で使用される主なコンプレッサとその役割

当社のアンモニアプラント向けコンプレッサの納入実績としては1960年代に韓国のプラントに納入して以来、継続的に世界各国に350台以上のコンプレッサを採用頂き、プラントの安定操業に貢献してきた。近年では米国の世界最大規模のアンモニアプラント(日産3600トン)への納入実績を持つ。表1に当社のアンモニアプラント向けコンプレッサの主な納入実績を示す。

納入年 国名 プラント規模(日産)
2015年 サウジアラビア 3300トン
2017年 ウズベキスタン 2000トン
2019年 ナイジェリア 2300トン
2020年 サウジアラビア 3300トン
2021年 米国(注) 3600トン

表1 アンモニアプラントへの主な納入実績

  • ブルーアンモニア

2. 合成ガスコンプレッサトレンの当社製品特長

アンモニア製造工程における圧縮プロセスには図1に記載の①~⑤があるが、ここではプラントの心臓部でありアンモニアの生産量に直接関わる合成ガスコンプレッサの当社製品の特長について紹介する。

2.1 コンプレッサトレン構成

合成ガスコンプレッサで圧縮するガスの主成分は水素と窒素の混合ガスである。アンモニア合成には高い圧力が必要であるため吸込と吐出の圧力比が高く、コンプレッサは低圧用(LP:Low Pressure)、高圧用(HP:High Pressure)の最低2台が必要である。高圧サービスのため垂直分割型(Vertically split type、以下V型)の一軸多段コンプレッサを適用する(図2)。V型のコンプレッサは外側のケーシングが円筒状の一体成型物となっており、およそ50~700barg、試験的には1000bargもの高い圧力に耐えられる構造で、本サービスでは150~300bargのレンジで用いられてきた。また、メンテナンスは内部品一式を軸方向に抜き出すことで行う。

一軸多段コンプレッサ(垂直分割型=V型)の構造
図2 一軸多段コンプレッサ(垂直分割型=V型)の構造
一軸多段コンプレッサ(垂直分割型=V型)の構造
図2 一軸多段コンプレッサ(垂直分割型=V型)の構造

当社製合成ガスコンプレッサと従来型のトレン構成比較を図3に示す。従来型は片軸駆動機をベースにコンプレッサを連続で配置する構成で、メンテナンス時には、コンプレッサごとメンテナンスエリアに移動させる必要があるが、当社のトレン構成では両軸駆動機をベースに、その両側にコンプレッサを配置することでコンプレッサを移動させる必要がなく、その場で内部品一式の交換が可能である。本トレン構成はメンテナンス性に優れていることから、多くのお客様から好評をいただいており、150台以上の実績がある。

当社製と従来型合成ガスコンプレッサのトレン構成比較
図3 当社製と従来型合成ガスコンプレッサのトレン構成比較
当社製と従来型合成ガスコンプレッサのトレン構成比較
図3 当社製と従来型合成ガスコンプレッサのトレン構成比較

2.2 V型コンプレッサのボルトレス構造

前述の通り、V型コンプレッサは主に高圧サービスに適用するが、当社製コンプレッサの特長の一つにメンテナンスが容易なボルトレス構造がある。コンプレッサはケーシングと内部品で構成されるが、V型コンプレッサは構造上、軸方向に内部品一式を取り出すため、筒の片側の先端が引き出し可能なフリー構造となっている。従って、運転中の内圧を保持するためには、ケーシングの一端に蓋を取り付け、ボルトにより締結固定する必要がある。一方、当社製コンプレッサではシアリングとリテイニングリングを適用したボルトレス構造を採用しており、この構造によりメンテナンスの際のコンプレッサ分解時間を大幅に短縮できる。またボルトの隙間からのガス漏れリスクがないといった安全面でも大きなメリットがある(図4)。

V型コンプレッサの外部とのシール構造
図4 V型コンプレッサの外部とのシール構造
V型コンプレッサの外部とのシール構造
図4 V型コンプレッサの外部とのシール構造

2.3 シールガス供給装置一体型(着脱式)台板

コンプレッサは内部のガスを外部に漏らさないようにドライガスシールを採用している。このドライガスシールは回転体と静止体の間に2~3μmの微小隙間を持つため、フィルターを通したクリーンなガスを供給するシールガス供給装置が必要である。シールガス供給装置は従来コンプレッサ台板の外側に設置するが、この場合、現地でシールガス供給装置とコンプレッサの間の配管接続作業が発生する。よって近年では事前に配管接続を施工し現地での作業時間を大幅に削減するため、シールガス供給装置をコンプレッサと同じ台板上に載せる要望も多い。その場合、台板サイズ拡大や重量増加に伴うハンドリング性の悪化や輸送費の増加、輸送制限への影響も出てくる。そこで当社では、着脱式の片持ち梁構造としたシールガス供給装置も提案している。シールガス供給装置とコンプレッサの配管接続を事前に確認できるだけでなく、シールガス供給装置の取り外しが可能なため、従来通りのコンプレッサ台板サイズでの輸送が可能で、輸送費の増加にはならない(図5)。このように従来の外置き型、台板上や片持ち梁構造など、お客様のご要望に合わせた提案が可能である。

シールガス供給装置一体型(着脱式)台板
図5 シールガス供給装置一体型(着脱式)台板
シールガス供給装置一体型(着脱式)台板
図5 シールガス供給装置一体型(着脱式)台板

2.4 性能最適化

当社製コンプレッサは、高速化による効率アップ、蒸気タービンとの回転数マッチングによるタービン効率アップ、それによる動力低減=蒸気消費量低減をコンセプトにしている。高速セレクションによる小型化はお客様のCAPEX(Capital Expenditure、設備投資)の低減にも寄与する。一方で近年増加しているモータ駆動案件の場合、タービンとは異なりモータの回転数はその地域の電源周波数に依存する。例えば60Hz、4極モータの場合、回転数は1800rpmと低速で固定される。そのため図6のように両軸モータと各コンプレッサの間に各々増速ギアを備えることで、低圧用と高圧用のコンプレッサの回転数を各々調整し、性能を最適化することができる。

モータ駆動コンプレッサトレン構成
図6 モータ駆動コンプレッサトレン構成
モータ駆動コンプレッサトレン構成
図6 モータ駆動コンプレッサトレン構成

3. 既存プラントの更新

アンモニアの需要が増加するにつれ、新設だけでなく既存プラントの更新も注目されている。アンモニアプラントは歴史が古く、プラントの処理能力やコンプレッサの効率が低いプラントも少なくない。そこで最新型コンプレッサに置き換えることで、プラント処理能力増強はもとより、高効率化によるお客様のOPEX(Operating Expense、事業運営費)改善にも寄与することができる。また、既存のプラントを更新する際には投資コストを抑えるために改造範囲を最小限とすることが好ましいが、当社は350台以上の豊富な置換実績・技術を基に、既存プラントの状態やお客様のご要望に合わせ、最適化や改造範囲最小化の提案が可能である。例えば能力増強案件において、従来の設計ではコンプレッサが大型化し、既存のコンクリート基礎の改造が必要となる場合もある。一方で改造工事では、通常定修期間に行われるために期間に制約がある上、古い基礎の改造に対する健全性の評価が困難である。よって、図7のような独自のカスタムデザインにより既存の基礎にフィットさせることで改造範囲を最小化し、お客様の投資効果の最大化をサポートすることができる。
このように当社製コンプレッサへの置換により、既存プラントのOPEX改善に伴うお客様の投資対効果の最大化やCO₂排出量削減に寄与できる。

既存のコンプレッサを当社製に置き換えた事例(プラント処理能力増強工事)
図7 既存のコンプレッサを当社製に置き換えた事例
(プラント処理能力増強工事)
既存のコンプレッサを当社製に置き換えた事例(プラント処理能力増強工事)
図7 既存のコンプレッサを当社製に置き換えた事例
(プラント処理能力増強工事)

4. 低・脱炭素化への対応

近年ではカーボンニュートラルを背景にアンモニアプラントにおける低・脱炭素化検討も進んでいる。製造過程で発生するCO₂を回収するブルーアンモニアや、再生可能エネルギー由来の電力を利用した水電解装置で製造した水素を原料とするグリーンアンモニアは、クリ-ンアンモニアとして燃料利用へ用途を拡大している。
低・脱炭素化実現のために、ブルーアンモニアでは回収したCO₂を地中に埋めるなど、圧送するためのCO₂コンプレッサが必要となる。当社は従来、尿素プラントやガス処理でCO₂コンプレッサの実績を多く持つ。
グリーンアンモニアでは高圧蒸気が発生する改質装置がなく(図8)、コンプレッサを駆動する駆動機は高圧蒸気を利用した蒸気タービンからモータ電動機へ変更となる。また水電解装置で発生した水素を窒素と合成するための昇圧用ブースターコンプレッサが必要となる。この純水素昇圧に対応するため大容量の水素コンプレッサの開発も進めている。

グリーンアンモニアプロセスにおけるコンプレッサ
図8 グリーンアンモニアプロセスにおけるコンプレッサ
グリーンアンモニアプロセスにおけるコンプレッサ
図8 グリーンアンモニアプロセスにおけるコンプレッサ

5. 今後の展開

アンモニアの燃料活用が注目され、その需要が高まっていることを背景に、新規プラント建設や既に稼働中のアンモニアプラントの能力増強・効率改善など、多様なプラント需要に応えるターボ機械最適化の要求も増加している。当社は豊富な新設/改造工事の実績を基とした信頼性の高い一軸多段コンプレッサ・駆動機の提案により、お客様とともにカーボンニュートラル社会の達成に貢献する。