ベテラン社員座談会
入社して30年 同期社員が語る
先進技術のベテランエンジニアとしての矜持
わが国の重化学工業分野でトップレベルにある三菱重工グループのなかで、最先端の宇宙航空分野から生活に身近な空調設備まで幅広い領域に関わるエンジニアリング事業に携わるMHIエアロテクノロジーズ。関西国際空港が開港した1994年に入社して以降30年にわたり、急速に進歩発展する宇宙航空分野の第一線で蓄積されてきた技術と知識の継承に向けて次代を担うにふさわしい人材の育成に努めてきました。
日進月歩で進化する技術要請のもとで先進技術に率先して取り組んできたベテラン社員3名に、不断の努力と研鑽から得られた成果を後輩たちに贈る熱いエールとしてお届けします。
PROFILE
[T.H.]
防衛・宇宙事業部
飛昇体・宇宙技術部
飛昇体構造装備設計課 構造チーム
主席チーム統括
1994年入社
- 現在の担当
- 誘導機器 構造設計/解析チームのとりまとめ
[I.T.]
防衛・宇宙事業部
航空機技術部
装備設計課 次期戦闘機チーム
主席チーム統括
1994年入社
- 現在の担当
- 装備設計/設計チーム取り纏め
[S.J.]
防衛・宇宙事業部
航空機技術部
構造設計・試験課 解析チーム
主席チーム統括
1994年入社
- 現在の担当
- 自衛隊機の構造解析/解析チームの取りまとめ
入社早々から「第一線」、現場が育てる若い力
―絶え間のない挑戦が成長の貴重な糧に―
< QUESTION 01 >
新人時代、そして中堅社員時代~現在までのお仕事の内容について教えてください。
[T.H.]
新人時代はヘリコプターの強度解析を担当していました。陸上自衛隊のOH-1という機種や、民間機のMH2000を担当しました。中堅時代はカナダの民間航空機を経て、日本とアメリカを行ったり来たりしながら、長らくBoeing社の製品開発に携わりました。その後、日本に帰ってきてMitsubishi SpaceJetの主翼を中心に解析作業に携わりました。現在は誘導機器の解析を担当しつつ、設計も含めた構造チームの取りまとめをやっています。
[I.T.]
私は入社して最初に、航空自衛隊のF-2戦闘機(当時はXF-2)の降着系統の設計作業で、図面維持や取扱説明書の原稿作成等を担当しました。その後は、様々な防衛航空機と民間航空機に携わり、燃料・油圧・空調系統などの設計作業や、装備設計の管理業務などにあたってきました。防衛航空機では先のF-2のほか、F-15近代化、P-1・C-2などの機種、民間航空機ではMitsubishi SpaceJetにも関わっておりました。現在はF-3次期戦闘機設計チームの取りまとめをやっています。
[S.J.]
私も基本的に解析部門が担当で、[T.H.]と同じ課に入社しました。私の場合は最初から、カナダのBombardier社と三菱重工が共同開発していた民間航空機を長く担当しました。その後JR東海社のリニアモーターカーの設計を経て、[I.T.]も述べた防衛庁(現防衛省)の大型機体2機(P-1・C-2)に川崎重工社へ在籍出向をして10年程開発初期段階から設計に携わりました。それからMitsubishi SpaceJetに10年程携わり、今は自衛隊機の構造解析チームの取りまとめをやっています。
プレッシャーを目標達成への動機づけに
―困難が大きなやりがいへと変わるとき―
< QUESTION 02 >
これまでの仕事で大変だったエピソード、やりがいや達成感を感じた瞬間を教えてください。
[T.H.]
私が入社して最初に担当した機体がOH-1というヘリコプター。強度計算書を作成して、その後に航空機の安全性を検証する「全機静強度試験」がありました。防衛省、川崎重工社と共に、私も三菱重工を代表して試験に立ち会いました。試験ではモニタを見ながら歪ゲージや変形などの数値をチェックするのですが、その数値が予想から外れていたりするとその理由をきちんと説明できるまで試験場から帰してもらえませんでした。昔はそんなことが何度もありましたが(笑)、今となってはその経験を糧に成長できたのかなという思い出です。
[I.T.]
入社5年目ぐらいに、航空自衛隊の飛行開発実験団に2年間駐在しました。戦闘機の飛行試験の支援作業として、飛行試験のモニターやデータ解析、機体トラブルの対応などの業務にあたりました。防衛省の一員となって仕事をするため、飛行試験のモニターは緊張とプレッシャーの連続で一瞬も気が抜けません。他の作業と比べてもダントツで大変でした(笑)。装備系設計には、降着系統、油圧系統、操縦系統、燃料系統などがありますが、その全系統プラス電気系統もすべて見なければいけません。守備範囲が非常に広いため、大学入試よりも必死に勉強しました。この2年間は1番しんどかったのですが、実機のすぐ側で作業できる環境で、パイロットや整備士の生の意見を聞き、設計室だけでは得られない貴重な経験をして、知識の幅が非常に広がりました。誤判断から一度大きなミスも犯しましたが、そこで私の考え方がガラッと変わり、飛行安全に関する意識が非常に高まりました。一度失った信頼を取り戻すために必死で努力しました。
[S.J.]
カナダに勤務していた時、国内で製造した機体の一部をカナダで仕上げる作業をしていました。日本との時差の関係で仕方ない面もありましたが、勤務時間が朝7時から夜11時までだったため、セブンイレブンと呼ばれていました(笑)。そんな生活が皆さん半年程続き、体力的にしんどかったですね。カナダでは残念ながら見られなかったのですが、自分が携わったMitsubishi SpaceJetとC-X・P-Xの初飛行を見られたことは一番の思い出です。飛んだときは辛い思いも全て消えるものですね。
[T.H.]
Mitsubishi SpaceJetのときは感動したね。
[I.T.]
俺は確か当時勤務場所だった県営名古屋空港隣接ビルの中で見ていたよ。皆並んでね。[S.J.]と[T.H.]の2人は抱き合ったりしていたよね(笑)。
[S.J.]
さすがにそこまではしていないよ(笑)。
専門分野を支えるエンジニアの存在
―相互のコミュニケーション力の高さを武器に―
< QUESTION 03 >
30年以上働いたからこそわかる、貴社の強みを教えてください。
[T.H.]
例えば航空機の場合だと、機体を開発していく中で、空力性能を見る人、構造を設計し強度解析する人、試験をする人、マニュアルを書く人、さらには運用面を担当する人など、社内各所に専門的な知識を持つ人材がいます。開発を通して何かあったときに相談したり、話を聞けたりできるところはいい点だと思います。
[S.J.]
弊社は横の繋がりが広く、相互にサポートしているので、今[T.H.]が言ったように、設計の一連の流れを把握して、動きやすい会社だと思っています。
[I.T.]
私の意見としては、たぶんこの2人も一緒だと思いますが、長年勤務していると色々な会社の人と付き合いがあります。例えば、国内の航空機設計メーカー各社をはじめ、ほかにも様々な関連会社と仕事をしていく中で、色々な会社の人のやり方を聞いて、じゃあ我々はどうなのかと比較したときに、かなり高いレベルの仕事をしていると思います。三菱重工がプライムの戦闘機では、かなり深いところまで仕事をやらせてもらっているという現状があります。それは三菱重工グループの一員ということが大きいと思うし、それで弊社が結構いいポジションの業務につけるのではないかと思います。
蓄積された技術と知識を分かち合う
―自らの担当に全力を尽くす―
< QUESTION 04 >
同期同士のつながり・絆やそれが業務で発揮されたエピソードがあれば教えてください。
[I.T.]
私の場合は装備設計なので、どちらかと関われる可能性もあったにしても、他にもエンジニアの人数もいっぱいいたし、この3人が一緒に揃う機会はなかなかなかったね。2人はあるでしょう。
[T.H.]
主翼と胴体でチームが違うので、基本的に胴体は胴体チーム、主翼は主翼チームでの設計作業でした。主翼と胴体の結合部は一緒にやりますが、そこの作業一部の人に限られるので、 あまり一緒にはやってないですね。それぞれの担当を一生懸命やり、自分の役目をひたすら果たしていく感じでした。
[S.J.]
担当機種が同じ機種でも、担当構造が違うと設計者同士がそこまで一緒になることはないかもしれません。ちなみに、Mitsubishi SpaceJetでは[T.H.]は主翼を、私は胴体を担当していました。
[I.T.]
そして、私は装備設計をやっていました(笑)。
プロジェクト業務ならではの魅力
―サポート能力の高さを発揮する土壌作りを―
< QUESTION 05 >
三菱重工グループの中でのMHIエアロテクノロジーズの役割や他グループ会社との連携のエピソードなどを教えてください。
[I.T.]
三菱重工グループだからこそ、上流にある様々な仕事にも関われる。だから三菱重工を最大限サポートするということが我々の役割だと思っています。プロジェクトが大きいと、もちろん三菱重工だけではできないので、弊社や協力会社と一緒にチームを作ってやっていきます。そのときは各々の所属に関係なく、同じ機種を一緒に設計するチームという感覚です。
[T.H.]
チームでやっているからこそエンジニアとして見えてくるものがあるし、技術的にはそれに尽きると私は思っています。
[S.J.]
三菱重工がプロジェクトに必要な様々な設計や解析を取りまとめて、私たちや他のグループ会社でサポートしていく体制を整えています。
生き残るエンジニアについて考える!
―自ら考えて行動をするとき―
< QUESTION 06 >
これからのエンジニアに必要とされる知識や考え方にはどんなものがありますか。
[S.J.]
今はAIに聞いたら教えてくれる世界があり、ただ、それが正しいかどうかはわかりません。解析を長年やってきたからわかることもあって、その作業を根気強くやれるかどうかというのが大事かなと思います。我々の時代は時間的にまだ余裕があって、色々なことを勉強しながら、まだゆっくりやれていました。今は開発期間ひいては設計にかけられる時間も短くなってきています。そこで最適なものを作るのは難しくなってくるだろうと思っています。たとえ短い納期になったとしても、どれだけ慎重に落ち着いて設計をやっていくかを大事にしていきたいです。例えば、AIに言われた通りに設計して終わってしまわないように、そこは気をつけないといけないと思います。
[I.T.]
航空機の設計者は、解析から装備設計の人、構造のデザインもいれば、性能特性計算する人まで、いろんな人が集まって仕事をするわけです。私もそうでしたが、まずコミュニケーションを取るところから始まると思っています。その専門知識があった上で、コミュニケーション能力が必要だと思います。設計者になりたいってなったときに、「人とコミュニケーションが苦手です、取れません」という人は、資質として難しいのではないかなと思っています。例えば最難関大学の入試問題って、難しくても答えがありますが、私たちが作るものって答えがないわけですよ。0から作っていかなきゃいけなくて、自分が出した答えを説明しなきゃいけない。「こうこうこういう理由でこうしました」と。答えがあるものを解くのではなくて、自分で作らなきゃいけない。みんながそういう意識を持つだけで、全然違うのかなと思っています。
[T.H.]
設計の業務の中に図面を専門に書くドラフターという職種があります。アメリカでドラフターの人に言われたのは、「俺はみんながいいと言うまで書き続ける。それが俺の仕事だ」って。コミュニケーションは大事だけれど、それぞれの専門分野を突き詰める、そういう人も必要だと思います。Boeing社に行って勉強になったのは、ボルトやリベットなどのファスナーも、それだけを研究している人がいて、この人に聞けば全てわかるっていうぐらいの専門の人がいます。そういうスペシャリストと、その間を取り持つ、潤滑油のようなコミュニケーションが取れるジェネラリスト、いろんな人が必要なのかなと私は思います。
[S.J.]
弊社も今、DXやAIを解析に取り入れ始めていて、データ処理など単純作業のルーティンワークは、今後AIに淘汰されて不要になると思います。やっぱり自分で考えないとダメ。ただ考えただけでもやっぱりダメで、コミュニケーションも必要です。動いてアウトプットをする、考えて行動できる人間が生き残るエンジニアだと思います。
[I.T.]
それは俺のさっき言った話と一緒だね。そういうことです。
[T.H.]
確かにそれね、間違いない。
[S.J.]
そういうルーティンワークも大事なので、まったく否定するわけではないのですが、世の中でこれだけ自動化が進んでしまうと、彼らのやることが心配な時代になってきてしまったと思います。
エンジニア冥利につきる職場とは
―好奇心を刺激する仕事を期待する人たちへ―
< QUESTION 07 >
学生の方々に向けて、メッセージをお願いいたします。
[T.H.]
ヘリから民間航空機まで多くの機種をやってきて、今は誘導機器の設計やっていますが、定年まで興味を持って仕事が続けられそうです。途中で飽きることなく、最後までエンジニアとして興味を持ってやっていけるのは、おすすめできる仕事かなとは思います。入社されたとして長い間、いろいろ好奇心を刺激されるような仕事ができるということです。部門によって異なるかもしれませんが、そこは恵まれていたなと思います。
[I.T.]
私が学生に対してはっきり言えることは、航空機の設計に興味がある方は、ぜひ弊社に挑戦してもらいたいということです。国内で航空機の設計をやれる会社自体ある程度限られると思いますので、航空機の設計をやってみたいという方は、どんどん挑戦してきてほしいというのが私からのメッセージです。もし入社されたら、[S.J.] や[T.H.]みたいな優しい上司がいっぱいいますので。
[S.J.]
私たちはもう30年にわたり航空機設計を担当していますが、弊社は設計の初期段階から製造サポート、運用サポートまで幅広く担当しており、材料試験などもやったりします。どこに配属されるかは別として、宇宙をはじめ、空を飛ぶものにはとりあえず携わることができます。他にも多種多様な企業があると思いますが、飛ぶものに対して興味がある方たちにぜひ選んでほしいと思います。
私にとってエンジニアとは、考えて想像することだと思っています。想像と創造、どちらも兼ねるエンジニアを目指して、若い人には挑戦していただきたいです。
- 社員の所属・役職・入社年次・担当業務等は取材当時のものです。