世界を舞台に、社会インフラとものづくりを支える。6名の社員が語る、三菱重工グループ 調達部門の仕事(後編)

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本座談会は、前後編の2部構成でお届けします。後編となる今回は、三菱重工グループの調達部門でさまざまな領域を経験し、現在も現場の第一線で活躍する3名の社員が登場します。
バイヤーや企画など、調達部門内のさまざまな領域で働く3名。事業のスケールの大きさや、若手のうちから任される裁量、様々なイレギュラーを乗り越える中で得た成長について語り合ってもらいました。
この記事を通じて、調達部門がどのようにものづくりや社会インフラを支えているのか、その役割や働く魅力を少しでも身近に感じていただければ嬉しいです。

登壇者紹介

  • 濵田 尚弥
    三菱造船株式会社(MSB) 調達部 調達企画グループ
    濵田 尚弥
    2009年入社。大型船向け主機の営業、長崎での人事職を経て、船舶の調達部門へ。現在は、他造船所やサプライヤだけではなく、業界団体や国を巻き込んだ業界横断の物流効率化プロジェクトや、情報連携基盤の構築を推進している。多様な職種で培った経験を活かしながら、調達の枠を超えた全体最適の仕組みづくりに取り組んでいる。
  • 横尾 恵理子
    三菱重工コンプレッサ株式会社(MCO) 調達センタ― 調達グループ
    横尾 恵理子
    2011年入社。大学時代は経済学部で金融を学び、中国への交換留学も経験。入社後は経理部門を経て、調達部門へ異動した。現在は、コンプレッサの素材やタービンの構成部品の買い付けを担当。大規模プロジェクトで財務リスク管理をやり遂げた経験を活かし、数字と現場の両面から調達業務に向き合っている。
  • 奥田 晃士
    三菱重工業株式会社 民間機セグメント 調達部 素材・購入品購買グループ
    奥田 晃士
    2012年入社。学生時代はテニス部に所属。現在は民間航空機ボーイング787の主翼製造に必要な数万点に及ぶ部品の調達業務を担当。世界情勢の変化を楽しみながら、グローバルな調達の最前線に立っている。

買い付けから物流改革まで。調達部門が担う仕事の広がり

まずは皆さんが現在、どのような事業の中でどのような製品の調達に携わっているのか、それぞれの事業の特色と合わせて教えてください。

[横尾]
私はコンプレッサや蒸気タービンの材料となる素材や部品を調達する仕事をしています。コンプレッサとは、気体を圧縮して圧力を高める大型の産業機械のことで、主に世界中の石油化学プラントやエネルギー施設などで使われています。私が担当しているのは、コンプレッサの素材となる何十トンという非常に重たい鍛造品です。主に韓国や中国、そして日本のサプライヤから調達しています。

[奥田]
私は、世界中を飛び回る旅客機、ボーイング787の翼の製造に必要な部品を調達しています。主にアメリカやヨーロッパのサプライヤを担当しています。

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[濱田]
お二人が最前線で調達を行うバイヤーであるのに対し、私はバイヤーの活動を後ろから支えながら、サプライヤや他社の造船所も巻き込んだ、広範囲な物流効率化プロジェクトを推進しています。
船をつくるために必要な膨大な数の機器や素材をサプライヤから購入しますが、その多くは陸送です。そのため、陸上を運ばれてくる資機材の物流をいかに効率化できるかについて日々模索しております。

[横尾]
直接モノを買い付けるだけでなく、物流の仕組みそのものを調達部門が変えていくというのは、とても視野の広い取り組みですね。

アメリカのカルチャーにおける「ファミリーファースト」が味方となった大逆転劇

ここからは、皆さんが調達バイヤーとしてのスキルやマインドを発揮し、大きな成果につなげた具体的なエピソードについて伺っていきます。まずは奥田さんからお願いします。

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[奥田]
私は、一般的なバイヤースキルだけではなく、“相手の懐に飛び込むコミュニケーション力”も重要だと感じています。それを体感したのが、営業部門から異動直後に経験した、アメリカのサプライヤへの出張でした。
出張中に、サプライヤから「他社案件でトラブルが発生したため、今は訪問しないでほしい」と言われました。一方で、三菱重工の案件も優先して対応してもらう必要があり、電話だとなかなか話が前に進まず、切迫した状況でした。

そこで突破口になったのが、「Family First(家族第一)」という欧米に根付いた価値観でした。実は出張直後に、一生に一度のウェディングフォトの撮影を控えておりました。そこで、なんでもかんでも依頼するのではなく、案件の重要度や緊急度を明確化し、優先度をつけた上で、現地の担当者には腹を割って、「家族が僕の帰国を待っている。どうしても御社の協力が不可欠です。何とか優先度を上げて対応してほしい」と伝えました。

[横尾]
結果はどうなったんですか?

[奥田]
すると、相手の態度が変わりました。サプライヤの部長から直々に、「この時間は奥田のために使ってくれ」と言われ、停滞していた課題をその場で解決できました。相手の文化や価値観を理解し、協力したいと思ってもらえる関係を築くことの大切さを学んだ出来事でした。

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サプライヤ、同業他社、国を巻き込んだ物流改革への挑戦

続いて濱田さん。開拓精神で取り組まれた、業界横断の物流改革エピソードについて詳しく教えてください。

[濱田]
私がここ5年ほど特に力を入れて取り組んでいるのが、造船業界全体のサプライヤを巻き込んだ、国内の陸上物流を効率化するプロジェクトです。
近年は、トラックドライバー不足により、輸送費の高騰や発注していた資機材が造船所指定納期までに届かないといった課題が起きており、着荷主としても何らかの手を打つ必要がありました。

[横尾]
個別のバイヤーとしての枠組みを超えて、業界全体の仕組みそのものを変えようと立ち上がったわけですね。

[濱田]
そうです。まずは三菱造船として共同物流のアイデアを形にしていきました。
共同物流とは、自社の荷物だけでなく、競合関係にある他社の造船所の荷物も含めて、同じトラックや倉庫を共有し、効率よく一緒に運ぶ仕組みのことです。この構想を持って、業界団体やサプライヤ、他造船所へ何度も足を運び、施策の説明を重ねました。

[奥田]
競合企業や数多くの団体を巻き込むとなると、一筋縄ではいかなかったのではないですか?

[濱田]
まさにその通りです。皆さん、最初は「素晴らしい取り組みだから、ぜひ進めてほしい」と賛同してくださるんです。ただ、いざ具体的な検討に入ると、各社それぞれに異なる事情があるため、総論賛成・各論反対状態になることがよくありました。その中で各社の意見を一つひとつ掬い上げながら、関係者の理解を得ていくのは、なかなか大変でした。

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[横尾]
そんな中、どのようにしてひとつにまとめていったのでしょうか?

[濱田]
関係者の意見に耳を傾けながら、仕組みを柔軟に変え続けました。
最初は、トラックで各サプライヤを巡回して荷物を集める方法を考えていました。ただ、実際に進める中で「このやり方ではうまくいかない」という声も出てきたため、物流会社の倉庫を中継拠点として借り、そこに一度荷物を集めてから各造船所へ合積み出荷する仕組みへと方針を切り替えました。5年がかりで地道に取り組み続けた結果、現在ではこの仕組みに賛同し、実際に利用してくださるサプライヤの数も少しずつ増えています。これまでの調達の常識にとらわれず、新しい仕組みを形にできたことは、自分にとっても大きな手応えになっています。

サプライヤに寄り添い、完遂へ導いた一大プロジェクト

横尾さんも、経理部門から調達部門へ異動された後に、ご自身のスキルを活かして大きな課題を乗り越えた経験があると伺いました。

[横尾]
入社7年目の頃に携わった、最先端の石炭ガス化複合発電所の建設プロジェクトが特に印象に残っています。このプロジェクトでは、普段私たちが受注する標準的な発電所では使われない、特殊な装置を調達する必要があり、採用候補は1社のみでした。

[奥田]
対応可能なサプライヤが少ない特殊な装置となると一般的な調達とは違う難しさがありそうですね。限られた選択肢の中で、品質や納期、価格のバランスをどう取るかが重要になりそうです。

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[横尾]
そうなんです。そのサプライヤに発注することは、技術的な前提として決まっていました。ただ、大きな課題がありました。サプライヤの年間売上が数億円規模であるのに対し、私たちが発注しようとしていた金額は、その約3倍にあたる非常に大きな案件だったんです。
社内からは、「技術力は十分にあるとしても、これほど大規模な案件を最後までやり切れる体制があるのか」という懸念の声が上がりました。万が一、途中で事業継続が難しくなれば、プロジェクト全体に大きな影響が出てしまいます。そのため、調達の観点から財務面のリスクをどう管理するかが、大きなテーマになりました。

[濱田]
売上規模を大きく上回る発注となると、支払いのタイミングによっては、その会社の資金繰りに大きな負担がかかる可能性もありますよね。

[横尾]
そこが最大の課題でした。そこで私は、前職の経理部門で培った財務の知識を活かし、そのサプライヤの社長と何度も対話をしました。
他社からの受注状況や日々の資金の動きなど、必要な財務情報を共有いただきながら、発注から納入までの期間におけるキャッシュフロー、つまり実際のお金の流れを見通すための表を一緒に作成しました。バイヤーとして価格や納期を交渉するだけでなく、サプライヤが無理なく製作を進められるよう、財務面からもプロジェクトを支える必要があったんです。

[奥田]
サプライヤのキャッシュフロー計画までバイヤーが一緒に考えるというのは、一般的な調達業務のイメージを大きく超えていますね。まさに、プロジェクト全体を支える仕事だと感じます。

[横尾]
さらに、事業継続に関わるさまざまなリスクを洗い出した上で、最後はその会社に融資を行っている銀行へ、サプライヤの社長と一緒に直接伺いました。
銀行の担当者の方に対して、「三菱重工グループとしても非常に重要なプロジェクトであり、ぜひ一緒にやり遂げたいと考えていますのでご支援をお願いできませんか」と、私自身の言葉で説明しました。銀行の方々も、発注元のバイヤーが一緒に説明に来るとは思っていなかったようで驚かれていましたが、最終的には全面的に協力してくださることになりました。

[濱田]
そこまで徹底してリスクを一つひとつ整理し、サプライヤに寄り添いながら進めたからこそ、無事に製品の納入までたどり着けたのですね。

[横尾]
はい。無事にすべての機材が納入された後、そのサプライヤには、プロジェクトの完遂に大きく貢献してくださったとして、当社から感謝の意を表し表彰させていただきました。調達の仕事は、ただモノを買うだけではありません。サプライヤの事業を支え、共に成長していくことができる仕事なのだと、あらためて深く実感しました。

バイヤーに求められるのは、「変化を楽しむ姿勢」と「周囲を動かす力」

世界中の関係者とやり取りする三菱重工グループの調達部門では、バイヤーにどのような力や考え方が求められると思いますか?

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[奥田]
「変化を恐れず臨機応変に自ら考え、動いていく姿勢」だと思います。世界情勢や為替の変動など、自分たちではコントロールできない出来事が起こると、従来のやり方では必要な材料や部品の入手性が悪化します。だからこそ、従来のやり方に固執せず、状況に合わせてやり方や仕組みを変えるなど、柔軟に動くことが大切だと感じています。

[横尾]
環境が激変したときにフットワーク軽く次の一手を考えられる強さが必要ですよね。

[奥田]
どんなイレギュラーが発生しても、それを世界の舞台で買い物をする調達部門ならではの面白さや醍醐味だと割り切って楽しめるような前向きさがある人は、バイヤーの素質があると思います。

[濱田]
私は「立場や考え方の違う関係者をつなぎ、周囲を巻き込んでいく力」が大切だと感じています。
バイヤーは少しでも安く買いたいと考えますが、サプライヤは少しでも高く売りたいと考えます。このように、一見すると利害が真っ向から相反するように見える相手に対して、単にこちらの要求を押し付けるのではなく、双方がメリットを享受できる着地点をいかに見つけられるかが腕の見せ所です。

[横尾]
相手の立場を理解し、粘り強くやり切る姿勢がベースになければ、本当の協力関係は築けませんよね。社内でも、設計部門や品質保証部門など、多くの関係部署からさまざまな意見やこだわりが出てきます。
そうした声を一つひとつ拾い上げながら、たとえ反対意見があったとしても、「この観点で見れば、納得できる部分もありますよね」と少しずつ理解を得ていく。周囲を仲間に巻き込みながら前に進める調整力が、この規模のものづくりを動かすためには欠かせないと感じています。

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濱田さん、横尾さん、奥田さん。素敵なお話をありがとうございました。


編集後記

座談会を通じて、皆さんは三菱重工の調達部門にどのような印象を持ちましたか?
新規サプライヤの開拓、海外でのイレギュラー対応、タフな価格交渉、業界を巻き込んだ物流改革、サプライヤに寄り添ったリスク管理ーー。語られたエピソードは一つひとつ異なりますが、その根底に共通していたのは「相手を理解し、信頼関係を築きながら、周囲を巻き込んで前に進める力」でした。
若手のうちから大きな挑戦に向き合い、世界中の関係者とともにものづくりを支えていく。そんな仕事に少しでも心が動いた方と、いつか一緒に働ける日を楽しみにしています。

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