世界を舞台に、社会インフラとものづくりを支える。6名の社員が語る、三菱重工グループ 調達部門の仕事(前編)
調達部門の仕事は、世界を舞台に、社内外のステークホルダーと関わりながらものづくりを前に進めていく、ダイナミズムと創造性に満ちた仕事です。
本座談会は前後編の2部構成でお届けします。前編となる今回は、海外プロジェクトや量産品の事業などで活躍する3名の社員が集結。調達という仕事のやりがい、若手から一大プロジェクトに関わる裁量の大きさ、そしてそれを支えるチームワークについて熱く語り合います。
登壇者紹介
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- 三菱重工業株式会社 エナジードメイン GTCC事業部 調達部 高砂素材調達課
- 池田 晃司
- 2012年入社。前職では電機メーカーの営業、中小企業向けのコンサルタントを経験した後、入社。現在は火力発電所向け大型ガスタービン周辺機器の調達を担当している。最近のブームは、家族と近場の山でキャンプをすること。
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- 三菱重工サーマルシステムズ株式会社 調達部 調達企画グループ
- 埴田 卓朗
- 2017年入社。学生時代は旅行を趣味として30カ国を巡った経験を持つ。現在は空調事業においてタイの製造拠点を中心に、調達企画に携わっている。強みは、国内外を問わず主体的に行動できるフットワークの軽さ。現在の趣味は釣りで、船舶免許も取得している。
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- 三菱重工業株式会社 プラント・インフラドメイン 調達部 調達グループ
- 龍ノ平 光咲
- 2017年入社。現在は交通システムや化学プラントなどのEPCプロジェクトにおいて、部材の調達を担当している。休日は海外旅行やライブやフェスに出かけたり、映画を楽しんだりして過ごしている。
カタログからポチッと買うだけじゃない?調達の仕事とは
まずは皆さんが実際に業務を経験して感じた、調達という仕事について教えてください。
[池田]
入社前は調達に対して「決まった仕様のモノを手配して製造現場に回す、定常業務」というイメージを正直持っていました。毎年同じサプライヤと決められた通りに交渉するだけだと思っていたんです。実際には全くと言っていいほど違って、サプライヤの選定ひとつとっても、そのサプライヤの財務基盤に懸念がないか、途中で倒産してプロジェクトが止まるリスクがないかといった、シビアなチェックから始まります。
[埴田]
本当にそうですよね。私も学生時代は、調達がこれほど多くの役割を担っている仕事だとは全くイメージできていませんでした。
[龍ノ平]
複数のサプライヤから見積もりをとり、細部に至る交渉を重ね、ようやく発注にたどり着く。でも、調達の仕事はそこで終わりではないんですよね。
[池田]
発注した後も、そのモノがスケジュール通りに納期内にしっかりと納入されるまでフォローしていく必要があります。そのプロセスは大変ですが、その分無事に入荷が完了したときのやりがいや達成感は格別です。そういった一連の管理や社内外の調整を含めて、初めて調達という仕事が成り立っているのだと感じます。
ただモノを買うという行為とは、まったく異なるのですね。
[池田]
単なる買い物ではありません。特に私たちが扱っているような製品は「一度きりの買い物」ではないことが多いです。だからこそ、事業を中長期的に継続していくためのBCP(事業継続計画:災害などの緊急事態時に事業を継続させるための計画)の視点が不可欠になります。
例えば、サプライヤがタイの工場で生産しているとして、「もしそこに災害があったらどうするか」「もう一カ国、別の場所に工場を持っているか」といった供給リスクまで日頃から考えながらサプライヤと向き合っています。
[龍ノ平]
イレギュラーは日常茶飯事ですし、発注を急がなければいけない場面や、海外からの納期遅れといった課題が毎日のように起こるのも、この仕事のリアルですよね。しかも、それらの課題は調達担当者一人の力では解決できないんですよね。
[池田]
そこがまさに、調達という仕事の一番大事なポイントだと思います。新しい課題に直面したとき、物事を前に進めるために「社内外の誰に声をかけるといいのか」を適切に判断し、周囲を動かせる推進力が必要になります。だからこそ、調達は究極の「対人コミュニケーション」が求められる仕事だと言えます。
[埴田]
同感です!最近よく「AIに仕事が奪われる」と言われますが、調達の仕事における対人関係や、信頼関係の構築といった部分は、どうしてもAIには代替できない領域だと思います。
[龍ノ平]
バイヤーとサプライヤは、本質的に利害が相反する関係からスタートします。それでも、彼らの協力がないと私たちのものづくりは成り立ちません。その相反する利害を乗り越えて、どうやって強固な協力関係や信頼関係を築いていくか。そこに人と人との繋がりや感情が通い合うからこそ、面白い仕事なのだと思います。
調達する製品の圧倒的なスケールと、若手に任される裁量の大きさ
皆さんは調達のバイヤーとして、具体的にどのような製品を調達しているのでしょうか。それぞれの事業領域の特色について詳しく教えてください。
[池田]
私は火力発電所向けのガスタービンとその周辺機器を製造するための製品や部品を調達する仕事をしています。ガスタービンは巨大な製品なのですが、私が主に担当しているのはその周辺機器の調達です。例えば、ガスタービンをすっぽり覆う防音用の囲いがあります。
[埴田]
「エンクロージャー」ですね。本当に大きな製品ですよね。海外から調達してくるとなると、輸送も大変そうですね。
[池田]
そうなんです。エンクロージャーはベトナムや中国のサプライヤに製作してもらうのですが、船で丸ごと運ぶのは物理的に不可能なので、パーツごとに分割して現地まで輸送します。タイ、韓国、シンガポールなど、世界各地でプロジェクトが進んでいるため、どの国で火力発電所を建設するのか、輸送費がどれくらいかかるのかによって、調達先の選択肢も変わってきます。
龍ノ平さんはプラント・インフラ分野でどのような製品を扱っているのでしょうか。
[龍ノ平]
私は、交通システムや化学プラントなどのEPCプロジェクトの調達を担当しています。例えば、交通システムのプロジェクトでは海外の新規路線建設に必要となるレールや駅のホームにあるホームドアなどを、化学プラントのプロジェクトでは、各システム機器を動作させるための配電盤や変圧器等の電源供給設備などの様々な部材を、世界中のサプライヤから調達する役割を担っています。
[埴田]
海外のプロジェクトを調達の立場から支えられているのですね。
[龍ノ平]
はい。プロジェクトでは、日本国内だけでなく、世界中のサプライヤの中から最適な取引先を選定します。価格や納期、品質、輸送手段、そして世界情勢なども総合的に考慮しながら、「どこから調達するのがベストか」をイチから探して交渉するため、単にモノを買うというよりはプロジェクトを一緒に作り上げる感覚に近いです。
[池田]
若手のうちからそんなグローバルな交渉を任されるのは、三菱重工ならではですよね。
[龍ノ平]
そうですね。入社してすぐの頃は下関の造船所の調達として、工場に近いところで主に国内調達に携わりましたが、現在は国内外のEPCプロジェクト向けに海外調達も担当しています。幅広い経験を積めるのも、三菱重工の調達の魅力の一つだと感じています。
埴田さんの所属する冷熱事業では、どのような製品を扱っているのでしょうか。
[埴田]
私は冷熱事業で調達企画に携わっています。主にタイや中国にある海外の製造拠点や日本の事業拠点を全体的な視点で見渡しながら、どうやって調達品のコストダウンを実現するかという戦略の企画・推進を担当しています。
[池田]
冷熱事業といえばエアコンですよね!量産品ならではの難しさや、独自の面白さがありそうですね!
[埴田]
そうなんです。冷熱事業が扱う製品は、家庭用のエアコンから業務用のビル空調、さらには一台で家庭用エアコン数千台分に匹敵する冷却能力を持つターボ冷凍機まで非常に幅広いです。家庭用のエアコンはタイや中国などの海外拠点で製作しています。また、ターボ冷凍機は、半導体工場やデータセンター、そして中東や東南アジアの空調プラントなどグローバルに製品展開しています。
[龍ノ平]
エアコンが年間数百万台という規模で大量生産されるとなると、調達部門の役割も大きそうですね。
[埴田]
まさにそこが量産事業における調達の面白いところです。例えば、部品ひとつの価格が1円下がるだけで、年間の生産台数を掛け合わせると効果的なコストダウンに結びつくことがあります。また、同じ部品を継続的に調達するからこそ、日頃のデータ分析や、リスクに強いサプライチェーンの構築が事業において重要となってきます。
タフな交渉を乗り越え、掴み取った確かな手応え
若手のうちからそれほど大きな裁量と責任を持ってグローバルに活躍されていると、タフな壁に直面することも多いかと思います。皆さんがこれまでに直面した困難と、それをどのように乗り越えたのか、具体的なエピソードを教えてください。
[龍ノ平]
私は数年前、アメリカのプロジェクトで、現地サプライヤと主要なインフラ部材の価格交渉を任されたことがありました。当初はメールや電話など、リモートで交渉を進めていましたが、サプライヤの姿勢が非常に強気で(笑)。
どう交渉しても、こちらが提示する予算内に価格が収まらなかったんです。採算を左右するような緊迫した状況の中で、ついに上司から「もうラチが明かないから、今すぐアメリカに行って、直接対面で決着をつけてきてください!」と指示が出ました。
[池田]
いきなり現地へ乗り込むことになったのですね!相当プレッシャーのかかるシチュエーションだったのではないですか?
[龍ノ平]
私は学生時代に留学経験があったわけではなく、語学が堪能というほどでもなかったので、ネイティブのビジネスパーソンを相手に、英語で対等に交渉しなければならないことへの不安はありました。現地には設計担当者と私の2人で赴き、数週間にわたって毎日商談先との交渉を重ねました。その結果、少しずつ相手の態度も軟化し、最終的には合意を得ることができました。
帰国した際、社内のメンバーから「本当によくやった!」と笑顔で迎えられたときの達成感は、何物にも代えがたいものでした。
相手の懐に飛び込み、直接顔を合わせて対話を重ねることで、前向きな関係構築につなげることができたのですね。池田さんは、サプライヤとの関係構築で記憶に残るお仕事はありますか?
[池田]
はい。韓国のサプライヤから調達していた部材があったのですが、韓国国内の物価や賃金が急速に上昇し、日本国内で調達するのと変わらないほど価格高騰してしまった時期がありました。このままでは競合に対して価格競争力を失ってしまうという強い危機感があり、そこで、コストダウンのためこれまで取引実績がないベトナムのサプライヤを開拓することにしました。
まずは1週間ほどかけて、ベトナム現地の候補サプライヤを3〜4社、設計や品質保証の担当者と共に視察に回りました。私たちが開拓しようとしていたのは、ベトナム現地での会社規模がそこまで大きくない中小企業でした。コスト面だけで言えば各社ほぼ横並びだったのですが、そこで私が最も重視したのが、社長の経営方針と工場の管理能力でした。
[龍ノ平]
初めて取引する海外の中小企業を見極めるのは、非常に高度な判断が求められますよね。
[池田]
例えば、私たちの扱うガスタービン周辺機器は、溶接の技量などに対してシビアな品質・安全基準が要求されます。これまで私たちの仕様書通りのモノを作ったことがないサプライヤに任せるわけですから慎重に評価プロセスを進める必要がありました。
[埴田]
その後どうなったのですか?
[池田]
最終的には無事1社採用することができましたが、その当時採用したサプライヤとは、現在も非常に良好な取引関係が続いています。私にとっても0→1の新規開拓は初めての経験でしたので、今でも深く印象に残っています。
バイヤーの熱意と見極める力が、新しい価値を創出したのですね。埴田さんも、海外現地での対応に関わったことがあるそうですね。
[埴田]
はい。以前、大型冷凍機向けの機器の調達を担当していたとき、中東のお客様向けのプロジェクトで、「私が担当していた機器が原因で冷凍機が動かない」とのクレームが入ったことがあります。
[龍ノ平]
現場で冷凍機が動かないとなると、プラント全体がストップしてしまいますね…。
[埴田]
はい、機器はヨーロッパのサプライヤから購入していたのですが、まずはそのサプライヤとWeb会議でのやり取りから始めました。ただ、それだけではなかなか前に進まないと感じ、当社の設計担当者たちとともに、サプライヤを直接訪問することになりました。先方の技術者たちと顔を突き合わせ議論を重ねる中で、「日本からわざわざ何しに来たんだ?」といった若干アウェイな状況から先方の社長含め協力的な雰囲気へと変わっていったんです。
[池田]
まずは現地に足を運び、サプライヤとの協議を詰めて関係性を構築したわけですね。
[埴田]
サプライヤの工場のあるドイツやチェコ、またプラントのある中東現地を飛び回り、関係者と共に原因究明を行った結果、私が調達した機器本体が問題ではなく、外部環境が原因であることが分かりました。
[龍ノ平]
埴田さんが担当する機器が問題ではなかったのですね。そこからどう着地したのですか?
[埴田]
各関係者と事象を明確に整理できたことで、建設的なソリューションを中東のお客様に提案し、無事にプラントの正常稼働まで繋げることができました。
この一件を経て、サプライヤやお客様との関係も深めることができました。実際にサプライヤや現地を訪問し、顔を合わせて協議することが大事であることを痛感したダイナミックな経験でした。
若手のうちから総合力を磨き、世界を相手に挑戦できる環境がここにある
数々のタフな交渉や課題を乗り越えてこられた皆さんですが、そうした経験を通じて、どのような成長を実感していますか?また、若手が大きな挑戦に向き合う上で、三菱重工グループの調達部門にはどのような環境があると感じますか?
[池田]
調達の仕事は、単にモノを安く値切って買う仕事ではありません。サプライヤの財務基盤を評価するための財務・会計知識、国際取引を有利に進めるための厳密な契約・法務知識、そして社内外の利害関係者を巻き込んでいく推進力が求められます。そういう意味では、若手のうちから「ビジネスに必要となる総合力」を身につけることのできる環境だと確信しています。
[埴田]
本当にそう思います!日々新しい変化が起きる仕事なので、良い意味で飽きることがありません。いつも新しい学びがあり、フットワーク軽くポジティブに場数を踏むことで、幅広い経験を積むことができます。
[龍ノ平]
それに、物事をポジティブに、前に進められる同僚や先輩、上司ばかりなので、日々学ばせてもらえますよね。海外出張でサプライヤとの交渉に臨んだ時も、日本のチームがバックアップしてくれました。若手に大きなプロジェクトを任せる裁量の大きさがありながら、決して一人きりにはさせない、困ったときには必ず手を差し伸べてくれる環境が、三菱重工の調達部門には整っています。
最後に、三菱重工の調達部門に興味を持っている学生の皆さんへ向けて、メッセージをお願いします!
[池田]
調達は単にモノを買うだけでなく、契約や財務、製品知識など幅広い知識を学びながら、ビジネスパーソンとしての総合力を高められる仕事です。三菱重工の調達部には豊富なノウハウがあり、また、先輩は親身になってサポートしてくれます。海外とのやり取りも多く、海外志向の高い方が、伸び伸びと活躍できる環境が整っています。
[龍ノ平]
就職活動中のみなさんの中には、「調達」という仕事が自分にできるだろうかと不安に思う方もいるかもしれません。私自身も特別な経験があったわけではなく、ごく普通の学生でしたが、同僚や先輩方に支えられながら、場数を踏む中で、少しずつ任せて貰える仕事の幅が広がっていきました。世界を相手に、自分の仕事を通じて社会インフラを築いていく感動を、ぜひ私たちと一緒に感じていただけたら嬉しいです!
[埴田]
三菱重工の調達部門には幅広い事業領域と、挑戦の機会が広がっています。皆さんと一緒にものづくりのフィールドで、挑戦できる日を、楽しみにしています!
後編も、バイヤーや企画など、調達部門内の様々な事業領域で活躍する3名の社員が登場します。それぞれの経験やマインドセットにも迫ります。どうぞお楽しみに!