【GTCC事業部・海外営業(アフターサービス)】総力戦で切り拓いた、世界で拡大し続ける三菱重工アフターサービスの真髄
※記載内容は2025年9月時点のものです
2008年に三菱重工へキャリア入社した江﨑 剛。現在は欧州・CIS・アフリカおよび東アジアエリアにおけるGTCC(ガスタービン・コンバインドサイクル)発電所向けのアフターサービス営業を統括しています。入社3年目に挑んだ東アジアの大型プロジェクトを事例として、アフターサービスの全貌と仕事の醍醐味を語ります。
世界、そして韓国市場への本格参入をめざす。新機種アフターサービス契約への挑戦
三菱重工業株式会社(以下:三菱重工)が世界の発電を支えるGTCC(ガスタービン・コンバインドサイクル)事業。その売上の半分を担うアフターサービスは重要な役割を担い、一般にイメージされる「アフターサービス」という言葉をはるかに超える、数十年単位で顧客と伴走する壮大なビジネスです。
このアフターサービスの営業に従事する江﨑は、現在、GTCC事業部で欧州・アフリカ・CIS・東アジア市場のアフターサービス営業を統括する「Key Account Manager」として活躍しています。
江﨑のキャリアの原点には、2010年に担当した東アジアでの大型プロジェクトがあります。
「このプロジェクトは東アジア市場において、新機種である『501GAC形ガスタービン』に対するアフターサービス契約の入札案件。2010年当時、新機種での初の海外展開であり、三菱重工にとっても東アジア市場への本格参入をめざす重要なプロジェクトでした。
大型のガスタービン(501GACクラス)はGTCCx1台で約400MW(約80万世帯)の電力を供給することができますが、東アジアのプロジェクトはこれを4台(約320万世帯分の電力供給)要する超大型入札案件でした。このクラスのガスタービンを製造できるのは世界で数社のみ。そして製造だけでなく、そのメンテナンスやアフターサービスにも高度な技術が必要となります。長期的なアフターサービスを通じて、設備の持続可能な運用を支援し、顧客への安心と信頼の提供が目的となりました」
この長期アフターサービス契約に挑んだ江﨑。プロジェクトへの参画にあたって最初に声がかかった時はキャリア入社3年目でした。
「当時は正直、驚きましたね。前職は商社に勤めていたのですが、三菱重工に入社して3年が経過し、まだ目立った実績もなく、日々の業務を地道にこなしているだけでしたから。ですが、真面目にコツコツ取り組む姿勢を当時の上司が評価してくれ、この大きなチャンスを与えてくれたのだと思います」
情報と技術で切り拓いた1年間の総力戦。契約書は百科事典のような厚さに
2010年当時、東アジアのある国では電力需給が逼迫し、安定的かつ高効率な発電設備の導入が課題となっていました。信頼性の高い発電設備とサービスが急速に求められる中、三菱重工が提案する最新鋭の501GAC形ガスタービンの発電効率は世界トップクラス(2010年当時)を誇り、燃料費の削減、ひいては国のエネルギー問題にも貢献できるポテンシャルを持っていました。
「さらに定期検査周期や主要機器の寿命評価など、アフターサービスの品質は他社に比べ優れていました。加えて『T地点』と呼ばれる自社で保有する実証設備複合サイクル発電所でM501Gクラスの実証検証を行うことができ、これらが三菱重工の強みとなりました」
しかし、輝かしいスペックとは裏腹に、大きな壁に直面します。
「東アジアの電力市場では、アメリカやドイツの巨大な競合他社がマーケットを席巻していました。当時、そのエリアにおける三菱重工のシェアは2位に大きく差をつけられ3位と非常に厳しい立ち位置でした。さらに数字以上に、“知名度が低い”という現実が重くのしかかっていました。
実績を重視する電力業界において、新機種の導入や知名度の低いサプライヤーとの契約はお客さまにとっても『チャレンジングな選択』だったかもしれません」
入札を勝ち抜くためには、価格はもちろんのこと、技術的な優位性の両面で、競合を上回る提案が不可欠でした。江﨑がまず取り組んだのは、徹底的な情報収集です。
「競争入札ですから、競合他社がどのような価格帯、どのような性能で提案してくるのかを予測する必要がありました。現地スタッフや他グローバル拠点とも密に連携し、あらゆる情報をかき集め、戦略を練り上げていきました」
同時に、技術部門との連携も進めました。求められる性能をベンチマークし、「他案件の入札結果より、このままでは勝てないかもしれない」と判断すると、すぐさま設計部門に足を運びます。「もう少し定期検査周期の延伸や性能を改善させるアイデアはありませんか」と、入札に勝つためのゴールを共有し、共に解決策を探る。
その地道な働きかけが技術陣を動かし、より競争力のあるスペックの実現へとつながっていきました。入札の書類準備から契約交渉まで、およそ1年間。まさに三菱重工の総力を挙げた戦いでした。
「最終的に契約書は百科事典のような厚さに。一つひとつの条件を詰め、社内の各部門をまとめ、旗振り役としてプロジェクトを前に進めていく。そのプロセスは非常に骨が折れましたが、同時に大きなやりがいも感じていました」
「信頼関係こそがすべて」──顧客と共に未来を創っていくアフターサービス
1年間の交渉を経て、苦難の末に三菱重工は大型契約を勝ち取ります。それは、江﨑自身のキャリアにとって大きなターニングポイントとなりました。
「この案件が、社会人としての転機だったと断言できます。初めての大きな成功体験ですし、この実績があったからこそ、その後、アジア地域の営業チーム統括やロンドン駐在、Key Account Manager(営業責任者)といった重要な仕事を任せてもらえるようになりました」
社内からの評価も大きく変わりました。しかし、江﨑がこの経験から得た最も大きな学びは、個人の功績以上に、もっと普遍的で本質的なものでした。
「この仕事を通して痛感したのは、『信頼関係の構築がすべて』ということ。お客さまはもちろんですが、社内の関連部門との信頼関係も同じくらい重要です。設計、調達、製造、工事、法務、経理……さまざまな部門と連携して一つの案件をまとめていくので、関係が崩れれば前に進むことはできません。
とくにビッグプロジェクトにおいては関連部門が多岐にわたるため、社内の信頼関係なくして、良い提案ができず、お客さまの信頼は得られないのです。社内関連部門のベクトルを一つに揃えること、これも営業の重要な役割なのだと学びました」
三菱重工のアフターサービスは、契約して終わりではありません。むしろ、そこからがスタート。長い時間の中で真価を発揮していくのです。
「10年、20年、時には30年という長いお付き合いの中で、お客さまの発電所を支え続ける。それが私たちの仕事です。お客さまが困っているときに、決して放っておかない。その場しのぎの対応では、決して良好な関係は築けません。
契約書に書いてあることだけをやるのではなく、真摯に話を聞き、より良い運用方法を一緒に考える。そうした誠実な向き合いを続けることでしか、本当の信頼は得られないのです。これが当社の高品質なサービスであり、三菱重工の最大の強みです」
この信念は、現在のKey Account Managerとしての業務にも深く根付いています。顧客とメーカーという関係だけではなく、共に発電所の未来を創る対等なパートナーとして寄り添い続ける。その姿勢こそが、三菱重工のアフターサービスの神髄なのです。
「次も三菱重工と」──長い時間をかけて顧客の言葉に応え続けた技術と誇り
2010年のプロジェクト成功は、東アジア市場における三菱重工の評価を一変させました。これを機に後続の大型案件をつぎつぎと受注し、市場のシェアは今や世界トップを争うまでに成長したのです。
そして2023年、江﨑に運命的な出来事が訪れます。奇しくも再び東アジア市場の営業責任者を担うことになった江﨑は、14年前の入札に携わった当時のお客さまと再会を果たします。
「お互いに立場も変わり、経験を重ねてからの再会でした。ちょうど前回の長期契約が満了するタイミングだったので、『次の契約をどうしようか』という話をすることになったのです」
この14年間、三菱重工が提供してきたサービスの品質は、顧客によって高く評価されていました。「ぜひ次も三菱重工と」。その言葉を受け、江﨑は燃費向上やCO2削減に貢献する新たな技術を盛り込んだ、次の12~15年にわたる長期契約を提案。2025年、契約は締結に至り、両者は再び固い握手を交わしました。一度築いた信頼が、次の未来へとつながった瞬間でした。
江﨑の視線は、今、世界のエネルギー問題、とくに脱炭素化という大きなテーマに向けられています。駐在したロンドンでは、英国の首脳陣に三菱重工の脱炭素プロジェクトを紹介したり、COPイベント(COP25スペイン/マドリード、COP27エジプト/シャルム・エル・シェイク)で、水素ガスタービンのプレゼンを行ったり。環境負荷低減への貢献を伝えました。
「社会への貢献が目に見える形でできるのが、この仕事の最大のやりがい。世界で数社しか作れないこの技術で、電力という社会インフラを支え、同時にCO2削減という地球規模の課題解決にも貢献できる。これほど意味のある仕事はないと感じています。
グローバルな舞台で活躍したい方、お客さまと深く長い関係を築くことに魅力を感じる方にとって、最高の環境がここにはあります」
異業種からの転職を果たした江﨑は自身の経験を振り返り、こう締めくくります。
「前職は食品の海外営業を行っていましたが、扱うものは違えど、お客さまのニーズを正しく聞き出し、より良い提案をするという本質は同じ。若手やキャリア入社であっても、真摯に取り組めば大きなチャンスを掴める。三菱重工はそういう会社です」。
江﨑の挑戦は、これからも続きます。長い歳月をかけて築いた信頼を礎に、世界の、地球の課題解決へ挑み続けます。