原子力プラントを支える世界有数の制御システム。設計者のやりがいと見据える未来
※記載内容は2025年8月時点のものです
原子力セグメント 電気計装技術部 制御システム設計課で課長を務める田中 佑一と、設計者の野口 颯馬。原子力発電プラントの計測制御システムなどの設計に携わる2人が、システム全体の基本計画から制御盤製作設計まで一気通貫で手がけるやりがいや、働く上で大切にしている価値観について語り合います。
プラントの計測制御システムを設計。上流から下流までを担い、マネジメントも
はじめに、制御システム設計課の業務内容やチーム構成について教えてください。
田中:軽水炉と呼ばれる原子力発電プラント、高速炉、高温ガス炉といった新型炉、および原子燃料サイクルプラントの計測制御システムの設計を担当している部署です。具体的には、プラント内の流量や温度、圧力などを計測し、その数値をもとに弁やポンプ、ファンを動かすという制御設備を設計しています。
プラントを稼働させる機能と、事故が発生した場合にプラントを停止させて安全な状態に保つ機能があり、制御系と安全保護系の両方の設計を私たちが担っているという形です。
課に在籍する約50人がPWR(加圧水型原子炉)、BWR(沸騰水型原子炉)、燃料サイクルの3チームに分かれてそれぞれのお客さまに対応し、私が全体を統括しています。
野口:私はPWRのチームに所属し、設計者として活動しています。業務の流れとしては、設備の設計や更新、改善などをお客さまにご提案することから始まります。受注すると、仕様詳細を定義、お客さまと合意形成し、設備設計にとりかかります。設計インターフェイスのある他の設計部門とも連携し、関係各所と協力しながら進めていますね。
設計で図面を描く作業は協力会社に依頼し、しっかりと検図をして出図します。でき上がった図面をもとに、各担当部門が制御盤などの設備製作や現地施工の計画をします。その後は、設計要求が満たされているかの試験や、現地施工の確認を責任を持って進め、お客さまに引き渡すという流れです。
入社するまでは、設計と言えば図面をひたすら描くイメージを持っていましたが、実際には違いましたね。手を動かす仕事はもちろんありつつ、全体のマネジメント、各所との調整業務なども幅広く行っています。
今の仕事の難しさとおもしろさについてお聞かせください。
野口:たとえば40年前に建設されたような軽水炉の計測制御システムを更新、改善する際に、過去の情報をしっかりと学び、自分の中に落とし込むのが難しいですね。
一方で、「こういう状態だからこの設計をしよう」と自ら考えながら手がけていくプロセスはおもしろいです。上司から「よくここまで考えて設計できたね」と褒められると自己肯定感が高まります。
田中:難しさでありおもしろさでもあるのですが、三菱重工業株式会社(以下、三菱重工)では設計者の業務内容が幅広いです。企画もするほか、お客さまのニーズを把握した上で私たちの技術、ノウハウを活かしてご提案したり、他の設計部門と共に設計インターフェイスを調整したりします。マネジメントのような仕事があり、また、システム全体の基本計画から設備の詳細設計まで任せてもらえるのは、一般的なエンジニアのイメージとは異なると思います。
対外調整や企画の提案では、文章や資料の作成も求められますね。これも難しい部分ではありますが、さまざまなスキルが磨かれますし、得られるやりがいや達成感もより大きなものになります。
設計だけが仕事ではない。お客さまと対話を重ね、共に歩んで築く信頼関係
どのような経緯で三菱重工に入社しましたか?
田中:新卒で精密化学メーカーに入社し、自社の化学プラントの設備設計を担当していました。アウトソーシングや役割分担が浸透する中で私自身、手配業務が中心となり、技術力を高められないもどかしさを感じていました。
そこで目を向けたのが原子力の分野です。原子炉に関しては、官公庁や住民の皆さまに設計根拠などを説明する必要があるため、プラントメーカーは社内で技術を備えており、そんな環境で私も技術を磨きたいと思いました。中でも三菱重工に惹かれたのは、国内の原子力プラントメーカーで唯一、概念設計、基本設計から現地の据付、試運転までを一貫して担っているからです。
野口:学生時代からエネルギー産業に関心があり、地球環境などの問題から今後ますます重要になる分野だと思っていました。エネルギーの中でも、大学で核融合発電について研究していたことから、原子力発電所のプラントメーカーに絞って就職先を探していましたね。
とくに三菱重工は、核融合発電の世界的な研究プロジェクトに参画して成果を残しており、私も将来的には核融合に触れていきたいと、入社を決めました。
入社後の道のりについて教えてください。
田中:2009年の入社後は、アメリカ向けの軽水炉発電プラントの計測制御設備について基本計画や標準設計の認証業務に従事し、途中からは渡米しました。帰国後は震災対応の一環として、テロ対策用の特定重大事故等対処設備に関する計測制御システムの設計に携わり、その後チーム統括も任されました。
2023年から在籍したのは、原子力の規制対応を担うプロジェクト部門です。エンジニアとして、国内発電所の再稼働に向けた新規制基準の適合審査でお客さまをサポートし、今春からは現在の部署に在籍しています。およそ3年ごとに異動していますが、その時々で柔軟に対応し、多くの経験が自分の成長につながっていると感じています。
野口:私は2021年に新卒で入社以来、国内軽水炉発電プラントの計測制御設備保守・更新工事に携わっています。1年目はOJTで先輩に教わりながらお客さまの発電所の設備保守工事に従事しておりました。2年目に別のお客さまに対応し、制御装置のデジタル化更新工事の見積もり業務に従事した後は、再び当初の発電所を担当し、ハードウェア設備のデジタル化更新工事の設計などを進めています。
今後は、プラント全体の制御装置をデジタル化するプロジェクトにも携わっていくことになりそうです。
ご自身の学びや気づきになったことはありますか?
田中:入社当時からの標準設計認証の業務を通して、原子力に携わる人たちは想像以上に品質や安全を第一に考えているのだと学びました。その後、複数の発電所の再稼働に携わった時にも、品質や安全に対する価値観は、お客さまを含め業界全体でつくり上げるものなのだと実感しました。
この経験から、プラント稼働中のお客さまからの問い合わせ対応など、即応を求められるような場面でも、「その対応は本当に安全か」「後世まで残るものとして適切か」を第一に考え、妥協はしないよう肝に銘じています。
野口:入社前は、設計者がお客さまや協力会社と深く関わることはないと想像していましたが、日頃の密なコミュニケーションこそが大切だと学びました。お客さまからお問い合わせがあれば速やかに返事するなどスピード感を重視するほか、電話やテキストだけでなく、直接お会いして話す機会を設けて信頼関係を深めることも意識しています。
今ではプライベートでもお客さまと交流があり、私の結婚式には場の雰囲気を盛り上げる祝電を送ってくださるような関係です。
各分野で活躍するプロフェッショナルたち。互いを認め、助け合う頼もしい集団
田中さんは課長に就任してから、どのようなことに取り組みましたか?
田中:まず、別の部署から戻ってきた立場として、感じた課のよさを伝えました。世界を見渡しても、原子力プラントにおいて、CPU(中央演算処理装置)を用いたデジタル制御設備を多数稼動させてきた私たちの実績はトップレベルであり、世界有数の設計集団であることを再確認してもらったんです。それと同時に、あぐらをかくことなく技術の向上をめざして頑張ろうと呼びかけました。
野口:その話を聞いて、徐々にモチベーションが上がってきたのを覚えています。技術力をより伸ばして自分の強みにしようと、さらに気を引き締めて日々の仕事に臨むようになりました。
田中:そう言ってもらえてよかったです。また、メンバーとの1on1を半期に1度実施するようにしました。困りごとやキャリアプランを話し合う中で、一緒によりよい道を探っています。課は3チームに分かれ、それぞれにお客さまや仕事内容が異なるので、まずは全員と話して状況や考えをつかみたいと思って始めました。メンバーの意外な想いなどがわかったので、今後も継続していきたいですね。
職場の環境や雰囲気はいかがですか?
野口:日頃からメンバー間で技術的な会話が活発に行われていて、相談もしやすい環境です。わからないことがあればまず自分で調べるものの、それでも解決しなければ先輩に尋ねています。先輩がきちんとアドバイスをくれるので、技術面で不安に思う必要はありません。
田中:制御システムの設計とひと口に言っても、概念設計や基本設計から、制御盤の詳細設計、現地の据付設計までを一貫して担い、シーケンス設計やループ設計などのそれぞれの分野にプロフェッショナルがいます。お互いをプロとして認め合いつつ、相手から尋ねられたらしっかりと答えるなど、助け合いもできる頼もしい集団です。
複雑な思考プロセスも楽しんで。前向きな姿勢で解決をめざし、未来を切り拓く
三菱重工に入社してよかったと感じる部分はありますか?
田中:エネルギー産業の中核を担っている実感を得られることではないでしょうか。「自分たちがいなければ、原子力プラントの制御システムは稼働しない」という誇りを胸に、日々の仕事に打ち込むことができています。
また、社内の教育や訓練が充実しています。新卒採用、キャリア採用を問わず、新しく入社する人たちにとってもなじみやすい環境であることもよい点だと思います。
野口:システム全体の基本計画から設備の詳細設計まで一気通貫で携わることで、自分の技術を着実に積み上げて成長できることです。そして、会社の立地のよさも魅力的ですね。メーカーは工場用の広い土地が必要なので、地方に位置していることもあるのですが、三菱重工の場合、原子力部門に在籍していれば神戸で働き続けられます。
どのような人材に入社してほしいと思っていますか?
田中:エンジニアであっても言語化や文章作成などの作業が必要となります。どんな仕事もポジティブに捉え、チャレンジしようとする人がこの会社に向いていると感じています。
野口:設計のロジックを考える際に、複雑な思考プロセスさえも楽しめるような人にぜひ入社していただきたいです。つまずいた時には、私を含むメンバーに相談してもらい、難しい部分も一緒に楽しみながら解決していけるようになればうれしいですね。前向きに取り組める人と手を携え、未来を切り拓いていきたいです。
最後に、ご自身が今後挑戦したいことや思い描いているキャリアイメージをお聞かせください。
野口:今は、何年か先まで続くような工事で主担当として設計をしているので、工事を安全に推進し、完遂することが私の使命です。その後は、新設炉などの設計にも携わることができるように技術力を伸ばしていき、将来的にはマネジメントを担えたらとイメージしています。
先輩たちの背中を追い、ゆくゆくは「この分野なら野口に聞けばわかる」「このお客さまからの信頼を一番得ているのは野口」と認識されるような、社内からもお客さまからも信頼される存在になりたいです。
田中:これからは、脱炭素化に向けた日本の新たな政策方針「第7次エネルギー基本計画」に伴い、新設炉の建設や、新型炉の実用化に向けた試験炉の建設などに挑戦していく予定です。そういったあらゆる事業に対応できるよう、強い組織づくりを進めることを第一の目標に掲げています。
個人的な希望としては、社内で私たちの世代はまだ新設プラントの建設を経験していないので、ぜひ新設案件にも携わってみたいです。そして将来は、ラインの管理者やプロジェクトマネージャーも視野に入れながら、マネジメントで自分の力を発揮していけたらうれしいですね。