【GTCC事業部・プラント設計】環境と技術の未来を切り拓く。プラントエンジニアが語る、世界で羽ばたく9年間の軌跡
※記載内容は2024年11月時点のものです
兵庫県高砂市にある高砂製作所で、新設火力発電所の基本計画を行うプラントエンジニアとして働く篠 直希。2023年にはチーム統括となり、後進の育成、マネジメントに注力しています。国内外の火力発電所新設に携わり、その社会的意義の大きさにやりがいを見出している篠がこの仕事の魅力や必要なスキルについて語ります。
地球環境との調和をめざすGTCCの先駆者。世界のニーズに応える三菱重工の技術者
三菱重工業株式会社(以下:三菱重工)のエナジードメインGTCC事業部で、新設火力発電所の基本計画を担当する篠。現在はプラント計画1チームのチーム統括として、10名ほどのメンバーをまとめています。
「私たちのチームは、GTCC(ガスタービン・コンバインドサイクル発電プラント)と呼ばれる高性能な火力発電所の新設を担当しています。GTCCは、天然ガスを燃料として使用するため環境負荷が低く、地球温暖化対策に貢献できる発電所です。また、心臓部となるガスタービンは他の発電所に比べて設置場所を選ばず、比較的すぐに稼働できるという特徴があります。
私たちが扱うような大型のガスタービンの設備が製造できる企業は、世界的にもごくわずか。その一端を当社が担っているんです」
プラント計画部では発電所建設に向けた基本設計から入札、契約までを担当しています。
「発電所ではガスを燃やしてタービンを回し、その熱で蒸気を作ってさらにタービンを回すといったように、さまざまな機器が動いています。私達の部門はどこにどんな機器を置いて、設備全体がどういうバランスで動くのかを決めます。実際に購入する機器の設計や配管ルート、計器の配置といった細部は、設計部門に引き継ぎます」
プラント計画を担うチームは篠の在籍するプラント計画1チームを含めて2つ。2チームで年間10案件以上を並行して進めています。
「以前は海外案件が7、8割を占めていましたが、最近は国内市場も活況で国内外の案件が半々程度になっています。海外案件は東南アジアや中東の国・地域のお客さまが多いですね。対象となるお客さまも国によってさまざまで、国営の電力会社もあれば、案件開発に特化した日本でいう商社やデベロッパーのような企業もあります」
仕事をする上で最も大切にしているのは、バランス感覚です。
「私たちは技術面を担当しますが、一方的な主張を押し付けるのではなく、お客さまや社内メンバーなどさまざまな立場の人々の視点を考慮し、全体最適となるような判断を心がけています。
国によって考え方も異なりますし、お客さまが『ここは絶対に譲れない』とおっしゃられる状況もあります。その中で最適な提案をしていくのは難しいですが、それもこの仕事のおもしろさの一つです」
チーム統括として、マネジメントの面でも独自の考えを持っています。
「メンバーは皆、わからないところがあればお互いに教え合いながら、自分の案件をしっかりと前に進められる人たちばかりです。この仕事の正解は1つではないので、それぞれの人のキャラクターに合った仕事の進め方があると考えています。
案件が順調に進んでいて大きな問題がない限りは、極力手出し・口出しをしないのが私のマネジメントスタイル。任せることで個々人の成長につながると信じているからです」
自身の引き出しを増やし続ける──世界トップレベルの開発現場から見える未来
理工学部で燃焼・熱流体を学んできた篠は、熱エネルギーへの興味からプラントエンジニアの道を選んだと言います。
「目には見えない高温のガスや蒸気が高速で流れ、それが50万世帯、100万世帯分の電気に変わっていって、世の中のエネルギーを支えていくという仕組みがおもしろいと思い、この業界を選びました。
日本で大型の火力発電所を手掛けられる会社は2、3社のみ。当時三菱重工のガスタービンの世界シェアも今ほど高くはなかったのですが、その頃から世界大手と戦っていく気概が印象的で。世界で活躍できる会社だと思い、入社を決めました」
プラント全体の知識は一生かけても学び終わるものではないと語る篠。どのように業務に慣れていったのでしょうか。
「上司や先輩が次々チャンスを与えてくれたからこそ、今の自分があります。最初は1つの機器の仕様を考えてみる。それができたら別の機器を任される。そんな形で一つひとつ知識を覚えていきました。若手のうちから自分で考えた仕様についてはお客さまの前で説明する機会を与えられるので、カタコトの英語で頑張って説明していました。お客さまは『こんな若手が説明の場に出てくるのか』と驚くこともあったかもしれません(笑)。
また計画部隊のプラントエンジニアの仕事は発電所全体に関わる仕事にしては1案件のスパンが短く、3〜6カ月ほどの案件が次々やってくるんです。だから小さな失敗をしても、『次はこうしよう』とすぐに活かす場がありました。それをこなしていくうちにプラントの全貌が何となくわかるようになっていって、徐々にできることも増えていきました。入社7年目に初めて入札業務のプロジェクトマネージャー務めたときは、『やっと独り立ちできたな』と実感しましたね」
9年のキャリアで最も成長を感じるのは、交渉力の向上です。
「社内外のステークホルダーとコミュニケーションをとることが得意になりました。中でも、自信がついたのは折衝の際の『交渉力』。これはプラントエンジニアとしての引き出しの多さだと思っています。『こういう場面ではどうしたらいい』というのは先輩方から学んだものもあるし、自分で考えたものもある。つまり切れる手札をどれだけたくさん持っているかの勝負だと思っています」
「次世代燃料」への挑戦者たち。三菱重工が見据えるカーボンニュートラルへの道筋
入社から9年、数々のプロジェクトを手掛けてきた篠。その中でもとくに印象深い案件について尋ねると、入社3年目に担当した国内の大型案件を挙げます。
「最も印象に残っているのは、自分が担当した中で最大規模となる数千億円規模のプロジェクトの受注です。大規模案件は供給する機器が多いため社内の関係者も多く、取りまとめる範囲が広くなるため、苦労しました。また社内での注目度も自然と高くなり、『絶対成功させなければ』と覚悟を決めました。
実際に受注が決まった時は正直あまり実感が湧きませんでしたが、上司から『おめでとう』と声をかけられ、ホッとしたと同時にうれしさが込み上げてきましたね。また社内の決算発表の際に数千億円の受注額が計上されているのを見て、『自分たちで成し遂げたんだな』と感動しました。この案件はまだ建設中なので、運転開始したら再び喜びが込み上げるだろうと思います」
篠はプラントエンジニアとしてのやりがいを3つ掲げます。
「1つは、社会的意義のある大規模なプロジェクトに関われることです。お客さまの希望をよく聞き、他社に負けない魅力的な提案を自分の裁量で計画できるのがこの仕事のおもしろさの1つだと思っています。
2つめは、さまざまな国に足を運んで多様な文化を持つ人々に出会えるところ。私自身、およそ9年の間に10カ国ほどを訪れました。中にはもっと多くの国へ出張している同僚もいます。
3つめは当社ならではかもしれませんが、新しい技術に関われることです。当社では、カーボンニュートラル社会実現の手がかりとして、水素やアンモニアといった次世代燃料に対応できるガスタービンの開発を進めています。実際これらの燃料は各国で注目を集めており、将来の水素対応を見据えた設備要求も入り始めているんです。このような先進的な取り組みができる企業は、世界的に見ても多くありません。今後も業界トップクラスを走り抜ける存在でありたいですね」
次世代を育てるチーム統括の覚悟。自身の経験を活かし、若手エンジニアの成長を支える
次々与えられるチャンスをものにして、自身のキャリアを掴み取ってきた篠。今後のキャリアについて、新たな可能性を見据えています。
「プラントってさまざまな製品があって、プロジェクトにもいろいろなフェーズがあるんです。そのため、違うフェーズを経験することによってプラントに対する知識をさらに深めていくというのも、1つのキャリアとしておもしろいと考えています。
また当社は世界各国の拠点に駐在を出しているので、よりお客さまに近いところで暮らし、新しい計画が出てくる前の段階から入り込むような仕事にも興味があります」
ただ、現在はチーム統括として若手の育成に注力する必要性も感じています。
「最近は新しいメンバーが続々と加わっているので、当面はチーム統括として彼らの教育に力を注いでいきたいですね。私自身、今までいろんな先輩方にお世話になったからこそ今の自分がいると思っているので、今度は自分が先輩方のように後輩にチャンスを与え、成長を見守っていきたいです」
プラントエンジニアに必要なスキルについて、篠は意外な見解を示します。
「正直、最初から技術的なバックグラウンドや特別なスキルはいりません。最近も自動車業界や造船業界など、まったく異なる業界からキャリア入社したメンバーがいますが、しっかりとスキルアップしています。英語も別にペラペラでなく、カタコトで喋ればよいです。
では何が必要かというと、ガッツと責任感だと思っています。前述の通り、若手のうちから挑戦する機会が多い分、いざという時に踏ん張れる、本当に責任感を持って仕事できる人が一流になれる素養があります」
また、働く環境についても次のように語ります。
「歴史ある会社なので、働く環境も整っていると感じます。私はチーム統括としてメンバーの勤怠を管理する立場なので、『どんどん休んでね』『早く帰ってね』と声をかけています(笑)。そのため、みんなが少なくとも週に一回は定時で帰っていきますし、遅くなる人でも20時には会社を出ています。最近は社宅制度だけでなく住宅補助制度も登場したり、男性の育休取得率も増えてきたりしているので、どんどん働きやすくなっていますね。
またプラントエンジニアとして海外へ出張することもありますが、計画部隊の出張はだいたい1〜2週間の滞在になるため、家庭への負担も少ないはず。もちろん事前に休暇の申し出があれば、出張の期間を調整したり、別のメンバーに行ってもらったりと調整が効くことも特徴です」
最後に篠が転職を考えている方へメッセージを送ります。
「前述の通り、プラントエンジニアになるために事前に必要なスキルはありません。『地図に残るような仕事がしてみたい』『世界に貢献するような仕事がしたい』という気持ちがあれば、どなたにも可能性があります。ぜひ勇気を出して挑戦してみてほしいですね」