向上心があれば技能はついてくる。技能五輪全国大会で金賞2連覇をめざす選手の想い

※記載内容は2025年6月時点のものです

父の背中を追って、2022年に新卒入社した山越 空斗。高校卒業後すぐに入社し、技能五輪選手として活躍しています。普通科高校出身の山越が技能五輪全国大会で金賞を受賞するに至った経緯や今年の大会にかける想い、三菱重工の充実した教育制度に迫ります。

「満足したら成長は止まる」──技能五輪2連覇をねらう3年目選手の熱い想い

三菱重工業株式会社(以下、三菱重工)のエナジードメインGTCC事業部高砂タービン製造部技能五輪推進グループに所属する山越。技能五輪構造物鉄工職種の3年目選手として、日々訓練に励んでいます。

「グループのメンバーは構造物鉄工職種および電気溶接職種ともにコーチ1人と選手3人(1年目~3年目までの選手が各1人)ずつの8人に加え、グループ長とスタッフ2人という体制で取り組んでいます。選手に選ばれると、3年間は技能五輪のことだけに集中して取り組める恵まれた環境で訓練をしています。

現在の目標は、自身にとってラストシーズンとなる今年の第63回技能五輪全国大会で金賞を受賞して2連覇をすることです。私たち3年目選手2人は昨年の大会で金賞・銀賞と結果を残しているので、その3年目の2人がリードして高砂製作所のメンバー全員がメダルをとれるように、日々訓練を行っています」

構造物鉄工職種は、図面を読み解き構造物を製作する競技です。山越は競技内容をわかりやすく説明します。

「図面に指示された構造物を見て、鋼板や等辺山形鋼、パイプといった材料を加工して作っていきます。『寸法精度』と『外観のきれいさ』が主な評価対象です。チームメンバーとは、課題に対してお互いにアドバイスしながら日々切磋琢磨しています。

ただ、最終的に金メダルを取れるのは1競技につき1人なので、結果を残すためにはやはり最後は1人でやっていかないといけません」

技能五輪選手としての1日は、安全確認から始まります。

「まず、その日の訓練内容に対し怪我など災害につながるリスクはあるかといったリスク危険予知を行い対策します。その後訓練を開始しますが、訓練は今の自分に足りていない課題を洗い出して実施しています。それが克服できれば次の新たな課題を訓練していく日々。

自分で考えて行動しないと技能は上がっていかないので、常に考える力が必要です。でも、やればやるほど自分のレベルが上がっていく楽しさも感じています」

仕事をする上で大切にしている価値観について、山越は真摯な表情で語ります。

「私が大切にしていることは、自分の力を過信しないことです。今の自分に満足してしまうとそれ以上の成長がないと思っているので、常に向上心を忘れずに日々訓練することを心がけています」

父の背中を追って三菱重工へ。幼い頃からの夢を叶え、技能五輪選手にも選出

高校卒業後すぐに三菱重工に入社した山越。幼い頃からの夢だったと語ります。

「実は父も三菱重工に勤めており、幼い頃から会社の話を聞いて育ちました。高砂製作所は、高砂市で最大規模の工場であり、ガスタービンの製造を通じて世界の発電に貢献する会社だということをよく聞いており、いつか自分もここで働きたいと思っていました。

そのため高校選びの際も三菱重工の求人がある学校に進学するなど、この会社に勤めることができるように学生生活を送ってきました。また入社前に企業のことを調べていくうちに技能五輪の存在を知り、『誰かと競う』というところがおもしろそうだと思い、興味を持っていました」

2022年に念願の入社をはたした後、山越は技能訓練生として1年間の訓練を受けることになります。高卒で入社した18人の同期と共に訓練を行い、社会人としての基礎を学びます。

「技能訓練においては、さまざまな職種に対する実技訓練に加え、座学により基礎知識をしっかりと学ぶことができます。また技能面以外にも集団行動など社会人として大切な多くのことを学べる機会がありました。

学生から社会人になり、大きく変化したのは責任の大きさですね。学生時代はもし自分がミスをしてしまっても、周りに大きな迷惑をかけることはあまりありませんでした。しかし社会人になると、自分のミスが周囲の仲間や会社全体に迷惑をかけてしまうこともあるので、より慎重に行動しようという気持ちが強まりました。

また、入社してまず大変だったことは工業科出身の同期との知識的な差でした。私は普通科高校出身だったので、工業科出身の人たちに比べて遅れているなと痛感したんです。しかし、負けず嫌いな性格もあり、『同世代の彼らにできることは自分にもできるはず』と精一杯努力を重ねました」

訓練期間を通じて訓練生の適性や技能の能力などが総合的に判断された結果、技能五輪に挑む選手が選出されます。熱心に努力していた山越は、普通科出身ながら技能五輪の選手に選ばれることになります。

「技能五輪の選手に選ばれた時は、自分の努力が実った感じがしてすごくうれしかったです。これから技能五輪選手として日本一をめざしていこうと思い、とてもワクワクしました」

プレッシャーを力に変えて。2年目で成し遂げた歴史的快挙と充実したサポート

山越が挑戦している技能五輪は、23歳以下の青年技能者が技能の日本一を競う大会です。三菱重工の技能五輪訓練体制は、選手3人に対してコーチ1人という基本体制に加え、技能五輪選手としての経験を持つOBも選手を支援する形で充実した指導体制を整えています。 

「コーチは私たち技能五輪選手を全体的サポートしてくれています。コーチ自身も技能五輪選手経験者ということもあり、技能面でもさまざまな知識を教えてくれて、相談もしやすい頼りになる存在です。

そのほか歴代のOBもサポートしてくれるので、三菱重工の長い歴史の中で培われた知識が次々に後輩へと受け継がれていっています」

1年目の全国大会では銀賞に輝いた山越。続く2年目は、三菱重工でもまだ前例のない「2年目での金メダル獲得」という高い目標に向かって日々訓練に励む中で、他者と圧倒的な差をつけるための戦略を練りました。

「金賞を取るためには、何か1つ他者と圧倒的な差をつけることが大事だと考えていました。そこで私が着目したのが『外観のきれいさ』により評価される出来栄えの点数です。

去年はその出来栄えの点数で圧倒的な差をつけようと、日々外観をよりきれいに仕上げることができるように訓練していました」

その努力は、工具の手入れや身の回りの整理整頓にまで及びます。

「出来栄えの点数を上げるために何が必要かをコーチに相談したところ、日頃から細部にまで意識をすることを指摘されました。自分に『ここが気になる』という気づきがなければ出来栄えを磨き上げることはできません。

そのため作業そのものだけでなく、身の回りの整理整頓や工具の手入れなど、競技に関わるあらゆる範囲を整えて自身の感性を研ぎ澄ませていきました」

前例のないことに挑戦する中で大きなプレッシャーも感じていたと言います。

「『自分が金賞を取る!』という意識が強かったので、プレッシャーはかなり感じていました。しかし、自分が今までやってきたことを信じて取り組めば、金賞が取れるという気持ちで全国大会に挑みました。

そして迎えた全国大会では、周囲と圧倒的な差をつけて金賞を受賞できたんです。受賞した時は目標をはたせてうれしかったのもありますが、『本当に取れてよかった』というホッとした気持ちもありました」

金賞連覇で新たな歴史を作る。三菱重工初の快挙に挑むラストシーズンと今後について

三菱重工での技能五輪選手としての活動も今年でラストシーズンを迎える山越。今年の抱負について尋ねると、大きな目標を掲げます。

「まずは金賞を連覇したいです。これが叶えば、三菱重工で初めての技能五輪金賞連覇になるので、昨年よりさらに気を引き締めています。

加えて後輩の2年目、1年目選手にもメダルをとってもらえるよう、アドバイスしています。高砂製作所で金賞・銀賞・銅賞を総なめした前例がないので、それを実現したいと考えているんです」

山越は、三菱重工には技能五輪に対する充実した支援体制があると語ります。

「規模の大きい会社なので他社との交流も広く、時には合同訓練を行うこともあります。合同訓練を通じて他社で同じ目標に向かって頑張っている同世代の仲間と出会えることも、大きな刺激になりますね。

そのほかにも選手が3年間集中して競技に取り組める環境やコーチの体制、OB支援など、訓練環境が整っています。競技に必要な工具や備品の調達にも協力的で、より良い道具の提案もしてくれます」

山越自身は今年で技能五輪選手としての活動に終止符を打ちますが、その先の未来についても明確なビジョンを持っています。

「現場配属後は、技能五輪で培ってきた経験を活かし、現場の中核的な人材になることをめざしています。とくに幼い頃からの目標であったガスタービンの製造に携われるので、その分野で中心となって活躍していきたいです」

進路は誰しも迷うもの。高校生の就職について、山越が自身の経験を踏まえたメッセージを送ります。

「一般的には大学に行った後に就職という進路を考えておられる方が多いかもしれません。しかし、高卒入社には他の人よりいち早く社会人になって、社会人としての生き方や考え方を早く学べるメリットがあると考えています。進路に迷っている方には、ぜひこういう道もあるということを知ってほしいですね」

三菱重工で輝ける人材像について、山越は“人間性の重要さ”を強調します。

「私は普通科高校出身で三菱重工に入社しましたが、今では工業科出身者と同様に活躍できています。大切なのは入社してからの努力と向上心です。向上心を持って取り組んでいれば、技能は後からついてくると思っています。

そのため、もっとも重要なのは“人間性”です。仕事ではお客さまや同僚など、人と人とのコミュニケーションが非常に重要になります。笑顔で接することを心がけ、他人の価値観を理解して柔軟に対応できる方こそ、三菱重工で活躍できると思います」

山越 空斗 KAITO YAMAKOSHI

山越 空斗 KAITO YAMAKOSHI

エナジードメイン GTCC事業部 高砂タービン製造部 技能五輪推進グループ

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