【GTCC事業部・ガスタービン設計・サービスエンジニア】大型ガスタービン世界初、水素30%混焼運転に成功。エナジートランジションに挑む技術者の誇りと情熱

※記載内容は2025年1月時点のものです

三菱重工業株式会社(以下:三菱重工)は2023年、大型ガスタービンでの水素燃料30%混焼運転に成功※1。この画期的な成果は、カーボンニュートラル社会実現に向けた大きな一歩となりました。GTCC事業部で燃焼器の開発設計を担当する渡邊と、発電所運用と検証試験を担当する横山が、世界初の挑戦に込めた想いを語ります。

世界のエネルギー需要に応え、持続可能な社会に向けて。水素燃料30%混焼運転を実現

水素燃料30%混焼運転成功時の中央制御室

所属する部署と仕事内容を教えてください。

渡邊:私が所属するGTCC事業部のガスタービン技術部はガスタービンの開発を要素技術から検証試験まで一貫して行う部署です。ガスタービンは主に圧縮機、燃焼器、タービンから構成されます。

GTCC(ガスタービン・コンバインド・サイクル)1台で約100万世帯の電力をまかなうことができますが、私はGTCCの心臓部となる大型ガスタービンの燃焼器の設計・開発業務と検証試験を担当しています。低エミッション、起動性、多様な燃料への対応といった様々なお客様のニーズに対応する燃焼器を開発しており、カーボンニュートラル実現に向けて水素焚き燃焼器開発にも取り組んでいます。

横山:私の所属する高砂サービス技術部は我々が世界中に納めたGTCC関連のアフターサービス全般を取り扱っており、時代や世界情勢によって変わるお客様の様々なニーズに対し、企画や技術提案~改造工事及びトレーニングまで行っている部門となります。私はその中で高砂製作所内にある発電所運用とお客様のニーズに応える為の発電所を利用した技術検証試験の取りまとめをしています。

当社のGTCC (ガスタービン・コンバインド・サイクル)の発電効率は世界最高水準の64%を誇り、近年、電力需要が世界的に増加していることに伴い、GTCC発電プラントの受注も非常に好調です。

発電所は20〜30年にわたって運転するため、受注が伸びるとアフターサービスも増加していきます。特にアフターサービスはGTCC事業部の売上のうち約半分を占める重要な事業となっています。

2023年に実施された社内の実証試験では、最新鋭の大型ガスタービンで水素燃料30%※2混焼運転に世界で初めて成功しました。当時のおふたりの役割を教えてください。

渡邊:既存の燃焼器に水素を混焼しても安定的に運転できるように改良を加え、実証試験を通じて安定運用できることを検証することが主な役割でした。

横山:私は設備運転の責任者として、試験の環境整備や全体の取りまとめを行いました。この実証試験は社内外から大きな注目を集めている重要なプロジェクトで、そのうえ水素供給量や試験期間が限られていたため、大きなプレッシャーがありました。

プロジェクトは関係者を含むと数百人規模となり、小さなヒューマンエラーが重大な失敗につながるリスクがありましたが、設計チームとの綿密な準備と尽力のおかげで、無事に成功できました。すべてが終わったときは、本当に安堵しましたね。

渡邊:設備全体を運転するのは横山さんたちですが、試験中の燃焼器の運転は、設計担当の私たちが行いました。水素は一般に燃焼速度が速く燃えやすいことで、今までガスタービンで広く使われてきた天然ガスと燃焼特性が大きく異なります。

事前に要素試験を重ね、安定した燃焼が可能な各種運転パラメータの調整範囲を確立したうえで、通常以上に監視体制を強化し、安全性を確認しながら試験を進めました。無事に成功したときは、ほっとしたのを覚えています。

※1 大型ガスタービンでの水素燃料30%混焼運転実証について、詳しくは以下のプレスリリースをご覧ください
https://www.mhi.com/jp/news/23113001.html

※2 水素混合比率は体積比で表示しています

既存のGTCCで高効率と水素混焼を実現。脱炭素社会に向けた確かな一歩に

水素燃料投入前ミーティング(水素燃料30%混焼実証運転当日)

プロジェクトが始まった背景は、どのようなものだったのでしょうか?

渡邊:地球温暖化や気候変動が深刻化する一方で、電力需要は伸び続けています。環境問題に配慮しながら電力を安定的に供給することが求められる中、注目されているのが、発電時にCO₂を排出しない水素を使い、高効率で発電できるガスタービンです。

そこで当社では、水素混焼にも対応できるように、改良設計、要素試験、性能評価を繰り返し、少しずつ改良しながら、技術を蓄積してきました。

横山:これまで段階的に水素の投入比率を高めてきましたが、水素燃料30%は前例がなく世界初の試みとなること、また30%を超えて安定的に燃焼運転をする為には、燃焼器の新たな開発が必要になることから、まずは30%を目標に掲げました。

これが可能になれば水素を供給する設備を設置するだけで、既存のガスタービンをそのまま活用できます。すぐに商用化の見通しが立つことも、プロジェクトの原動力になりました。

2023年の実証試験ではどのような課題と成果がありましたか?

渡邊:実際の運用では、常に十分な水素量を確保できるとは限りません。そのため、ベースとなる天然ガスで高効率を維持しつつ、天然ガスに水素を混ぜ合わせる水素混焼の仕組みを確立する必要がありました。

たとえば、ガスタービンの効率向上と環境負荷低減を両立するためには、最新鋭のJAC形ガスタービンではタービン入口温度を1650℃という超高温に保たなくてはなりません。そのため、超耐熱合金を使用した高温部品や耐熱コーティング、高度な冷却技術が採用されています。

今回の実証試験で、現行の燃焼器でも水素混焼に対応可能だと実証されました。実証試験に成功したガスタービンや燃焼器と同じタイプのものは既に世界各地の商用プラントにも導入されています。水素混焼に対応する燃焼器を備え、水素燃料が供給されれば、水素発電を速やかに実用化できることが確認できたわけです。

横山:天然ガスに水素を混ぜて、最終的に天然ガス70%、水素30%の割合にする必要がありますが、燃焼器内部の状況が急激に変化しないよう、供給量を適切に制御しながら水素を段階的に混ぜて運転しなくてはなりません。

圧力や温度などさまざまなパラメータを適切に制御するのは非常に難しい作業です。そのため、事前に想定されるトラブルを洗い出し、設計メンバーと協議を重ねました。

とはいえ、実際の運転では想定外の事態が発生することもあります。その場で臨機応変に対応することも、大きな使命のひとつでした。

社内外に広がる反響と未来への期待。実証試験の成果が示した新たな可能性

当時を思い出し語り合う二人(左側:渡邊)、(右側:横山)

実証試験の成功に対して、社内外からどのような反響がありましたか?

渡邊:社内、とくにガスタービンの設計部門は大いに盛り上がりましたね。実証試験の成功は本格的な受注活動につながるため、受注を担当する部門にとっても大きな出来事だったと思います。

また、普段はほとんど仕事の話をしない両親からも、「ニュースを見たよ。水素燃料30%混焼運転に成功したんだってね」と連絡がありました。業界だけでなく、社会全体にも広く知られるようなプロジェクトに関わることができ、設計者として大きなやりがいを感じています。

横山:高砂製作所では、敷地内に水素の製造から発電までの技術を一貫して検証できる「高砂水素パーク」を整備しています。同パークは水素を「つくる」「貯める」「使う」という三本柱のバリューチェーンの確立をめざしていて、今回の実証試験はこのうち「使う」に該当しますが、実証試験の成功を機に、それぞれのプロセスで培った技術とノウハウが、ようやくかたちになりつつあると感じています。

また、水素エコシステムの構築を推進する重要な拠点ということもあり、実証試験後は国内外からの見学者が一気に増えました。とくに水素関連の設備に注目が集まっていて、多い日には1日10組ほどの見学者が訪れることも。こうして社会的な関心を集めるのは非常に喜ばしいことだと思っています。

今回のプロジェクトを通じてどんな気づきがありましたか?

渡邊:燃焼速度が速く、燃えやすい水素を混焼しながら天然ガスと同じ安定的な運転を可能とするため、改良設計、要素試験を幾度となく繰り返し技術を蓄積してきました。地道な開発の上に大きな成功があることを強く実感しました。

また、新しいことばかりで、学ぶことが本当に多かったですね。水素供給設備の整備から、実際にガスタービンで燃やすプロセスまで、多くの部署と連携しながら進めることができました。この経験は大きな財産になったと思っています。

横山:私は設計部門の技術力にあらためて深く感銘を受けましたね。ゼロからというわけではないにしても、新しい技術を生み出し、それを実際にかたちにしていくのは簡単なことではありませんから。このプロジェクトを通じて、社内の技術者たちのレベルの高さをあらためて認識しました。

前例のない挑戦で社会課題の解決に貢献。水素エコシステムの実現に向けて

今後の展望を教えてください。

渡邊:2025年には、アメリカのインターマウンテン・パワー・プラントで水素燃料30%混焼による商用機の試験運転が予定されており、現地で試運転を担当します。まずはこれを成功させ、大型ガスタービン商用機初となる水素30%混焼の運用を確立したいですね。

その次の目標として、水素燃料50%混焼の実現がありますが、そのためには燃焼器の開発が必要になります。設計ツールやシミュレーション技術が進んでも、実際に試験してみないとわからないのが燃焼器の難しさ。少ない設計変更で効率良く目標に近づける開発と、大きく構造を変えて水素専焼を目指す開発の二本柱で設計を進めています。

横山:一般的に水素の供給体制や流通ネットワークが確立するのは2030年代と言われており、将来的には水素燃料100%での専焼運転をめざしています。現在はそこに向けた準備が着々と進行中です。

仕事の魅力をどんなところに感じていますか?

渡邊:世界で大型ガスタービンを自社開発できるメーカーは数社しかなく、国内では当社だけ。前例のない開発に携わり、自ら設計するものづくりで環境問題の解決に貢献できることにやりがいを感じています。

横山:インフラ整備に貢献できる点も魅力です。以前、インドネシアの発電プロジェクトを手がけた際、首都圏で急増する電力需要に対応した経験がありました。多くの人々の安定した暮らしを支えられていることに、大きな誇りを感じますね。

入社を検討している方にメッセージをいただけますか?

渡邊:当社には年次に関係なく教え合う文化があり、中途採用で入社したメンバーも多く活躍しています。水素燃料50%混焼、そして水素燃料100%専焼を実現するには、常識にとらわれない新たな視点が欠かせません。これまで培った経験や独自のアイデアを活かし、新たな価値を一緒に生み出していきましょう。

また、開発では、壁にぶつかってもあきらめない粘り強さが重要です。試験がうまくいかなかったとしても、その結果を次に活かし、前進し続けられる人にぜひ挑戦してほしいですね。

横山:水素社会の実現に向けて、まだ誰も成し遂げていないことに携われる仕事です。「あれは自分がつくったんだ」と胸を張ることができます。ものづくりの醍醐味をともに味わいましょう。

プロジェクト成功の鍵となるのはチームワークです。自分の意見を持ち、積極的に発言しながらコミュニケーションを図れる方なら、きっと活躍できると思います。

渡邊 真宏 MASAHIRO WATANABE

渡邊 真宏 MASAHIRO WATANABE

横山 暁政 AKIMASA YOKOYAMA

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