データセンターの運用に欠かせない、非常用発電セットの導入。「逆輸入」という初めての試みによる、新たな市場の開拓が始まる。

※記事内容は取材当時のものです

Mitsubishi Heavy Industries PROJECT STORY
産業用エンジン

INTRODUCTION

 近年、DXの進展やAI/IoTの普及、クラウドコンピューティングの拡大などを背景に、世界のデータトラフィック量は急激に増大している。これら多様なコンピューティングサービスの実現に欠かせないのが、大規模ストレージや高速データ伝送装置を有し、膨大なデータを保管・運用するデータセンターだ。現在、海外をメインにデータセンターを運営する事業者が、日本でデータセンターを新設するプロジェクトが各所で進展している。このデータセンターに不可欠なのが、停電や災害での稼働停止を回避する、BCP(事業継続計画)対策としての非常用「発電セット」である。今回、三菱電工グループの三菱重工エンジン&ターボチャージャ(株)(以下、MHIET)は、データセンター事業者向けに「発電セット」の導入を成し遂げた。

海外生産の「ディーゼル発電セット」の導入。
「逆輸入」に湧き上がった懸念の声をいかに払拭するか。

 今回のプロジェクトで導入された「発電セット」とは、エンジンを中核にその他必要なコンポーネントを備えた発電装置だ。非常用電源としての「発電セット」は、データセンターというミッションクリティカルなシステムの安定稼働を担保し、電力供給を担うことでデジタル社会の進展に貢献するものである。MHIETが取り扱うエンジンは、ディーゼルエンジンとガスエンジンに大別されるが、今回、非常用発電セットに採用されたのはディーゼルエンジンで、プロジェクトの重要なポイントとなる。このプロジェクトが始動したのは、2021年夏。「発電セット」に長く関わってきた技術者である浦野昭秀が、別プロジェクトで付き合っていた大手建設会社から、本プロジェクトをMHIETで対応できないかと打診を受けたのが、そもそもの始まりだった。後にリーダーとしてプロジェクトを牽引することになる浦野は、率直に「面白い、挑戦したい」と感じ、プロジェクトへの取り組みを開始したが、当初から問題が噴出した。

 「これまで国内ローカルデータセンター事業者は、単機容量が大きいガスタービンを主に取り扱っていました。その流れで、当初はガスタービンの発電セットと見当をつけていました。しかし海外のデータセンター事業者を調査していく中で判明したのが、ディーゼルエンジンによる発電セットが主流だということ。日本国内に進出してくる外資のデータセンター事業者は、海外での実績をそのまま国内に持ってくるケースがほとんどであり、データセンター向けの発電セットはディーゼルエンジンで提供することが求められました。
当社は国内ディーゼルエンジンの開発・生産はもちろんのこと、競合の海外エンジンメーカーと闘うため、シンガポールやベトナムを拠点にグローバル標準の発電セットも生産。したがって、ニーズに応えるために、私たちが選択したのは前例のない『逆輸入』という方法でした」

 浦野が選択した「逆輸入」は、社内および国内販社から「海外製の発電セットは品質の面から絶対に日本では受け入れらない」という懸念が示された。海外製の品質は高く維持されており、実際、東南アジアや中東各国の顧客からの評価も高い。しかし国内販売会社の多くは、日本製へのこだわりがあった。また、英文主体のドキュメントなどによるコミュニケーション不全への懸念もあったという。こうした声に対応することが浦野の最初の仕事となった。
 「批判の声を払拭するのに、相当の時間を要しました。自分がやりたいという強い思いと信念を持って、反対者・批判者に丁寧に理解・納得を求めていきました。もちろん自分の思いだけでなく、『逆輸入』が成功すれば新しいビジネスフィールドが拓け、MHIETの新たな成長発展の力になることなど、プロジェクトの意義を伝えていきました。やがて、自分の考えに賛同してくれる仲間が増え、その輪は広がっていったのです」

日本とシンガポール間で強力な連携・協働を実践し、
信頼関係を構築。

 「逆輸入」を担ったのは、グローバルで仕様が統一されている発電セットを生産・販売する拠点であり、主に東南アジア・中東エリアに向けて発電セットを供給しているMitsubishi Heavy Industries Engine System Asia Pte. Ltd. (MHIES-A) (シンガポール)である。そして、MHIES-Aの営業およびマーケティングを取りまとめている井田雄旭が、プロジェクトに携わることになった。『逆輸入』と言っても、海外生産品をそのまま日本に持ってくるわけではなく、要望に応えるカスタマイズが求められた。
 「お客様であるデータセンター事業会社はグローバルに事業を展開する企業。今回のプロジェクトを必ず成就させ、このビジネスを他の国にも拡大させたいという、ワクワクした気持ちでプロジェクトに臨みました。私自身は、日本サイドがお客様と協議する商務条件に対して、現地サイドで対応できること、できないことを整理・調整する役割と、決められた仕様・納期に則り製品を準備する役割を担いました。お客様の立ち合い試験や監査などにも対応、お客様の要求仕様や指摘事項に対する改善策を立案し実行するなど、お客様のニーズに的確に対応することで日本サイドを支援。受注の一助になることができたと思っています」

発電セット「MGS-R」が「MGS-JP」構想へ展開。
逆輸入の成功に向けて、蓄積した技術力でお客様ニーズに応える。

 今回導入した発電セットは、「MGS(Mitsubishi Generator Series)」と呼ばれているもので、MHIETは2022年、21年ぶりに刷新した「MGS-R」を市場に投入した。「MGS-R」はターボチャージャの仕様変更や燃料系統、排気系の改善により高速始動を実現、発売当初からデータセンターなど高い信頼性が要求される市場を見据えていた。しかしそれは東南アジア・中東エリアをターゲットにしており、日本市場への逆輸入は想定外のことだった。「MGS-R」は今回、「MGS-JP(Japan)」と名を変え、「MGS-JP」構想と社内で命名された。この「MGS」の設計を担ってきたのが、発電システム設計課の平井琢哉である。
 「『MGS』は海外製品であり、逆輸入する初の案件であることから、絶対に成功させるとの意気込みで臨みました。私の役割は日本サイドでのお客様の設計窓口。逆輸入するにあたり、懸念されたのは業務の混乱でした。初めてゆえ、プロジェクトの進捗に関係者の齟齬が生まれる可能性もありました。私は関係各社が混乱をきたさないように業務区分と業務フローを作成、関係部門の活動状況を確認できる体制を構築。技術面では設計の取りまとめ役を担いました。中量産品でカタログ商品の『MGS』ですが、お客様の要望に合わせて仕様調整を実施、実機評価も交えてお客様の要望に応えていきました」

受注獲得のポイントは
スピード感を持ったやり取りとアフターサービス体制。
密なコミュニケーションで着地点を見出す。

 日本サイドでフロントに立ち、お客様との折衝・交渉を担ったのが、それまで国内向け発電セット事業を担当していた営業部の浜辺祐一郎だった。浜辺にとって「MGS-JP」構想のメンバーにアサインされたことは新たな挑戦であり、「国内データセンター案件において競合他社が先行している」という自覚から、営業担当として必ず受注を勝ち取りたいという強い思いがあった。プロジェクトにおいて営業担当はプロデューサー的役割を担うことから、そのカバーする範囲は、受注に向けた製品提案、価格・契約交渉から、受注後の自社所掌品の手配、案件スケジュール・コスト管理、MHIETグループ内での仕様・納期調整まで、幅広い。

 「受注に向けては、製品の提案、価格および契約交渉がメインになります。これらを国内販売拠点の三菱重工エンジンシステム(MHIES)と共同で対応しました。競合数社の中でいかにMHIETの優位性を訴求するかがポイントですが、性能においては競合他社いずれも高いものを有しており、製品の明確な差別化は難しいものがありました。その状況下で、重要な要素になったのは交渉時の素早いやり取りと国内アフターサービス体制。いずれも当社が特に海外の競合他社よりも優位になれる点であり、お客様が過去の案件で困っていたことでした。きめ細かなコミュニケーションで、お客様に当社の姿勢を評価いただくことができました。最も印象に残っているのは契約交渉です。お客様の意向は尊重しながらも、当社が譲れない点は主張する必要があり、両社が納得する着地点を目指し、スピード感を意識して対面やWebで交渉を続けました。その過程で、お客様と信頼関係が生まれた手応えがありました。契約内容の合意後、お客様の対応スピードは格段に上がり、スムーズに交渉が進みました。リスペクトの気持ちを持ち、正直な姿勢で取り組むことで、お客様の信頼が得られることを改めて実感しました」

世界市場にインパクトを与えた「発電セット」の受注成就。
「やりたいことをやり遂げる」という信念と想いが原動力に。

 約1年の交渉を経て、2022年夏に案件受注が決定、その後発電セット12台を納入、引き渡しが完了した。厳しい競合の中で、MHIETが受注したその勝因はどこにあったのか、そして「MGS-JP」構想と名付けられたプロジェクトは、今後どのような展開を見せていくのか。プロジェクトのリーダーであった浦野は、地道なコミュニケーションの積み重ねが、受注に結びついた要因の一つだったと言う。
 「コミュニケーションと一口に言っても、さまざまな形があると思います。私たちメンバーが心がけたのは、きめ細かさであり、丁寧に先方の要望を聞いて、細かなすり合わせを行い、仕様要求にも対応していきました。かゆいところに手が届くようなコミュニケーションの実践が、お客様の信頼を獲得していったと思います。加えて、競合する海外メーカとは異なる、日本国内メーカーならでは質の高いサービスの強み、リードタイム、コストなどの優位性を訴求、それらを高く評価いただいたことで受注に至ったと感じています」

 営業担当の浜辺は、発電セットの現地試運転完了後、現地で初めて実物を見た時が、「プロジェクトを通じて一番嬉しい瞬間だった」と言う。
「プロジェクトがお客様のご納得いただく形で成功したことで、その後、新しい引合の受領や新設案件の受注にも繋がっており、お客様との関係性が深まっています。今後、複数のMHIETグループ内拠点・部署のメンバーと協力して、『MGS-JP』構想を次のステージに進めていきたい。逆輸入による『MGS-JP』を広く拡大普及させていきたいと考えています」
 嬉しい悲鳴を上げているのが、シンガポールの井田だ。商談が爆発的に増えているという。今回のプロジェクト成功のインパクトは、国内のみならず海外にも波及している。

 「今回のプロジェクトと同じお客様から香港でも引き合いをもらうことができました。さらに世界各地で同様の引き合いをもらえることになり、ビジネスチャンスを発展させることができました。また今回のプロジェクトに参画したローカルメンバーも大きな成功体験を得ることができ、チームメンバーの実力向上にも寄与したプロジェクトでした」
 プロジェクトをきっかけに、MHIETに新しい風が吹き始めていることは間違いない。かつて海外生産品に留まっていた「MGS」は、「MGS-JP」での展開によって国内市場へのインパクトのみならず、グローバルスタンダードへの進化を開始している。技術者の平井もそれを実感する一人だ。
 「国内の一つのプロジェクトで、他国市場にも影響を与えるようなプロジェクトに参加できたことは誇りに思います。今後も全世界への拡販に繋げ、MHIETのファンを増やしていきたいと思っています。そのためにも技術者として、カーボンニュートラル等、社会課題解決の要請に応える技術開発にも取り組んでいきたいと考えています」

プロジェクトの主担当だけでなく、多様な人材が活躍しているのも三菱重工の強み。
浦野 昭秀 AKIHIDE URANO

浦野 昭秀 AKIHIDE URANO

三菱重工エンジン&ターボチャージャ(株)(MHIET) エンジン・エナジー事業部 エナジー技術部 / 1991年入社 / 工学部 電子工学科卒

井田 雄旭 YUKI IDA

井田 雄旭 YUKI IDA

Mitsubishi Heavy Industries Engine System Asia Pte. Ltd. (MHIES-A) Sales&Marketing(シンガポール) / 2008年入社 / 理工学部 電気学科卒

平井 琢哉 TAKUYA HIRAI

平井 琢哉 TAKUYA HIRAI

三菱重工エンジン&ターボチャージャ(株)(MHIET) エンジン・エナジー事業部 エナジー技術部 発電システム設計課 / 1997年入社 / 工学部 機械工学科卒

浜辺 祐一郎 YUICHIRO HAMABE

浜辺 祐一郎 YUICHIRO HAMABE

三菱重工エンジン&ターボチャージャ(株)(MHIET) エンジン・エナジー事業部 営業部 エナジー営業課 / 2014年入社 / 農学部 農業・資源経済学専攻修了

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