トリプルハイブリッド発電システム「EBLOX(イブロックス)」


OUTLINE

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「EBLOX(イブロックス)」は、エンジン発電設備と、脱炭素に貢献する太陽光などの再生可能エネルギー発電、および蓄電池を組み合わせて、電力の最適配分かつ安定制御が出来るトリプルハイブリッド発電システムです。

3種の電源ミックスにより、環境に優しく、電力の最適な安定供給を実現

太陽光などの再生可能エネルギーの不安定な電力を、エンジン発電と蓄電池の3種の電源ミックスにより安定化できるのが「EBLOX」の強みで、高効率・低コストの電力供給を、環境に優しく多用途な分散型電源で追求できるものです。
3種の発電設備を「EBLOX(イブロックス)」、制御システムを「COORDY(コーディー)」と名づけ、多様な電力供給ニーズに応えるソリューションを提案します。

トリプルハイブリッド自立給電システム「EBLOX(イブロックス)」

電力供給の困難な地域の課題も解決する
画期的な発電システム

天候などに左右されやすい自然エネルギー(変動性再生可能エネルギー)由来電力の変動を蓄電池で吸収し平準化させるとともに、天候変化や昼夜の時間帯変化に、発電量が左右されないディーゼルエンジンやガスエンジンによる発電がバックアップするため、大規模な発電所でつくり出された電力を供給することが困難な離島や島嶼国、アフリカなどの地域にも適合した分散型電源です。再生可能エネルギーの付加価値を高めて可能性を広げ、低炭素社会づくりに貢献する画期的な発電システムとして注目されています。

今回のプロジェクトは、「EBLOX」のデモプラントを、協業するトルコ共和国有数の財閥チャルックホールディングのグループ会社チャルックデニム社の工場内に建設するためのものです。


開発担当者の声

三菱重工エンジン&ターボチャージャ(以下MHIET)を中心に
MHIグループの総合力で完成した「EBLOX(イブロックス)」

太陽光発電は今世の中で最も安価な電源の一つといわれており、もちろんCO2は出ません。しかし、太陽が出ていなければ発電はできませんので、非常に不安定です。それを補う形で電力を蓄える電池を用いていたのですが、コストが掛かり、スペースも取るという問題がありました。そこでコストを下げ、省スペース化を図るためにエンジンとのハイブリッドを検討するに至りました。そして、これまで培った技術を基にエンジン、太陽光、蓄電池という3種類を適切に組み合わせ、電力の安定供給が図れ、CO2の削減も出来、コストも抑えられるという理想のシステムが開発されました。非常に難易度の高い開発ではありましたが、MHIグループはドループ制御や異機種原動機間の連携技術など高い制御技術を有していましたので、スムースに進めることが出来ました。

「EBLOX」のアフリカ市場導入へ向けて、
トルコ共和国チャルックホールディングとの協業が実現

自立給電も可能な「EBLOX」の特徴が生きる地域として、送配電網の行き届いていない非電化地域が浮かび上がり、その一つがアフリカでした。そこで以前からお付き合いのあった、アフリカ地域市場に強いトルコ共和国有数の財閥チャルックホールディングに提案をし、プレゼンテーションを行いました。チャルックホールディングは、エネルギー関連のインフラ事業をはじめ、様々な事業を幅広く展開しており、アフリカ地域での太陽光発電設備の普及提案にも力を注いでいたため、「EBLOX」に興味を示し、両社の協業が実現しました。
そして、「EBLOX」のデモプラントをチャルックホールディングのグループ会社チャルックデニム社の工場内に建設するためのプロジェクトが進められました。

様々な問題や困難を乗り越えて完成した、
「EBLOX」デモプラント

様々な問題や困難を乗り越えて完成した、「EBLOX」デモプラントチャルックデニム社の工場内に「EBLOX」のデモプラントを建設するという今回のプロジェクトの中で、私が担当したのが基本設計と試運転作業の技術支援でした。
MHIETにとって、「EBLOX」を社外パートナーと共同で設計・建設するプロジェクトは初めての試みであり、細かい役割分担や仕様調整のやり取りに試行錯誤しました。また、パートナーのチャルック社は「EBLOX」について全く知見がないところからのスタートであったため、当社からの技術支援もかなり必要でした。加えて、現地試運転とコロナ禍がちょうど重なってしまったため、日本から派遣できる社員の数にも限りがあり、私は日本からのリモート支援となりました。リモート支援という取り組み自体もあまり経験がなく、6時間の時差で睡眠不足にも悩まされ、その点も苦労しました。モノづくりは現場で現物を見て、現状を知り進めていくものですが、リモート支援では現地でトラブルが起こったときの対応が非常に難しかったです。
そのため、役割分担や仕様の調整はリモートでのオンラインミーティングにおいて、資料・図書のやり取りを頻繁に行うことで解決しました。エンジニアリングの基本ではありますがコミュニケーションをしっかり取ること、そして、やり取りをした内容をすべてドキュメントに残すことはかなり有効でした。
初めてづくしのプロジェクトで、トラブルも多く、反省点を挙げれば切りがない状態でしたが、最終的な試運転を無事終えることができ、デモプラントを完成することができました。実は私は引渡しの瞬間には立ち会うことができなかったのですが、パートナーのチャルック社の皆さんにご満足いただけたと聞き、社内でも「良い仕事だった、よく頑張った」という声を掛けてもらえた時には大きな喜びとともにようやく安心することができました。

「EBLOX」を電力不足に悩む世界中の地域に届けて、
住民に幸せをもたらし、社会の発展に貢献したい

世界には電力会社の送配電網が行き届いていないために、自立発電を求める地域が多数あります。例えばアフリカなど、今まで電力の供給が滞っていたがゆえに、発展できなかった地域もあります。そこにトリプルハイブリッド発電システム「EBLOX」を導入すれば、生活水準の向上、地域産業の発展など社会の進歩につながるかもしれません。「EBLOX」の導入自体は小さな一歩かもしれませんが、それをきっかけとしてその後に大きな進歩につながる可能性があります。
私自身、今回のプロジェクトは、三菱重工の社是である「社業を通じて社会の進歩に貢献する」を強く意識するきっかけとなりました。「EBLOX」を世に広めれば、非電化地域や離島などにクリーンで低コストのエネルギーをお届けすることができる。それは我々三菱重工社員の使命であると感じました。
「EBLOX」は、実は製品という一つの完成形があるわけではなく、最適なエネルギーソリューションを提供するために、お客様のニーズに合わせていろいろな組み合わせを御提案出来ます。「EBLOX」を通じて、クリーンなエネルギーを全世界に提供していければと願っています。

現在、「EBLOX」のデモプラントは、MHIET相模原工場内と、協業するトルコ共和国チャルックホールディングのグループ会社であるチャルックデニム社の工場内に設置されており、電力供給が課題となっている地域や環境問題に関心を持たれている多くの関係者の方が見学に訪れています。

MHIET相模原工場(神奈川県相模原市)
MHIET相模原工場(神奈川県相模原市)
チャルックデニム社(トルコ マラティヤ)
チャルックデニム社(トルコ マラティヤ)