【範師座談会】 「考えるものづくり集団」であり続けるために ―3人の範師が語る「人づくり」
三菱重工が誇る現場における技能の最高峰であり、人格においても範となる存在である「範師」。本座談会では、原子力、民間機、ガスタービンという異なる現場で活躍する三名の範師を神戸の「技能研修センター」に招き、三菱重工が培ってきた「ものづくりの力」をいかに次世代へ繋いでいくかを語り合いました。
座談会で交わされたのは、技能伝承を越えて、すべての職場に共通する「人づくり」についてでした。範師たちの経験と実績に裏付けられた、自ら考えてものをつくる集団を築くためのヒントをお届けします。
「好き」から始まるものづくり愛
司会: 本日はお集まりいただきありがとうございます。今日は範師のみなさんのリアルな声を聞けることを非常に楽しみにしています。早速ですが、まずは自己紹介からお願いできますか。
中安:原子力工作部の中安です。1985年入社で、今年60歳になります。現在は主に品質管理の側面から、トラブルの再発防止教育や品質パトロール、現場モニタリングなどを担当しています。また、日本溶接協会溶接技術競技会や全日本ボイラー溶接士コンクールなどの催しの取りまとめもしており、技能五輪のサポートも行っています。入社以来、一貫してSG(蒸気発生器)の製作に取り組んできました。SGは非常に厳しい品質基準が求められますので、細心の注意を払いながら、質の高い製品づくりに貢献してきたと自負しております。2015年に原子力工作部内各課の編成替えがあり、それまで製品別だった組織が、溶接、組立、機械加工といった機能別の組織に変わりました。その結果、原子力部門内で異なる製品をつくっている人と連携することとなり、今でも勉強になることが多いです。
清水: 民間機セグメントの工作部・大江部品製造課に所属しています清水です。今は閉鎖になってしまった名古屋機器製作所で、押出成形機の製造が最初の仕事でした。そこから大江地区へ移り、その後20年あまり民間機製造に携わってきました。実はその経歴の途中では、おおよそ28年前になりますが本日の座談会でご一緒している三好さんと『基幹要員研修』の第一期生として一緒に研修を受講したことを思い出しました。同研修は『現場強化の一環として監督者の育成を目的として実施された』と記憶しておりますが、同じ研修を受けた三好さんとこういった形で再開できたことは大変うれしく思っています。現在は、現場に送り出す前の新入社員や派遣社員の育成に携わり、主に教育資料やカリキュラムを作成しています。その前の3年間は、名古屋地区の「源誠館」で訓練生の指導員を務めていました。そこでは訓練生よりもむしろ指導員の面倒を見ることが多かったですね。現場に入る前の新人や、これから現場の中核として活躍していく作業者の教育に携われたのは、本当によかったと思っています。
三好: ブレード・燃焼器製造部燃焼器課の三好です。ガスタービンの燃焼器の溶接・組立を行っている課に所属しています。現在は「技能統括」という高砂製作所独自の役職で、課内の現場モラル、工場の安全管理、品質管理、技能伝承、工程管理等に関する指導・助言役をやっています。範師に任命される際に、当時の伊藤副所長から「製造現場のモラルを守ってほしい。そして現場と所長室とのつながりを取り持つ役割を担ってほしい」と言われました。以来、毎日1万2千歩ほど工場を歩き回り、現場で何が起きているのかを自分の目で見て、作業員に声をかけたり、各課と情報共有したりしています。私は、1988年に入社してから今までガスタービンの燃焼器の溶接・組立一筋でやってきました。21歳の時に、ちょうどガスタービンの海外展開が大きく進み、インドやアメリカなどの海外で働く機会を多くいただきました。今までの社会人人生を振り返ると、そこでの交流が自分を大きく変えたと感じます。
司会: 今日は技能を極めた範師の方々が一同に集まりましたので、みなさんの「ものづくり」に対する情熱の源にも触れてみたいのですが、何か仕事以外の趣味はお持ちですか。
中安: 昔からバイクをいじるのが好きで、72年式のホンダのダックスを譲り受けてレストアしています。部品をかき集めて、YouTubeを見て、「ここはこんなふうにバラすのか」「ここのトルクはいくつで締めるのか」などと勉強しながら組み立てている時はすごく楽しいですね。
清水: 私は55歳でサーファーデビューしまして、それと同時に楽譜も読めないのにヴァイオリンも始めました。ちょっと前までは山の中を走るレースで100kmを走ることもありました。止まってしまうと死んでしまうタイプなので、とにかくやってみたいことにはどんどん手を出しています。三好:実はサバゲーが趣味で、2年前まではスナイパーからアタッカーまでかなりやっていました。今は昔から好きだったラジコンを復活しています。1/8のエンジンカーで時速80キロぐらい出る物で、毎月1回サーキットでのシリーズ戦に出て楽しんでいます。
司会:みなさん、すごくアクティブですね。常に新しいものに手を出して勉強したり、好奇心旺盛だったり、行動力があったり。範師たちの「ものづくり愛」の原点を見た気がします。
こだわりを受け止め、気づきを促す傾聴の姿勢
司会:ここからは、神戸、高砂、名古屋、それぞれの現場で技能者育成に携わっている御三方に、人を育てる上で大切にされていることを伺っていきたいと思います。
その導入として、以前私が目にした出来事について意見を聞かせてください。ロケット部品の表面処理工程で、仕様上は問題ないわずかなシミに対し、ある作業員が「こんなシミはものづくりの恥だ」と時間をかけてピカピカに仕上げたことがありました。しかしその部品は最終的に内部に組み込まれ、誰の目にも触れません。これを見て、「そこまでやるのは無駄だ」という意見と、「いや、それこそがものづくりのこだわりだ」という意見で現場が真っ二つに割れたのです。みなさんならこの作業員にどのように声をかけますか。
中安:要求仕様を超える品質、いわゆる「過剰品質」をどこまで許容するのかという問題ですね。つくり手としては、こだわりを持ってよいものをつくりたいという気持ちは当然あります。しかし、ビジネスとして見れば、それはコスト増につながる。このバランスを取ることが、最も難しいかもしれません。
三好:溶接の世界でも同じです。「いいものをつくりたい」という思いは、皆が持っているものです。
清水:ただ、そのこだわりを持つ若手に対して、頭ごなしに否定するのは最悪です。お互いに否定し合うだけで何も生まれません。まずは「わかった、言っていることは間違いではない」と一度受け止める。その上で、「しかし、今のやり方では会社として利益が出ない」という事実も伝える。そして、「では、どうすれば余計な時間をかけずに、そのシミをなくせるだろうか?」「そもそもシミができない方法はないだろうか?」と投げかけ、一緒に考えていく。
三好:モチベーションを下げずに伝えてあげる。そのためにも、まずは意見を傾聴することが大事ですね。「やってよかったな、やり切れたな」と感じられるようにしたい。「昨日はどうだった?」と話して、「じゃあ今日はここまで行ってみようか」と一歩引き上げてあげる。作業者から「おっさんの言うこともたまに当たるときあるな」と思ってもらえたら、向こうから話しかけてくれる回数も増える。いろんな人に触れ合って、外の考えを知って、知識を増やして、さらに上を目指す。そういう機会を与えていきたいですね。
中安:自分の価値観を押し付けるのではなく、対話を通じてすり合わせていくということですね。たとえ間違っていると思えるアプローチでも、まずはその考え方のよい点を認める。「その方向性での考えはよい。ただ、別の観点から見ると課題がある」というように、本人が自ら気づけるように導いてあげることが大切です。
「考えてつくる」力を育てる
司会:お話を伺っていると、教える側が自分の基準や考えを押し付けるのではなく、教わる側がいかに自分で気づき、考えることを重視されていると感じました。
清水:多くの指導員が、訓練生が何も知らないからと言って、手取り足取り教えてあげようとします。でも、それは違うと思っています。できないからこそ、自分で身をもって学んでほしい。今はマニュアルが整備され、動画や写真で学ぶ方法も増えています。時間を効率的に使えるのはよいのですが、一方で想像する力がどんどん失われるのではないかと心配しています。だから指導員には、「教えすぎないでください、手を出しすぎないでください、自分たちでやらせて、できなかったら自分たちで考えさせてください」と、ずっと伝えてきました。
中安:私たちの頃は「習うより慣れよ」で、失敗して学べる土壌がありました。今は専門性も高くなり、計画を立て、無駄なく学んでいくことが重視されています。とはいえ、マニュアルを読んで覚え、動画を見てその通りやるだけでは応用が効かなくなってしまう。
清水:一番ショックだったのは、「昨日YouTubeを見て勉強してきました」と言われた時ですね。じゃあ結果はどうだったかというと、できちゃうんですよ。ただ、おっしゃるとおりで応用が効かない。トラブルが起きた時に自分で考えて達成していないから、原因がわからずに諦めてしまう。あるいはまたYouTubeやAIに聞くとなってしまう。
三菱重工では「ものづくり」という言葉がよく出るけれど、本当は「物事を考えてつくれる」集団になってほしいんです。「ものづくり」の前に、まずは物事を考えて想像する力を持つこと。そのためにも、作業者たちが考えられる環境や機会をどんどんつくってやるべきです。
三好:いろいろな対策を打ってきたおかげで、現場の安全性についても確実に向上しているんですよ。ただ、今の若い人は整備された状況に慣れているから、逆に本当に危ない状況というのを自分で気づくことができなくなっているのではないかと懸念しています。そこで、4月から私の所属する課ではAdvanceの頭文字A を取り入れた『A-RKY強化活動』や『A-TSQパトロール』といった「その先、一歩踏み込んだ」各種参加型の新たな安全活動を展開しています。
中安:もちろんやり方を伝えるためのマニュアルはあったほうがいい。ですが、そこに書いてある本質を理解する能力が本来必要なのです。マニュアルを当たり前とせず、なぜそうなっているのか、そこにある理由を考える力を育てることがますます大切になると思います。
伝承とは、上下左右で学び合う風土づくり
三好:現在ガスタービンは、高砂の能力だけでは受注に対して製造しきれないので、アメリカや中国を始めとした海外拠点の製造能力を拡大しています。高砂がマザー工場となり、高砂が持つ生産技術・製造技術を海外に展開していく。また、海外拠点の良いやり方を高砂に取り入れていく。それには当然マニュアル化も必要になっていく。ですが、それ以上に大切なのは、人同士の「横のつながり」なんですよ。私は入社以来、海外で仕事をする経験が多かったのですが、結婚して家を買ったばかりのタイミングで「アメリカで工場の立ち上げをしてこい」と言われ、2年くらい行ったことがありました。日本のやり方が通じないアメリカでの交流を通して、ある時ガスタービン燃焼器のつくり方をガラリと変えるアイデアに巡りあったのです。それを日本に持ち帰って相談すると、多くの年配の方々に「若造が何言うとんねん。今の作り方でええんや」と反対されました。ですが当時の上司が理解を示してくれて、一緒に考えようと言ってくれたのです。二人でいろんな改善のアイデアを出して、その結果、燃焼器溶組完了品の寸法精度が向上し、次工程の機械加工からの返却率を0%にすることに成功しました。今までの社会人人生を振り返っても、一番やり切れたと思える経験でした。
司会:まさに、旧来の常識との戦いですね。三好:今は高砂でも長崎や呉などから人員の受け入れが進んで、新しい顔ぶれが加わり新たなチームができてきました。すると、いろんな情報が入ってきて、新たな視点によって気づかされることが多くなりました。「ものづくり集団」というのは自分たちの技術や技能を極めるだけじゃなくて、「横のつながり」から集団の力を増していくものだと感じています。いつの時代も大事なのはコミュニケーション。受け入れる側の雰囲気がものすごく大事です。
清水:以前はよそ者に厳しい鎖国的な風土もあったと思います。外から来て意見を言うと、「余計なことするんじゃねえ」と一蹴されてしまうような。それで自分が作業長になった時に、「生え抜きだろうが、中途入社だろうが、正社員だろうが、派遣社員だろうが関係ない。やる気があって、やるべきことをやって、自分で考えて物事を進めてくれることを評価するからね」ということを伝えました。
三好:教えて、教えられてという関係性が大事ですよね。昔は先輩が後輩に教えてくれるというのが当たり前でしたが、今は先輩がITやAIについて若い人から教わることも多い。
中安:若い人を見ていると、我々の時よりもコミュニケーションが上手ですよね。他の企業や事務所の方々とすぐに仲良くなります。神戸にも長崎や高砂、呉などからたくさん応援に来てくれることがあるのですが、若者同士でお互いリスペクトし合って、「そのやり方ええなあ」「うちはこんなやり方で」などと、盛んに情報交換しています。我々の世代だったらちょっと斜に構えて、「どっちが上やねん」みたいな感じになりがちでした。
司会:「伝承」というと上から下に伝わるイメージがありますが、上下左右、互いに学び合うことが本来の「伝承」の形なのですね。
人を育てる「指導者」をいかに育てるか
司会:技能系の教育はすごくしっかりされている印象で、現場の最前線で活躍している人材を指導員に選んで、現場から訓練センターに派遣し、訓練生を育成しています。ただ現場にとっては、そういう人材を出すのは正直きついですよね。現場からの抵抗はないですか。
中安:指導員に選ばれる人は優秀で、その人をさらに成長させようという目的があります。私が送り出した指導員たちも、現場に帰ってきた時には、一皮も二皮も剥けて立派に成長していました。
三好:指導員を経験することで、予算管理から年間計画まで、プランを立てて実行していくことを学びます。現場で身につけてきたスキルと、訓練生を育ててきたという育成経験が身についているので、後輩への指導も的確です。
清水:その瞬間だけを見れば、活躍している人材を出せば仕事が忙しくなるのは目に見えていますが、もっと先を見据えて出すわけです。5年後、10年後を見据えて、指導員が現場に戻って副作業長、作業長、係長になった時には、現場にとってもっとプラスになる。監督者に対してよく伝えるのは、リーダー格となったメンバーは、ある時期からあえて外へ放り出せということです。リーダーがいなくなることによって、次のリーダーが育つ。同じリーダーが居続けてしまうと次のリーダーは育たない。そして、ちゃんと外に送り出す時も、「こういうことを学んできてほしい」と目的意識を持たせて送り出すようにしていました。
中安:意識付けすることは本当に大事ですよね。「あなたにこういうことを期待しています。だからこういうことをしっかり学んでくださいね」というのは、普段の教育の時でも同じです。
清水:私は今回名古屋地区の技能訓練センターに行くことになって、範師が教育の最前線にいることの重要性を実感しました。三菱重工で一番の技能を持った範師が、高校を出たばかりの新入社員に対して、まさに伝承者として教えてくれるというのはすごいことです。
三好:教える側の指導員にとっても、誰か相談できる人が必要ですよね。範師が指導員にとってのよい相談役になれるのではないかと思います。
司会:皆さんが作業者だった時は、どのような教育を受けてこられたのですか。また、教える側の変化をどう感じていますか。
清水:自分が入ったばかりの頃は、しょっちゅう作業長がふらっと現場にやって来て声をかけてくれました。順調なのか、困っているのかを常に見てくれていて、安心感があり、育てられている実感がありました。技術も、メンタルも、考える力も育ててくれたと感じています。作業長イコール親父みたいな存在でしたね。
三好:歩いていると、匂いでわかるというんです。不思議と困っているところに足が向く。自分の上の人たちは、失敗した時や困った時に「なぜわかるんだろう」というタイミングで来てくれた。横目だけで、「こいつ機嫌が悪いな」「家で何かあったのかな」ということまでわかる人がいた。自分も年齢を重ねて、現場の子たちの調子の善し悪しがなんとなくわかるようになってきました。
中安:私も作業長に育ててもらった忘れられない思い出があります。ある時作業長に、「中安、ちょっと来いや」と呼ばれて。「いやもう、絶対怒られるんや」と思ったら、「お前の仕事、ええやないか。この調子でやってくれ」と褒めてくれたんです。自分の仕事をきちんと見て、褒めてくれたことが何より嬉しかった。
清水:今は管理すべきコストや納期、数字を追う時間が長くなり、作業長が現場を回るよりもパソコンの前に座っていなければならない時間が増えている気がしますね。今や作業長の主な仕事は、「育成」よりも「管理」になっているように感じます。
三好:デジタル化によって、数値化・見える化が進んだおかげで、情報量とスピードは上がったけれども、反面、作業長が差配できる余地が限られてしまい、現場を回りたくても回れないという本音がありますよね。
AI時代における「ものづくり」の未来
司会:デジタル化といえば、最近ではAIが全部教えてくれると言われますよね。さらに次の時代は「フィジカルAI」によって、人間の代わりにロボットがものをつくるようになろうとしています。一方で、海外では身体的な技能を身につける職にシフトする動きもあるらしいです。こうした「ものづくり」の変化について、技能を極めたみなさんがどのように感じているのかを伺ってみたいです。
清水:人が介入する余地は間違いなく減るでしょうね。ただ、機械やAIが進歩したとしても、当面はまだ自分たちの勘と経験が必要な部分が絶対に残る。あとは、AIがどこまで人間の感情を読み取れるようになるのかにもよりますが、人が求めるものとイコールになることはないと思います。人が求めているものに敏感に反応できるのは、やはり人でしかないかなと。
中安:我々の現場作業では、人が判断してつくらなくちゃいけない高品質なものが多いので、すぐに置き換わることはないと思っています。ですが、今後の技術の発展スピードを考えると、AIやロボットを使いこなしていくことは求められるでしょうね。
三好:我々も2030年までのロードマップを作成して、人がやるべきことと、ロボットに任せることを切り分けて自動化していく動きを進めていますが、最終的にすべてが自動化されるのはまだ先だと見ています。人間がロボットを制御して、教えて、学習させていく間は、両者の「共存」ですね。どちらかなんて極端なことにはならないでしょう。やっぱり最後のコアとなるところは人間がやらなあかん、というのは残るんじゃないでしょうか。
司会:つくり方は機械やAIで効率化できますが、「何をしたいから、こういうものをつくりたい」という想いや発想は、これからも人が担っていくのでしょう。本日みなさんのお話を伺いながら、「技能」という言葉は「ものをつくる」ことだけを指すのではなく、ものの見方や考え方も含んでおり、定義が広がりました。
範師から、次世代へのメッセージ
司会:それでは最後に、未来の「ものづくり」を担う次世代に向けてメッセージをお願いできますか。
三好:私から伝えたいのは、ぜひ外を見てきてほしいということです。外に行くチャンスは全員平等に回ってくるわけではないけれど、その機会が来た時は、ぜひ「わかりました」と言って飛び込んでほしい。外で出会った仲間は、いつか「あの時助けてもらえてよかった」と言える「横のつながり」になっていきます。
出す側としても、外へ出すのは期待しているからだよという理由を添えて、送り出してあげたいです。
清水:訓練生や現場の若い人には、「引き出し」をたくさんつくってほしい。自分からいろんな仕事にチャレンジしないと引き出しの数は増えていかない。直近の仕事には使えないものでも、引き出しにしまっておけばどこかのタイミングで引っ張り出せる。失敗も成功も引き出しの一つになっていく。成功ばかりの人よりも、失敗してきた人が後で強くなる。現場の人にはそれを学んでほしいと思います。
私たち範師も、下から憧れられる存在であり続けないといけないなと思います。最近では「作業長にはなりたくない」なんて意見もよく聞きます。範師なんて名前も出てこない。もっと現場を回って、作業者に声をかけて、自分自身が幸せそうに働いて、若い人に「範師になりたい」と思ってもらえるような姿を見せていかないと。
中安:まずは安全最優先で、一緒に働く仲間たちが危険な目に合わないように、必死で考えて取り組んでほしいです。そして、私たち三菱重工は社会の基盤を支えるような製品をつくっています。それを誇りに感じてほしい。加えて、自分の成長を楽しんでほしい。それが将来の「ものづくり集団」をつくると信じています。我々は成長の邪魔をしないように、自分自身で考える環境や機会をつくってあげることに力を注いでいきたい。
私はキャリアデザインシートに「時代が変わっても、技能・技術が維持され、向上する仕組みをつくる」と書きました。残りの社会人生活で、それに則った活動をしていきたいと思います。
司会:本日は範師のみなさまをお招きし、唯一無二の技能をいかに引き継ぐかをお伺いしましたが、話の中心となったのは「いかに人を育てるか」ということでした。自分で考えてつくる力を育てること、リーダーをあえて外に出すこと、上下左右のつながりで集団の力を高めること。これらは決して技能者だけのものではなく、すべての職場が向き合うべき、人と組織づくりの本質だと感じました。本日は素晴らしいお話をありがとうございました。