変化する社会課題の解決に挑む──新人エンジニアが描く未来の航路
※記載内容は2025年11月時点のものです
2025年春に三菱造船株式会社(以下、三菱造船)に入社し、マリンエンジニアリングセンター 環境技術部 開発グループで働く塚原 佳穂。船舶に搭載する「船上CO2回収システム」の開発に携わる塚原が、開発グループ長 加納 裕真と入社理由や仕事への向き合い方、そして思い描く未来について語ります。
海に育まれた学生時代。「未知」への関心から始めた研究と、芽生えたチャレンジ精神
──まずは、塚原さんの学生時代のお話から聞かせてください。大学で海洋資源系の学部を選んだのはなぜですか?
塚原:私は長崎出身で、海を見て育ってきました。大学では海に関することを学びたいと思うようになり、中でも興味を持ったのが海底資源でした。これまで手つかずだったものについて研究し、価値を見いだそうとする考え方がおもしろいと感じましたね。
海底資源科学科では、海底鉱物資源に加え、海洋の酸性化で生物が住めなくなっているという、海洋環境の変化にまつわる課題について研究していました。海水中のCO2の量が大きく影響していて、pH、全炭酸濃度、全アルカリ度、二酸化炭素分圧という炭酸系成分の4つのパラメーターを測ることで海洋がどんな状態なのかを調べるという、その実測手法の開発を進めていました。
──当時から自分なりに意識し、今に至るまで大切にしているような価値観はありますか?
塚原:「どんなことにも挑戦してみる」ということですね。学生時代、海洋調査船に乗る体験セミナーがあり、最初は「私には乗船は無理かな」とも思いましたが、「まずはチャレンジしてみよう」と思いきって応募したところ選考に合格し、結果として今の仕事を選ぶきっかけとなる貴重な体験ができました。
そして今では、挑戦と同時に、時間やコストを意識して動くという計画性も大切にしています。最近、時間内で成果を出すよう求められた案件について、作業の終盤になってきちんとした成果物になっていないと気づくことがあったんです。
追加で時間をいただいて完成させることができましたが、最初に綿密に計画を立てていればこうはならなかったはずで、挑戦と計画性のバランスをとる重要性を痛感しました。
加納:私も昔を思い出して懐かしくなりますね。特に共感するのは、目標に向かって夢中になって取り組み、やり遂げるということです。私の場合、大学院では研究室に寝泊まりするぐらい、時間を忘れて研究に没頭していました。
その一方で、当時と今では三菱造船に入社する目的が変わってきていると思いますね。私は機械系の学部出身でものづくりに関心があり、造船に携わりたくて入社しました。しかしその後、会社の事業変革もあって、塚原さんのように脱炭素の分野に関わりたい人たちも入社するようになり、時代の変化を感じます。
会社が今、求めているのは「自分で課題を見つけ、解決に向けて動ける人材」
──就職活動で候補に入れていた業界や、就職活動の軸について教えてください。
塚原:私たちの生活を支える、なくてはならない製品を作りたいという思いから、メーカーに絞って就職活動をしていました。大切にしていたのは、その会社の製品やサービスを見て「おもしろそう」と心が躍るかどうかです。
また、幼い頃から親の実家に帰省する時にはフェリーに乗り、そのたびにワクワクしていたので、船関連の会社にも心惹かれました。
加納:船に対してワクワクする気持ち、わかります。私も祖父母の家に向かう際、船を利用していたので、自然と親しみを持つようになりました。
塚原:最終的に当社に決めたのは、地元長崎にある会社ということと、環境課題にアプローチする仕事ができそうだということです。大きな会社で業務の幅が広く、自分のやりたいことができるのではないかという期待もありました。
加納:私は塚原さんの採用面接に携わったのですが、そこで話してくれた海洋開発課題解決セミナーでのエピソードで、塚原さんの能動的なところは印象に残っています。
グループワークで行き詰まった時、メンバー一人ひとりと話し合い、それぞれが置かれている状況や想いを聞き取って全体に共有し、プロジェクトを前進させたという話です。
三菱造船の環境システム製品事業は新しい事業であり、この開発には自分で課題を見つけ、解決に向けて動ける人材が求められています。まさに塚原さんの姿勢は、会社が求める人物像にぴったりでした。
塚原:なんだか照れますね。ありがとうございます。うれしい限りです。
──入社して会社や仕事に対して感じたギャップはありましたか?
塚原:設計という仕事について、最初は個人で黙々と行うイメージを持っていました。でも実際に働いてみて、この仕事は一人でできるものではなく、活発に議論しながらチームで進めていくものだと気づきました。
加納:新入社員には育成担当者がつきますが、開発グループでは育成担当者に限定せず、メンバーのバックグラウンドからそれぞれの専門分野をいかした育成ができるようにアサインメントを考えています。
塚原:育成担当者の先輩はもちろん、悩んだときには他の先輩にも聞きやすい雰囲気で相談しやすい環境が整っているのも、いい意味でのギャップでした。入社からの2カ月間は先輩方が定期的に業務内容を説明する場を設けてくれたほか、私たちが下関の工場に足を運んで現場の仕事を学ぶ機会もありました。
入社から間もない時期でも、自分の取り組みが形に。チームに貢献できる喜びを実感
──日々の仕事の中で、特に嬉しかった出来事を教えてもらえますか?
塚原:先輩が社外向けに説明するにあたって、そのもとになるデータの作成を任されたことがありました。ある製品を使うことで船の環境性能がどれくらい向上するかという「環境性評価」と、運用コストを含めた投資効果を示す「経済性評価」に関するデータです。
初めての作業でてこずる部分もありましたが、周りの先輩にアドバイスをもらいながら一つひとつクリアしていき、最終的に完成させることができました。入社から間もない時期でも自分の取り組みが形になり、チームに貢献できたということはとてもうれしかったですね。
──新入社員でもそれだけの業務を任されるのですね。一方で、苦労していることはありますか?
塚原:工学に関する知識がなく、大変だと感じています。現在、会社が提供しているeラーニングやWeb研修を受講し、インプットを続けているところです。日頃、先輩たちとの会話でわからない用語が出てきたら、その都度自分で調べたり、先輩に尋ねたりして知識を蓄えていくようにしています。
また、今後は英語の資料に触れる仕事もあると思うので、今のうちからしっかり身につけておこうと英語の勉強もしています。
加納:塚原さんは入社してまだ数カ月ですが、非常によくやってくれていると感じています。自分で課題を認識し、解決に向かって取り組む姿は期待通りです。工学の知識がないと話していましたが、気にする必要はありません。
今、私たちがやろうとしているのはあくまで「変化する社会課題の解決に挑むこと」であり、必要な知識は働く中で身につけていけばよいのではないでしょうか。
──働く環境や周囲との関係性、ワークライフバランスについてはどう感じていますか?
塚原:職場の風通しがよく、新入社員も自分の意見を遠慮なく言えますし、困ったことがあれば先輩にいつでも相談できる環境です。有給休暇も気兼ねなく取得できるので、オンとオフのメリハリをつけやすいと感じています。
加納:私も同じ印象ですね。本社のメンバーと長崎のメンバーで創意工夫し 、一体感を持って仕事ができていると思います。開発という仕事は本当に難しいんですよね。どのように市場を切り拓くか、製品をどう売るか、そのためにどう開発するかなど、考えることがたくさんあります。
だからこそメンバーには「私たちはすごい仕事をしているんだよ」と折に触れて伝え、仕事に誇りを持てるような雰囲気づくりを心がけています。
慣習や前例に縛られず、新しいものを生み出したい。入社1年目の決意と見据える道
──塚原さんは入社して数カ月がたちましたが、当初期待していたことは、かなえられていますか?
塚原:入社前から環境技術部でCO2回収の業務に携わることをめざしていて、今、それを実現できています。働き方に関しても、入社前は「残業が多いのでは」と想像していましたが、周囲の目を気にして無理に会社に残るような雰囲気ではなく、自ら業務負荷をコントロールしながら勤務しています。そういう意味では、期待を上回る環境で働くことができています。
加納:そう聞いて安心しました。マネジメントする立場から少しお話をさせてもらうと、新入社員の育成やサポートで大切にしていることがあります。まずは、新入社員がさまざまな人と接点を持ち、誰に対しても質問、相談できるような仕組みや雰囲気をつくることです。そして、本人がどのような経験を積めば成長できるのか、という視点も大事にしています。
なので、開発部門でキャリアをスタートさせた人も、そこにとどまることなくさまざまな部門を経験し、知識やスキルを得て、また開発部門に戻って力を発揮するような流れになればうれしいですね。
塚原:今携わっている分野以外にも広く目を向け、多種多様な仕事にチャレンジしていきたいと思っています。関心があるものの一つが、下関で行われている海洋調査船関連の仕事です。調査船の船内には実にさまざまな装置があって、位置を保ったり振動を防いだりするために工夫が施されていることがとても興味深いんです。
──将来的にどのような存在になりたいとイメージしていますか?
塚原:視野を広く持ち、柔軟な発想ができるようなエンジニアになりたいと思っています。私の尊敬する先輩はチャレンジ精神が旺盛で、船に限らずあらゆる業界の情報をキャッチアップし、それをメンバーに共有してチーム全体で高みをめざそうとしています。
その姿勢を見習って、私も慣習や前例に縛られることなく物事を多角的に捉え、新しいものを生み出せるようなエンジニアになりたい。そんなふうに、未来を思い描いています。