核融合エネルギー: ITERへの取組み
[ 原子力発電 ]

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核融合エネルギーについて

国際プロジェクトITER計画への取組み

ITER計画は1986年、当時の米ソ首脳(レーガン-ゴルバチョフ)会談の共同声明に基づき、1989年から米国、旧ソ連(ロシア)、欧州、日本が参加し概念設計活動が始まりました。1992年より工学的設計活動に移行し、2005年にITER建設サイトがフランスのサン・ポール・レデュランスに決まるまで、詳細設計、製作性検証試験等が行われました。
2007年に国際機関であるITER機構が発足し、日本、欧州、ロシア、米国、中国、韓国、インドの7極が分担して機器、設備を製作しています。

当社は日本が調達分担する機器、設備の大半に関わり、ITER計画の完遂に貢献しております。

国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構と共に進めています。

日本が調達する主な機器と設備

日本が調達する主な機器と設備

関連リンク


トロイダル磁場コイル

トロイダル磁場コイルへの取組み

トロイダル磁場(Toroidal Field、以下TF)コイルは、トカマク型装置では、プラズマを閉じ込める磁場を発生するものです。ITERでは、18個のTFコイルが真空容器を取り囲むように設置されます。TFコイル単体の大きさは、高さ16.5m、幅9m、重量300トン超となる世界最大のニオブ-スズ超伝導コイルです。
また、コイルケースは、超電導コイルの性能を保つため冷却システムを備えており、ケースは極低温用ステンレスで製作されています。

TFコイル単体の大きさ

  • 高さ
    16.5m
  • 9m
  • 重量
    300トン超

プラズマを安定的に閉じ込めるためにTFコイルに要求される製作精度は、mm単位です。製作時のインボードとアウトボードの合わせ作業では、隙間をコピー用紙の厚さ(0.5mm±0.25mm)以内で、3次元形状を合わせる必要がありました。
当社は要素試験、縮小モデル試験、実規模大モデル試験を通じて、QST(国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構)殿と連携してその要求に応えるための製作方法を確立しました。

トロイダル磁場コイル

TFコイル製作を通じて、人材の育成及び製作基盤技術を伸長

原子力製品の製作で培われた技術力をもとより、若手が中心となりITER要求を満足するために創意工夫を行い、ITER向けTFコイルの製作に挑みました。

コイル構造物の溶接

  • 強制的な溶接変形拘束治具なし
  • 溶接変形を抑えるために、狭開先TIG溶接、電子ビーム溶接を適所に採用
  • 要素試験等を行い、手順等を最適化
コイル構造物の溶接

ラジアルプレートの溶接と機械加工

  • 強制的な溶接変形拘束治具なし
  • 溶接変形を抑えるために、狭開先TIG溶接、レーザービーム溶接を適所に採用
  • 世界最高レベルの高出力(30kW)ファイバーレーザーを適用
  • 溝加工による変形を踏まえて、要素試験を通じて加工手順、工具を最適化

数値シミュレーション(有限要素法:FEM)に用いた変形予測解析 

要素試験、縮尺モデル試験、実規模部分モデル並びに実機製作時におけるひずみ計測データをもとに、最終製品での変形挙動予測を行い、最終溶接の手順等の検討を実施。溶接変形を目標値以内におさめています。


ダイバータ

ダイバータへの取組み

ダイバータは核融合反応で生成されたヘリウム(He)、燃え残しの燃料や不純物を真空容器外に排出し、プラズマの安定した閉じ込めを維持するのに重要な機器の一つです。

当社はITERダイバータの構成要素で日本が調達分担する外側ターゲットに関わるR&Dに参画しています。当社は実機 長のプ ラズマ対向ユニット(PFU)のプロトタイプ(第一期)を試作し、ITER機構が要求する熱負荷試験条件に耐 えうるものを提供することができました。現在、プロトタイプ(第二期、第三期)の試作を進めています。

プラズマ対向ユニット(PFU)

プラズマ対向ユニット(PFU)の鋼製支持構造体

耐熱性機器の開発

ダイバータの熱負荷は、ピーク部で10MW/m2、過渡現象時には、20MW/m2になります。
これは小惑星探査機はやぶさが大気突入時に受ける表面熱負荷に匹敵します。*

ダイバータの熱負荷

  • ピーク部
    10MW/m2
  • 過渡現象時
    20MW/m2
  • はやぶさが大気突入時に受ける表面熱負荷は13〜14MW/m2で、スペースシャトルの30倍と言われています。

高熱負荷試験
(ITER機構/量研機構によりロシア・エフレモフ研で繰返し熱負荷試験を実施)

CFC-Wダイバータ (2013年)
CFC部は10MW/m2×1000回、20MW/m2×500回の熱繰返し試験において、接合界面に脱離、剥離等の損傷なく、世界で初めて長尺のCFC-Wダイバータで健全性が確認された。
フルWダイバータ (2015年) 
10MW/m2 x5000 回、20MW/m2 x1000 回とITER要求を上回る繰り返し条件で接合部に損傷がなく、フルWダイバータでは世界で初めて健全性を確認された。尚、奥から3本が当社作製PFUプロト。
異種材料の溶接(Cu合金とステンレス鋼)

ITERダイバータでは、高熱負荷部には熱伝導に優れ、強度が高いCu合金製のチューブが用いられます。冷却水を供給する役割を持つ鋼製支持構造体はステンレス系の材料が使用されるため、異材溶接継手があります。原子力製品 等の製作で得られた知見を活かし、異材溶接の適正化を図っています。

異材接合部(ロウ付け部)の非破壊検査(W-Cu-XM19、Cu-Cu合金の接合界面)

接合部の健全性を確認するために、材料の特性を把握し、超音波を用いた超音波探傷試験(UT)を行い、 接合状態を調べます。

三菱重工グループの実績