極限まで性能を高める。飛昇体開発者が語る“日本を守る性能”への追求
※ 記載内容は2025年12月時点のものです
2020年に三菱重工へ新卒入社し、航空機・飛昇体事業部で空対艦ミサイルの開発に携わる野崎 愛斗。誘導制御の設計という高度な専門領域を担いながら、AIを活用した業務改善でも成果を上げています。「日本を守る」使命感と探究心を併せ持つ野崎が、飛昇体開発の醍醐味を語ります。
海に囲まれた日本をどう守るか。飛昇体の開発にかける想い
現在、担当されている業務内容を教えてください。
空対艦ミサイル開発チームの一員として、システム設計業務に携わり、中でもミサイルが目標に向かって正確に進むための誘導制御の設計を担当しています。開発しているミサイルはわが国が独自で開発した航空自衛隊向け空対艦ミサイルです。
設計業務だけでなく、防衛省との折衝や試験対応、さらには5年、10年先を見据えた将来の新規事業提案にも携わっています。
チームの構成と雰囲気を教えてもらえますか?
プロジェクトの規模は非常に大きく、私の所属するチームだけでも約30名、協力メーカーや製造・品質保証の方々まで含めると、全体では数百人レベルのエンジニアが関わっています。
チームは風通しが良く、役職や年次に関係なく意見が活発に交わされるフラットな組織風土です。1、2年目の若い時からさまざまな仕事を任せてもらえる、チャレンジを後押しするような環境です。また,私のチームは、航空自衛隊と密に連携しており、その風土や価値観を受け継いでいます。とくに最前線で活躍されているパイロットの方々は、高い危機感とスピード感を持ちながら常に最先端を追求しています。私たちもその姿勢を大切にしながら、日々の業務に真摯に取り組んでいます。
仕事をする上で大切にしていることを教えてください。
品質、コスト、納期のバランスを考えています。エンジニアは品質を高くすることに目が向きがちですが、他国との競争の中で、どれだけ品質が良くても欲しい時期になければ意味がありませんし、コストが高すぎても数を揃えられません。品質だけでなく、バランスよく顧客要望に応えることが大切です。
また新規事業提案では、明確な要望に応えるだけでなく、潜在的なニーズを捉えることを意識しています。昨今は変化が激しく、スピードの要望も高まっています。そのためAIを活用し、設計作業の効率化、スピードアップを進めています。
国防に関わる製品を手掛ける上で、心がけていることは何でしょうか?
国を守る仕事であることを常に意識しています。とくに防衛省や自衛隊の方に会うと、国を守ろうとする強い想いを感じることが多いですね。そのため開発においても、日本を守ることに特化して考え抜き、設計しています。海外でも性能の高い製品を開発していますが、それは日本のために作られたものではありません。
海に囲まれた日本では、船や航空機で押し寄せてくる敵に対して効率的に対処する必要があります。数的劣勢の中でどう対応していくか。日本を守る性能にはどこにも負けないという自負を持って設計に当たっています。
同期と支え合った1年目。少しずつ任される領域が広がり、設計者としての視野が広がる
学生時代はどのようなことを学びましたか?
航空宇宙工学を専攻し、制御工学を学ぶ中で、とくに宇宙探査機の着陸制御を研究していました。この分野に興味を持ったのは高校時代。物理学がおもしろいと感じ、将来どんな仕事に携わりたいか考えた際、なるべく難しくチャレンジングなことに関わりたいと思うように。その中で、航空・宇宙分野が最も難しいのではないかと考え、志望しました。
就職活動では、どのような軸で企業を選びましたか。
制御工学を活かせる製品の中で、難しいものは何かと考えた時、飛昇体が思い浮かびました。また、歴史的に産業の技術発展を支えてきた防衛製品にも興味がありました。技術軸と歴史的背景という二つの軸から、防衛分野の飛昇体開発を志望して就職活動を進めました。
三菱重工を選んだ決め手は、やるからにはトップでやりたいという思いから、リーディングカンパニーであることが一つです。もう一つは、デュアルユースという防衛技術と民間技術を相互に転用する取り組みを推進する部署があることを知り、国防への貢献だけでなく産業の技術発展にも貢献できると確信したことが決め手になりました。
入社後の研修の内容や同期とのつながりについて教えてください。
研修は座学でものづくりに必要な知識を一通り学びましたね。1年目には指導員と課長のサポートを受けながら、自分のテーマで技術検討を行い、論文にまとめる教育を受けました。同期は事業部全体では30名ほどいて、とくに1年目は横のつながりを深めながら乗り越えていきましたね。
このつながりは現在も続いていて、疑問に思ったことがあれば同期にチャットやメールで気軽に質問しています。同期との情報交換を通じて他部署の様子を知り、実際に部署異動した人もいるんですよ。
入社から現在まで、仕事の変遷を教えてください。
開発の1年目から現在の製品に携わっています。1年目は指導員についてもらいながら仕事をし、2年目になると特定領域の仕事を任せてもらえるようになりました。3年目、4年目になると他部署との仕事にも携わるようになり、顧客の前に出る機会も増えました。現在は開発が終わるフェーズにあり、次の事業提案にも取り組んでいます。
さらなる技術の向上をめざして。手を挙げたアイデアがカタチになった瞬間
これまでで、とくに印象に残っている仕事について教えてください。
本来の業務のかたわら、無人航空機が注目される少し前くらいのタイミングで、社内の研究開発に自ら志願して参画しました。研究が進む中、必要だと感じた要素を積極的に提案。小規模なチームだったこともあり、アイデアがつぎつぎと採用されました。
当時の提案が磨き上げられ、現在の事業へと大きくつながることになり、自分の考えが形になる手応えを感じた印象深い経験です。
AIを活用した設計業務改善にも取り組まれているとお聞きしましたが、どのような経緯だったのでしょうか?
会社が主導する「D-1グランプリ」というDXに関するコンペで、飛昇体技術部の課題に対する打ち手として、AIを使ったアイデアを応募して決勝戦に進み、結果は196件中3位でした。シミュレーションを活用することでリードタイム、つまり開発期間の短縮に寄与できないかというアイデアでした。
開発している製品が特殊で、他国との競争のなか、少人数、かつスピーディーに進行する必要があるため、リードタイムの短縮は重要となります。応募したアイデアは、そこが高く評価されたのだと思います。
入社されてから現在までで、自分が成長したと感じていることはありますか。
お客さまとの調整を多く行ってきたこともあって、お客さまとの関係性構築や調整能力といったところはかなり成長したと感じています。また、開発を一通り経験していく中で、とくに試験ではさまざまなメンバーを取りまとめながら遂行していく能力が鍛えられたと思います。
仕事でやりがいを感じていることを教えてください。
新規事業の提案には、日々大きなやりがいを感じています。世界各国の技術動向を調べ、日本に必要な装備を考えることは、まさに国防のあり方を検討する大切なプロセス。それと同時に、最新技術やその性能に触れることで、私自身の好奇心も満たされてきました。
最前線で活躍されている自衛隊の方々との意見交換も、いつも刺激をいただいています。現場の方々やエンジニアは理論上の性能を追い求めがちですが、極限の状況で本当に大切なのは、迷わず使える操作性や使いやすさ。実際に使う立場からの「現場で使いこなせてこそ技術は活きる」という視点に触れることは、私にとって大きな学びとなっています。
温度や重量、性能を極限まで追求していく。飛昇体開発のおもしろさ
開発者から見た飛昇体の魅力はどんなところですか。
人が乗るという制約を受けず、性能を極限まで追求できるのが技術的な魅力ですね。たとえば、熱検討では機器が耐えられるギリギリの温度まで攻めた検討をできます。その過程で重さを数十グラムでも削っていきます。飛昇体はミッションが限られているため、一つひとつの性能をどんどん高めていけるところがおもしろいです。
プロジェクトを進める上での醍醐味を教えてください。
多岐にわたる方々の力が集結しないと成し遂げられないレベルのプロジェクトだと思っています。皆さんさまざまな目線での意見があって、時にはぶつかることも。そしてぶつかって議論したからこそ自分では到底思いつけないアイデアに落ち着くこともあります。
メーカーや部品の設計をしている方々など、それぞれの立場の目線で最適をめざす中で、どれが日本を守ることにつながるかを考え、議論し、最良の答えがでる瞬間が楽しいですね。
今後どのような存在になっていきたいですか?
国内防衛産業のリーディングカンパニーとしての地位を保ちつつ、昨今の情勢から、今後は「世界で戦える企業」へと進化していければと思います。
個人的には、世界各国の技術動向を捉えた上で、自社の競争力を高めるための具体的な事業提案や、開発プロジェクトを牽引できるリーダーをめざしていきたいですね。日本の強みである高度な製造能力やプロセスは、米国企業との意見交換でも高く評価されています。エンジニアとして、こうした現場の力を最大限に活かし、グローバル市場で存在感を発揮できる企業づくりに貢献していきたいです。
これから三菱重工に加わることになる仲間へ、メッセージをお願いします。
学生の皆さんにお伝えしたいのは、どんなに些細なことでもいいので、自分のアイデアを実行し、さらにはそれを成果物としてアウトプットする経験をしてほしいということ。どれだけ優れた思考力を持っていても、それをアウトプットとして形にしなければ社会的な価値にはなりません。
三菱重工には「自律・協働・挑戦」を大切にする文化があります。使命感を持ち、チームでゴールをめざし、変化を恐れず挑戦し続けたい。そんな熱い想いを持つ皆さんと、日本の未来を守る仕事ができる日を楽しみにしています。