加圧水型原子力発電プラント:主要設備
[ 原子力発電 ]

主要設備

1次冷却材設備

加圧水型原子炉(PWR)の1次冷却設備は、原子炉容器を中心として蒸気発生器、1次冷却材ポンプ、加圧器などで構成されています。これら原子炉系の主要機器は1次冷却材管によって接続され、ループを形成します。

1次冷却材設備

原子炉容器

燃料と炉内支持構造物を収納し、通常運転時の高温・高圧、異常時の過渡変化、さらに高速中性子による脆化などに対しても原子炉冷却材圧力バウンダリとしての機能を十分果たせるように設計しています。

蒸気発生器

竪置U字管式熱交換器で、原子炉内で発生した熱エネルギーを蒸気に変えてタービン系へ送る役目をもっています。原子炉停止後は崩壊熱を自然循環で除熱できるように、原子炉容器の出入口管台より上方に配置しています。

1次冷却材ポンプ

炉心冷却に必要な1次冷却材を一定の流量で循環させるポンプです。

加圧器

1次冷却系を常に一定圧力に保つためのもので、電気ヒータ、スプレイ弁、逃がし弁により圧力制御を行います。

1次冷却材管

原子炉容器、蒸気発生器、1次冷却材ポンプを相互に連結し、循環回路を形成します。

基本仕様(代表例)

600MWe級 900MWe級 1,200MWe級 APWR 1,500MWe級
ループ数 2 3 4 4
運転圧力(MPa) 約15.5 約15.5 約15.5 約15.5
運転温度(°C) 約300 約300 約300 約300

炉内構造物

原子炉容器の中には燃料集合体が円柱状に配列されます。
その原子燃料を配置するため、原子炉の中には炉内構造物と呼ぶ支持構造物を入れています。

原子炉構造図(APWR)

炉内構造物は大別して、上部炉心構造物と下部炉心構造物から構成されます。

炉内構造物工場
上部炉心構造物

炉心および燃料

燃料集合体は、二酸化ウランを円筒状に焼き固めた燃料ペレットをジルコニウム合金の被覆管に入れた燃料棒と制御棒案内管を支持格子により保持し固定した構造です。

三菱重工は1970年に関西電力美浜発電所1号機に原子燃料を納入し、以降、北海道電力殿、関西電力殿、四国電力殿、九州電力殿、日本原子力発電殿の計24プラントに高品質の製品を供給してきました。この間、一貫して設計改良と品質向上に努めており、その品質の高さは世界で最高の水準を誇っています。 さらに、ウラン資源の有効活用を目指す高燃焼度燃料(MOX燃料)などの開発を進めるとともに、発電プラントと一体となった燃料の高度化を計っています。

MOX燃料について

使用済み燃料中のプルトニウムを取り出し、軽水炉プラントで燃やせるようにウランと混ぜて原子炉燃料に加工したものを「MOX (Mixed Oxide: 混合酸化物) 燃料」といい、MOX燃料を軽水炉で燃やす事を「プルサーマル」といいます。(「プルサーマル」は「プルトニウム」と熱中性子炉、一般には軽水炉を指す「サーマルリアクター」を組み合わせた言葉。)
プルサーマルの実現は、ウラン資源の有効利用並びに余剰プルトニウムは持たないという我が国の公約にも合致し、国の原子力開発利用長期計画に明示されています。三菱グループでは、MOX燃料に関する設計、安全評価、炉心設計、プラント設備影響評価、輸送容器設計、燃料加工等、幅広い分野で取り組んでいます。

PWR燃料の製造実績

PWR燃料の製造実績グラフ

燃料集合体および制御棒クラスタ説明図(17×17型)

基本仕様(代表例)

600MWe級 900MWe級 1,200MWe級 APWR
1,500MWe級
炉心熱出力(MWt) 1,650 2,652 3,411 約4,451
炉心等価直径(m) 2.5 3 3.4 3.9
炉心有効高さ(m) 3.7 3.7 3.7 3.7
炉心燃料集合体数(体) 121 157 193 257
燃料集合体および制御棒

原子炉容器

加圧水型原子力発電(PWR)プラントの原子炉容器は、炉心を収納する容器であり、高温・高圧に加えて中性子の照射も受ける厳しい環境で使用されるため、高い信頼性が要求されます。

三菱重工グループでは、加圧水型原子炉の原子炉容器に用いられる材料の仕様は各種試験データに基づき決定しています。鍛造材を大幅に採用して溶接部を減らし、供用期間中に要求される溶接継手の検査が少なくなるようにしており、蓋用管台に対しては残留応力の低減対策も講じています。また、上部原子炉容器に耐腐食性を向上させるなどの改良を加え、既設プラントの予防保全としての取替えていただけるよう国内外で供給しています。

【図】原子炉容器の据付

原子炉容器の設備仕様

2ループ 3ループ 4ループ 4ループ(APWR)
高さH(m) 11.5 12.4 12.9 13.6
厚さT(mm) 168 197 216 255
内径ID(m) 3.4 4 4.4 5.2
重量(ton) 約240 約330 約410 約590
最高使用圧力(MPa) 17
最高使用温度(°C) 343
主要材料 低合金鋼(SFVQ1A,SQV2A,内面ステンレス鋼クラッド)

蒸気発生器

蒸気発生器は蒸気を発生させる装置で、原子炉系とタービン系の接点であり、加圧水型原子力発電プラント全体の信頼性の面で重要な機器の一つです。

三菱重工は1970年、美浜2号機用に初の国産蒸気発生器を製作して以来設計改良を重ね、これまで、取替用を含め100基を超える蒸気発生器を製作・納入しています。

蒸気発生器構造図(70F-1型)

設備仕様

54F型 70F-1型
胴部外径 上部(m) 約4.5 約5.1
下部(m) 約3.4 約3.9
全高(m) 約21 約21
伝熱管 本数(本/基) 3,386 5,830
外径(mm) 約22.2 19.1
厚さ(mm) 約1.3 約1.1
伝熱面積(平方メートル/基) 約5,060 約6,500
重量(ton) 約330 約440

1次冷却材ポンプ

1次冷却材ポンプは、加圧水型原子力発電プラントの1次冷却材を高温・高圧で循環させる重要な回転機器です。

1次冷却材ポンプは立軸単段吸込ディフューザ型で、水力設計面で高効率化を図るとともに、軸シール部には非接触の限定漏洩制御方式を採用することにより、長期連続運転にも耐える信頼性の高いものとしています。保守面においても、 軸シールのカートリッジ化や長寿命化を進める一方で、シールの分解点検用ロボットも開発しています。また、性能・健全性については、三菱重工所有の設備で実流量試験を行って確認しています。

1次冷却材ポンプ構造図(MA25S型)

1次冷却材ポンプの主要目

93A-1型 MA25S型 100D型
ポンプ型式 立軸単段吸込ディフューザ
(限定漏洩式シール採用)
流量(立方メートル/h) 20,100 25,800 20,200
全揚程(m) 約80 約88 約80
最高使用温度(°C) 343
通常運転圧力(MPa) 15.5
通常運転温度(°C) 約290
回転数(rpm) 約1,200 約1,200 約1,500
シール注入水(立方メートル/h) 1.8
熱遮へい装置冷却水
(立方メートル/h)
9.1
モータ型式 全閉内冷籠型フライホール、逆転防止付
電源(周波数(Hz)/電圧(V)) 60/6,600 60/6,600 50/6,600
モータ出力(kW) (呼称)4,480 (呼称)6,000 (呼称)4,570
ポンプ効率(%) 83以上 85以上 83以上

タービン発電設備

加圧水型原子炉(PWR)のタービン発電機設備は、蒸気発生器で発生した蒸気の熱エネルギーを回転エネルギーに変換するタービンと、回転エネルギーを電気エネルギーとして取り出す発電機などから構成されています。

タービン発電設備

低圧タービン最終翼

炉心熱出力を効率よく電気出力に転換するため、4極機用低圧タービン最終翼として、41・46・54インチ翼があります。(60Hz用)

低圧タービン最終翼

蒸気タービン

高圧タービン/低圧タービン

タービン設備は蒸気熱エネルギーを効率良く電気に変換するために、タービン翼の長大化、完全3次元流れ設計翼の採用により、高性能化を図っています。また、インテグラルシュラウド構造翼(ISB)の採用により、信頼性の向上も図っています。

完全3次元翼 / インテグラルシュラウド構造翼(ISB)

長翼採用による出力向上

低圧/湿り蒸気を用いた時のタービンへの蒸気流動は、従来の発電プラントよりもはるかに大きくなります。原子炉にはロングブレード(41?54インチ)/ハーフスピードマシンが使用されています。

54インチ翼回転振動試験

発電機および励磁機

発電機の固定子コイルは水冷却方式、回転子コイルは水素内部冷却方式で冷却されます。発電機は、水素ガスクーラを発電機フレーム上部に配置させた“トップハット”構造により、回転子軸長を短くし、軸系の安定性・信頼性向上を図っています。 また励磁機は、実績が豊富で保守が容易なブラシレス励磁です。これはタービンにより駆動されるため、所内動力を低減できます。

固定子コイル

系統図

PWR型原子力発電所
系統図

三菱重工グループの実績