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メタン酸化触媒装置の開発
舶用LNGエンジン向けメタン酸化触媒装置の実証試験を開始
IMO(国際海事機関)は、2050年頃までにGHG(温室効果ガス)排出をネットゼロにすることを目指しています。IMOのMEPC(海洋環境保護委員会)で検討されているGHG削減の「中期対策」では、規制対象はCO₂だけではなくGHG全般となっており、スリップメタンも対象に含まれます。
スリップメタンは、GHGの中でもGWP(※1)=28と温室効果が高く、その排出抑制には大きなメリットがあります。
三菱重工マリンマシナリは、LNG焚きエンジンから未燃で排出されるスリップメタンの後処理を可能とする「舶用LNGエンジン向けメタン酸化触媒装置」の開発に取り組んでいます。
本装置は、当社の持つ触媒装置の設計製造技術を中核とし、三菱造船株式会社の搭載エンジリアリング技術、ダイハツインフィニアース株式会社のエンジン最適化技術を融合して共同開発しているものです。 陸上でのエンジン検証試験では、メタン酸化率70%以上の初期性能を確認しており、2025年5月から1年間の実証試験を継続中です。実証試験は、KEYS Bunkering West Japan株式会社のLNGバンカリング船(※2)「KEYS Azalea」に実証機を搭載して、日本郵船株式会社の協力を得ながら実施します。
当社は、船舶からのGHG排出削減に継続して取り組むことにより、世界規模で進む船舶の環境性能向上に引き続き貢献していきます。
(※1) GWP: Global Warming Potentialの略称。地球温暖化係数。CO2を基準値1とした数値。
(※2) LNGバンカリング船:LNGを燃料とする船舶に対し、LNG燃料を供給する小型船。
省エネ装置の市場投入
新たな燃節アイテム“MARF”を市場投入
IMOの定めた2050年の温室効果ガス(GHG)排出ネットゼロに向けた2030年のありたい姿の目標実現を目指すべく、当社は技術・製品開発に取り組み中ですが、ゼロエミッション燃料の安定供給が実現されるまでは就航船向け省エネレトロフィットアイテムの拡充・提供により、GHG排出削減に貢献していく方針です。
具体的には、就航船向けの省エネアイテムとして、三菱造船が保有するリアクションフィンの技術をベースに“MARF(Mitsubishi Advanced Reaction Fin)”を新規開発し、販売を開始しました。
MARFとは、プロペラ前方部に搭載される、半月型のダクトとフィンで構成された省エネ付加物です。
ダクト内部に配置されたフィンにより、プロペラとは逆回転の水流を発生させ、通常では失われてしまう回転流を回収し、外側のダクトによって前方への推進力を生み出します。これら特性の組み合わせにより、船の省エネ運航をサポートします。
また、MARFは主に低速・肥大船(バルクキャリアー、タンカー)向に特に効果を発揮し、概ね5% ~ 8%の燃料節約改善効果が期待されます。
当社は、海運業界の脱炭素化の実現に貢献すべく、今後も積極的に取り組んでいきます。
fig1. Flow field estimation by CFD Analysis
グローバルカンファレンスへの参画
2025年10月20日~10月22日、アントワープで開催されたGMF(※) の年次サミットに参加しました。
同サミットには、IMO(国際海事機関)のArsenio Dominguez議長初め、エネルギー産業、海事並びに港湾産業、金融他のエコシステム全体の代表(約250名)が集まり、地球温暖化等の社会的課題への対応について、プレゼンテーション、パネルディスカッション、分科会形式のワークショップなどを行いました。
前週のIMO/MEPC83(第83回海洋環境保護委員会)の臨時会合でGFI燃料規制の採択が1年間の延期となったものの、海事産業としては引き続き2050年のGHGネットゼロの目標達成に向け、代替燃料の安定的確保、エネルギー効率の改善、船員対策等の各種施策を講じてゆくことを確認致しました。
当社としては、舶用製品の技術プロバイダーとして海事産業の脱炭素化推進に貢献してゆきます。
2026年の次回年次サミットは、中国上海にて開催される予定です。
当社は、船舶からのGHG排出削減に継続して取り組むことにより、世界規模で進む船舶の環境性能向上に引き続き貢献していきます。
(※)GMF (Global Maritime Forum): コペンハーゲンに本部をおく国際的な非営利組織。
Arsenio Dominguez IMO事務総長(右)とJohannah Christensen GMF社長(左)