News

主機関排熱回収システムの変遷 - そして今、次世代排熱回収システムへ

Print

三菱重工マリンマシナリは、低炭素・脱炭素社会に移行する中で主流となりつつある硫黄分を含まない燃料焚主機関からの排熱回収を主目的に、有機ランキンサイクル技術を用いた最新鋭のバイナリ発電装置(以下、WHR-ORCシステム)(注1)を開発しました。
主機関の継続的な燃費性能向上や環境性能向上により、回収可能な排熱量は減少を続けています。
当社はこれまでトレンドに応じて排熱回収システムを改良・開発し、数多くの実績を積み重ねてきました。
今回開発のWHR-ORCシステムは、 このような当社の取り組みのもとで開発した最新鋭のORCシステムです。

第一世代

ディーゼルエンジンが大型船舶用主機関として搭載された当初から、エコノマイザ等で回収した排気エネルギーを蒸気に変換して発電するシステムが採用されてきました。
石油ショック後には省エネルギーに関する要求が高まり、特に主機関の燃費向上と船体改良などが行われ、排気ガスの温度低下と主機関の出力低減により、排気エネルギーが大幅に減少していきました。
このような状況下でも船内需要電力を主機関の排気ガスからのエネルギーで賄いたいとの要望は根強く、各種システムが改良、採用されてきました。
燃料高騰が落ち着いてからは、排熱回収システムの採用が減少し、採用された場合も比較的シンプルな2段圧力式もしくは混圧式が主流となりました。

当社排熱回収装置の実績 (第一世代、第二世代)

第二世代

舶用タービン

2000年代に入り、環境問題への関心の高まりと燃料価格の高騰から、主に電力需要の大きな大型コンテナ船において、過給機の余剰効率を発電用途に利用するパワータービンと従来からの蒸気タービンを統合した排熱回収システム(以下、STGシステム)が再び注目されるようになりました。
このSTGシステムでは、抽気ガスと排気ガスの双方の活用により主機関との連携強化を図り最適制御を可能としたことで、船内のエネルギー効率の更なる向上に繋がりました。

また、より柔軟に船内電力需要に応じることを目的として、STGシステムと軸発電システムとを統合した省エネルギー発電パッケージも提案しています。

第三世代

WHR-ORCシステム (Model : MWT-ZD600M)

主機関の更なる燃費向上、減速運航の常態化、更にNOx規制に対応の結果、利用できる主機関からの排気エネルギーは著しく減少(排気ガス温度も著しく低下)しました。
これに伴い、従来型の排熱回収システムでは本船電力需要を十分に且つ効率的に賄えない状況となったため、再度排熱回収システムの採用は減少する事となりました。

一方でLNG、メタノール等の親環境燃料船が増加し、それに伴い燃料コスト高騰が続き、更にGHG排出抑制が世界共通の課題となる中、次世代の排熱回収の主力となる事を目指し、低温腐食の懸案から従来回収が難しかった150℃以下の排熱を有効利用できるWHR-ORCシステムを開発しました。