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CTOメッセージ

製品の多様性を強みとして発揮できるよう、技術や知識の事業間の横通しを促進していきます。取締役 常務執行役員 CTO 名山 理介

製品の多様性を強みにする仕掛け

当社は2016年4月、全社の技術とマーケティング、調達などの機能を横断的に融合させた「シェアードテクノロジー部門」をCTO直下に発足させました。同部門は、技術戦略推進室、総合研究所、ICTソリューション本部、バリューチェーン本部、マーケティング&イノベーション本部から構成されています。技術基盤およびマーケティング力の強化や調達を含めたバリューチェーン等の全社最適化を図り、さらには中長期にわたる企業および事業競争力の基盤強化が目的です。

2016年度は、特に部門全体のベクトル合わせに注力した1年でした。部門発足前は各組織がそれぞれの目的をもって活動していたため、まず、そもそも全社機能として何を提供し、何を止めれば良いのか、部門全体で議論し、共通認識を深めました。そのうえで、部門としてのミッション、ビジョン、ストラテジーを決め、それに基づいて下部組織に展開していくことで部門全体の方向性を揃えてきました。

従来は分かれていた組織が一体化することによるシナジーも現れ始めています。例えばマーケティング&イノベーション本部は、社会で求められている製品のニーズを営業出身の社員と研究所出身の技術者が議論して考えることで、お客さまへのアプローチがしやすくなり、新しいアイデアも生まれてくるようになりました。

当社はかつて中小企業の集まりのような組織と言われ、事業間の横のつながりが弱いところがありました。国内市場が伸びていた時代は、事業ごとに動いていても問題ありませんでしたが、現在のように縮小傾向になっている中では、各専門知識を持った人間だけで検討しても発展的な発想に限界があり、事業の発展は望めません。そのため、三菱重工全体の知識や技術を活用していく必要があり、シェアードテクノロジー部門による事業間の横通しが重要になっています。

競合他社に比べて多品種の製品を扱っていることは弱みと捉えられる場合もありますが、多様な製品を開発してきた技術や経験は大きな強みであるはずです。特にエネルギー分野のガスタービンや防衛・宇宙関連の製品には先端レベルの技術が要求されており、他の事業領域にもそうした技術を適用していくことが新たな製品の開発や事業にもつながります。また、技術だけに限らず、調達や営業でも、専業メーカーにはないシナジーを得ることができます。このようにシェアードテクノロジー部門の横断的な展開を、弱みを強みに反転させる仕掛けにしていきたいと考えています。

先端技術の他製品への展開(例:ガスタービン)

全社を技術面でリードする役割とカバーする役割を併せ持つ

シェアードテクノロジー部門では、プロトタイプを開発し、それを各事業に展開するといった活動も行っています。例えば、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などの先端技術について事業ごとに知識を蓄えるだけではなく、シェアードテクノロジー部門がプロトタイプを開発し、国内外の事業やグループに展開していく考えです。

その一例が、当社とデンマークのヴェスタス社(Vestas Wind Systems A/S)との洋上風力発電設備合弁会社であるMHIヴェスタス社(MHI Vestas Offshore Wind A/S)のイギリス工場とデンマーク工場でのプロジェクトです。このプロジェクトでは、3ヵ所の工場にシェアードテクノロジー部門の技術者が赴き、それぞれの工場の製造工程を診断し、改善に必要となるシステムを開発・導入した結果、タクトタイムを最大50%以下に短縮し、設備を増やすことなく生産能力を大幅に向上することができました。このシステムのオリジナルは当社の国内工場の生産現場向けに開発を重ねてきたスケジューリングシステムです。比較的小規模の生産現場からさまざまな事業に展開し進化させてきたもので、ボーイング787主翼の生産現場でも活用されています。このような実績を積み重ねていくことで、グループ全体に対する三菱重工本体の求心力を高め、ノウハウや技術の一層の横通しを進めていきます。

近年、相次ぐリスク案件の顕在化に対し、当社の技術力の低下を懸念する声を聞くことがありますが、少なくともガスタービンや航空機、ロケット、防衛装備品など、先端技術が要求されている分野において、それは当てはまりません。ただ、国内で市場規模が縮小している分野で、技術者を含め、事業に携わる人員の数が次第に減少していくことには危機意識を持っています。このような産業分野を社全体でカバーしていくのもシェアードテクノロジー部門の重要な役割ですので、技術力を底上げし、そうした懸念を払拭していきたいと考えています。

社外の知恵を取り込むイノベーション推進研究所

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製品開発においてはミッションごとに期限とKPIを明確に設定し、達成の進捗を図っていくのが当社の基本方針です。ただし、この方法では長期的な展望を見据えた新製品や新事業の開発や研究につながりにくいという側面がありました。また、国内を中心に各事業の市場環境は頭打ちとなり、大きな成長を期待することは難しくなってきています。そのため、10年以上先を見据え、当社の事業を良い意味で壊していくような投資が必要だと考え、イノベーション推進研究所(仮称)を設立することとしました。

シェアードテクノロジー部門を発足させてから、オープンイノベーションに注力し、投資額の増加や人員の拡充だけでなく、海外を中心にパートナーの数も増やしてきましたが、イノベーション推進研究所はこの方針をさらに発展させ、従来にはない発想とアプローチで、国内外のパートナーとの連携を通じた新たな知の獲得を推進していきます。

研究活動の自由度を高めるため、イノベーション推進研究所は当社が100%出資する研究開発専業法人とする計画です。外部登用したプロジェクトマネージャーに大きな裁量を持たせることで、最先端知見やアイデアを吸収し、共通基盤技術や新製品の研究開発を加速させていきます。現段階ではすぐに大規模な投資を検討しているわけではありませんが、実現できれば大きな変化を起こせるようなテーマをいくつか選んでいます。すぐには製品に導入されなくても、今後市場を席巻するかもしれないイノベーションが生まれることに期待しています。

将来の社会ニーズに応えられる技術基盤の構築

当社は伝統的に、テーマをこれと決めて技術開発を行ってから社会に広めるというよりも、まず社会のニーズを掴み、それに対して製品を開発してきた文化があります。創業も、ビジネスのために船が必要だったので造船を始めたのがきっかけで、その発展でエンジン、ボイラ、発電設備も開発していったのです。ただし、お客さまにニーズがあった際に真っ先に当社に声をかけていただくには、その期待に応えられるよう技術力を向上し続けていかなければなりません。

将来、社会ニーズが高まると考えられる分野の一つはオイル&ガス分野です。現在は原油価格の低下により市場は低迷していますが、中長期的な観点で当社が提供する技術や製品のポテンシャルがある市場には積極的にアプローチしています。また、エネルギー分野では、再生可能エネルギーがますます広がり、将来の基幹電源にもなりうると認識しています。その際には火力発電や原子力発電の役割は大きく変わることになります。また、電化の流れもいっそう強まり、使用されるエネルギーの中で電気が占める割合もさらに増えていくでしょう。こうした社会の最適化を実現するべく、火力発電の運用性をコントロールするシステムやそれに付随するサービスなどの研究に取り組んでいきます。

私の役割は、技術基盤の構築とイノベーションの創出です。事業部門ですばらしい製品のアイデアが出てきたとしても、その基盤や創出の仕組みがなければ具現化できません。近い将来に新たな製品・サービスやビジネスの芽が出るよう、長期的な観点で事業の拡大・強化に貢献していきます。