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CFOメッセージ

中長期的な企業価値向上を念頭に、キャッシュ・フロー経営を貫徹するとともに、財務のベストバランスを実現していきます。取締役 常務執行役員 CFO 小口 正範

財務基盤の強化は着実に進捗

三菱重工グループは、激しさを増すグローバル競争や2000年代後半に発生した世界的な金融危機を受け、将来への成長投資とリスク対応に備えて財務体質を強化するため、2010年頃から戦略的事業評価制度に基づくポートフォリオの最適化とキャッシュ・フロー重視の経営へと大きく転換を図りました。この結果、事業の選択と集中による収益性の向上やバランスシートの効率化などを通じて、2010年度から2016年度にかけて、累計で約1兆6,000億円のフリー・キャッシュ・フロー(特殊要因(注)を除く)を獲得することができました。このうち、約8,100億円を新規事業・リスク対応に、約5,700億円を財政健全化に、そして約2,100億円を株主への配当に配分してきました。

当社は将来のコア事業を育成するという観点から、多額の投資を必要とするMRJの事業化を進めていますが、この資金を借入に頼らず自己資金で賄うことを財務の基本方針としています。こうした将来に向けた大型投資のほか、客船事業などのリスク案件の手当てをしつつも、2016年度のD/Eレシオは0.44と過去最低水準を記録し、有利子負債が2009年度比で40%も減少したことは、財政の健全化が着実に進んでいることを表していると考えています。

(注) 特殊要因:客船事業、MRJ、南アフリカプロジェクト関連支出および2016年度のアセットマネジメントによる収入

キャッシュ・フロー(CF)と有利子負債の推移

事業規模とバランスシート・固定費のアンバランス

しかしながら、2016年度は別の課題が見えた年でもありました。当社グループは、グローバル市場で存在感ある企業を目指し、「事業規模の拡大」と「収益性の向上」を同時に追求し、その過程で事業規模5兆円に向けた企業体格を構築してきました。これはバランスシートと固定費の増大をもたらします。一方で、昨今の国内石炭火力案件における工期の長期化や世界的な景気低迷などによって、当社がこれまで平均的に2年程度と捉えていた受注から売上計上までの期間が2.5年から3年程度に延びています。すなわち、従来のタイムスパンで考えれば2016年度に売上計上されるはずだったものの一部が、2017年度以降にずれたことにより、2016年度の売上高が伸び悩み、結果として売上高とバランスシート・固定費の間でアンバランスが発生し、これが2016年度の収益を押し下げる要因の一つとなりました。これを受けて、当面は現在の事業規模でも収益を上げるべく、まずバランスシートおよび固定費の圧縮に努めていきます。

営業利益の増減要因

バランスシートからの価値創造・アセットマネジメント

先ほど述べたバランスシートの無駄な部分の削減に加えて、目下、従来とは異なった視点でバランスシートの圧縮・効率化を進めようとしています。それは、アセットマネジメントによりバランスシートの資産を価値化するというものです。ここでいうアセットマネジメントとは、決して単なる資産売却、等価交換ではなく、他社との協業やアセットの組み替えなどにより、既存の資産にこれまで以上の新たな価値を見出し、キャッシュを創出することです。

例えば、2017年2月には、当社100%出資の菱重ファシリティー&プロパティーズ(株)の不動産関連事業を別会社化のうえ、同社株式の70%を西日本旅客鉄道(株)(JR西日本)に譲渡しました。不動産事業をコア事業の一つと位置づけているJR西日本との協業により、譲渡した資産のさらなる価値向上を見込むことができると考えた結果です。また、同年3月には横浜本社ビルを売却しましたが、一方で田町地区に保有する第一田町ビルを建替え、事業推進機能・サポート機能を集積した戦略的拠点として整備します。このアセット組み替えにより、首都圏オフィス資産の利便性向上、延べ床面積の増加による付加価値・収益性の向上を図っていきます。

こうした取り組みによって、2016年度は、不動産で790億円、投資有価証券で1,180億円、計約1,970億円のキャッシュを創出しました。2015事業計画では、不動産、投資有価証券を合わせて2,000億円のキャッシュ・フローを創出することを目標として掲げていますが、2016年度までで目標を達成したことから、2017年度以降はもう一歩踏み込んだアイデアを出して、さらなる価値創造、キャッシュ・フロー創出を目指します。

即時・短期・中期の3段階で定常収益力と財務基盤を強化

当社は2010年度に「戦略的事業評価制度」を導入し、経営資源配分の見直しを進めてきました。収益性の観点から見た場合、事業ポートフォリオの最適化はだいぶ進んできたと思っていますが、今後は世の中のニーズがどこにあるのかという点を強く意識していかなければなりません。単に高収益の事業を伸ばして、収益性が低い事業への投下資本を減らすだけではなく、社会が求めるものに対して、当社のポートフォリオをどのように組み替えていくのかという段階に入っています。グローバルにビジネスを展開していくうえでは、新しい事業へのチャレンジやM&Aなど、大きな勝負をしなければいけない時が1度や2度くるはずです。CFOとしてはそういった事態に備えて、1兆円程度の資金を出せるようにしておきたいと思っています。

そのために、キャッシュ・フロー経営を推進し、常に財務体質を健全化しておくことが、CFOたる私にとっての大きなミッションであると認識しています。

こうした中、2017年度以降については、先ほど述べたように外部要因に左右されず、自分たちの努力によって進めることができるバランスシートの圧縮を引き続き強化する方向であり、即時・短期・中期の各タイムスパンで、効果的な施策を講じていきます。まず、即時に対応すべき課題として、不要なキャッシュアウトの抑制に努めます。定型業務の効率化・システム化やアウトソーシングを進める一方、外注の内作取込みによりグループ内のリソースを最大限に活用していきます。

次に、短期的な取り組みとして、生産体制全般の効率化を図ります。生産拠点の集約・再編や内部リソースの最適再配置に加え、業務プロセスの見直しによって生産性を向上し、キャッシュ・コンバージョン・サイクルの改善につなげていきます。

これらと並行して、中長期的には当社が保有するさまざまな資産を、当社内のみならず広く活用することによって、当社のバランスシートから利益やキャッシュ・フローを創出していく取り組みを進めていきます。この対象は有形固定資産だけではなく、技術やIP(Intellectual Property:知的財産)、ノウハウなども含みます。

このような施策を着実に進めることで、これまで重荷であったバランスシートをできるだけ早く収益化していきたいと思います。

配当政策

CFOという立場から見て、会社の理想的な状態を問われた場合、事業規模と資産規模、それに株式時価総額の三者が1:1:1の比率でバランスした状態、すなわち「トリプルワン・プロポーション」が目指すべき姿ではないかと考えています。現状では、資産規模が事業規模を上回り、この2つを株式時価総額が大きく下回っている状態ですが、まずは資産規模を圧縮して収益力を高め、営業利益および純利益を高めていくことが必要です。そして、株式時価総額を上げるにあたっては、株主還元はその最も重要なポイントの一つだと認識しています。先にも述べたように、当社は2010年度以降に事業利益などから生み出したフリー・キャッシュ・フロー累計約1兆円のうち、2割にあたる約2,100億円を、株主還元に充当してきました。この比率は決して高いとは言えませんが、経営改革の過程にある当社としては、事業規模拡大やリスクに対する備えとして、また将来ビジネスの創出のために財務基盤強化を図ることで、中長期的な株主価値の向上につなげていきたいと考えています。

もちろん、経営改革を大胆に進め、ROEを高め、もって株主還元を重視した配当政策を目指す所存ですが、当面は、成長事業への投資等を考慮して、配当性向30%を目途に株主還元を実施してまいりたいと考えています。

以上の考え方に基づき、2016年度の年間配当は、前年度と同額の1株当たり12円とさせていただきました。理想の「体格」を実現した暁には、当社は間違いなく世界で戦えるエクセレントカンパニーになっているはずです。株主・投資家の皆さまにおかれましては、引き続きご理解、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。