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社長メッセージ

構造改革をやり遂げ、より時代のニーズに合致した多様性を追求することで、持続的な成長を目指します。取締役社長 CEO 宮永 俊一社長メッセージ動画

これまでの構造改革の経緯と成果

当社は「2012事業計画」(注1)から本格的に構造改革を進めてきました。そして現在もその改革は進行中です。改革を進めることになった背景については1990年代まで遡らなければなりません。それまで当社は長期にわたる日本の経済成長の流れに適合した主力事業の変化と成長により、国内市場を中心に成長を続けてきましたが、バブルの崩壊以降、低成長に陥った日本経済とともに成長の歩みは極めて緩やかなものとなりました。このような状況下、幾度か打開策を試みたものの、2000年代は収益が大幅に悪化した事業の対策や国内大型投資の低迷の中で、抜本的な対策を打てずにいました。

このように、当社製品事業の国内市場が成熟あるいは縮小に向かう中で、再び成長路線に戻るためには、これまで以上に海外市場に目を向けるほかありませんでした。当然、海外市場では国内市場とは異なる競争にさらされることとなり、またリスクも大きくなるため、経営ポリシー、事業遂行体制そして業務プロセスなどの刷新が求められるとともに、企業文化そのものにも、もう一度光を当てる必要があります。たしかに、グローバル競争の中で存在感を発揮している企業は、リスクを上手くマネジメントしながら、規模のメリットを享受しています。

そこで、私が副社長そして社長室長として策定に大きく携わった「2012事業計画」以降、「規模の拡大」と「収益性の向上」を大きなテーマとして掲げ、海外の競合相手と戦うための体制を整えてきました。具体的には、事業本部と事業所が並存していた状態から事業本部制への一本化を実施し、さらには事業本部をより大きな組織へと再編(ドメイン制への移行)することで、経営資源活用の自由度を広げるとともに、成長性・収益性の高い分野へタイムリーに経営資源を投入することにより、事業の成長・拡大を実現しました。また、戦略的事業評価制度を導入し、事業のライフステージ(幼年期/壮年期/熟年期)と収益・財務健全性に応じた事業のポジショニングおよびそれに見合った要求リターンの設定と経営資源配分の最適化を行うことで、事業ポートフォリオの再構成を進め、収益性を向上させました。

このような一連の取り組みの結果、2016年度の受注高・売上高は、2011年度と比べてそれぞれ1兆円程度増加し約1.3〜1.4倍となったほか、利益水準についても構造改革が本格化する前と比べて改善が進んでいます。また、この間に多額の投資を継続しながらも7年連続(2010年度〜2016年度)でプラスのフリー・キャッシュ・フローを確保できたことは、従来の三菱重工からの変身を象徴する成果だと考えています。

(注1) 2012事業計画:2012年度から2014年度までの中期経営計画

2000年代の業績推移を表すグラフ

顕在化したリスクと課題

一方で、グローバル化や新たな事業への挑戦によって、従来とは質的にも規模的にも異なるリスクに直面し、「2015事業計画」(注2)策定当初の目標と現状との間にギャップが生じたことも事実です。その顕著な例が、大型客船プロジェクトです。当初、過去の実績からすれば対応可能と考えて受注しましたが、欧米向けの新造(プロトタイプ)客船で要求される設備や仕様に対する知見・ノウハウ等が不足していたことから、建造に苦戦し、結果として多額の損失が発生しました。また、半世紀ぶりに挑戦した国産ジェット旅客機であり、将来の当社事業の柱と期待するMRJ(注3)事業においては、2017年1月、最新の安全性適合基準を満たす設計へ変更することに伴い、量産初号機の引き渡し予定を、2018年半ばから2020年半ばへ見直さざるを得ませんでした。

加えて、近年は世界経済の不透明感も増しており、原油価格の大幅な低下やそれに伴う資源国の景況悪化、エネルギー関連の大型インフラ投資の抑制、円高の進行等が生じました。また、三菱日立パワーシステムズ(株)(MHPS)をはじめとした主要合弁会社におけるPMI(注4)の相対的な遅れや民間航空機の減産影響などによって、事業規模と固定費のアンバランスが生じたほか、LNG船のコスト悪化などが重なり、2016年度の営業利益は2015年度比で約50%減の1,505億円となりました。その結果、2015事業計画で掲げていた売上高5兆円、営業利益4,500億円、親会社株主帰属分の純利益2,000億円という目標は、2015事業計画の最終年度である2017年度の達成は見送らざるを得なくなりました。

(注2) 2015事業計画:2015年度から2017年度までの中期経営計画
(注3) MRJ:Mitsubishi Regional Jet
(注4) PMI:Post Merger Integration(企業や事業の合併後の統合プロセス)

2017年度の業績見通し

大型リスク案件の状況と対策

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しかしながら、懸案だった複数の大型リスク案件が収束し、MRJ事業も残る課題がはっきりと見えてきているという点で、視界はよりクリアになってきています。まず大型客船プロジェクトについては、2017年4月に2番船を引渡し、すべて完了しました。今後は、社内に設置した客船事業評価委員会の総括も踏まえ、当社の人員やサプライチェーンで対応可能な案件に限定して取り組むこととしているほか、本プロジェクトで得られた複雑系の船舶エンジニアリングに関する知見については、差別化技術として当社の他の事業にも活かしていきます。また、米国サンオノフレ原子力発電所に係る仲裁についても、2017年3月、当社の主張が概ね認められるかたちで仲裁裁定が下り、収束しています。

MRJ事業については、数多くの飛行試験を実施するなど開発作業は最終段階へと近づきつつありますが、最後の難関である型式証明(=安全性証明)の取得に向けた作業を進めているほか、今後の事業性を向上させるための取り組みにも力を注いでいます。そのために、2016年11月にはCEO直轄のMRJ事業推進委員会を発足させました。

その委員会を中心に、重要事項に関する意思決定と全社的な支援を、スピード感をもって実施しています。民間航空機の完成機事業への参入にあたり、覚悟していた通り難しい挑戦は続いていますが、裏を返せば参入障壁が高く、かつ今後も市場の伸長が見込まれる分野であることは間違いありません。これまでの遅れを取り戻し、MRJ事業を将来的に当社の柱の一つに育てていきたいと考えています。

こうしたプロジェクトの複雑化・大型化によるリスクの拡大に対応するため、2016年4月に事業リスク総括部を立ち上げたほか、社の最上位ルールとして「事業リスクマネジメント憲章」を制定しました。またCEO主催の事業リスクマネジメント委員会を設置し、経営トップである私が深く関与しながら、リスクマネジメント文化の醸成、リスクの入口管理強化を図っています。経験豊富なリスクマネジメントのエキスパートと事業部門との交流も活発化しており、リスクマネジメントの経験者が増えることによって、社内にノウハウがさらに蓄積されるものと期待しています。

2017年度は構造改革の総仕上げの年に

2013年にドメイン制への移行を実施し、逐次、グローバル企業として成長していくために組織運営体制の見直しを進めてきました。その過程で認識した改善点を織り込み、2017年4月にドメイン構成を見直しました。これは、グローバル競争力やエンジニアリング事業の強化に向けて、さらなるグループシナジーを追求するとともに民間航空機および商船事業の抜本的改革を推進するための再編です。

具体的には、これまでの「エネルギー・環境」、「交通・輸送」、「防衛・宇宙」、「機械・設備システム」の4ドメインを、個別製品事業単位であるSBU(注5)の入れ替えにより、 「パワー」、「インダストリー&社会基盤」、「航空・防衛・宇宙」に再編しました。

パワードメインにおいては、主力となるMHPSの火力発電事業と技術的に親和性の高い航空エンジン事業とコンプレッサ事業を同ドメインに配置することで、ターボマシナリー事業全体のシナジーを追求するとともにアフターサービス事業の強化を狙います。また、MHPSにおいては、拠点の集約・再編やIoT/AIのさらなる活用などを通じて、収益力の向上を図ります。

インダストリー&社会基盤ドメインでは、旧機械・設備システムドメインの事業が中心となり、各種機械事業のポートフォリオ経営による収益拡大とグローバルニッチ製品の創出を図っていきます。加えて、商船事業や化学プラント事業、交通システム事業などEPC(設計・調達・建設)要素の強い事業を本ドメインに集約することで、エンジニアリング事業を統合・強化していきます。特に、商船事業については、専業造船会社とのアライアンスを通じて、当社がこれまで培ってきた省エネ技術や環境対策技術を中心としたエンジニアリング力と各社建造能力のシナジーを追求していきます。

航空・防衛・宇宙ドメインについては、旧防衛・宇宙ドメインで手がけてきた事業に加えて、旧交通・輸送ドメインから民間航空機事業とMRJ事業を移管することで、航空機事業のシナジー発揮および経営資源のさらなる有効活用を促します。併せて、民間航空機事業のサプライチェーン改革のため、2016年4月に発足させた全社の技術・マーケティング・調達などを統括するシェアードテクノロジー部門の活用を強化します。具体的には、民間航空機の調達機能をバリューチェーン本部に移管し、新規サプライヤー開拓や調達プロセス改革などを推進しています。なお、同ドメインに関しては、MRJ事業をCEOが直轄管理することなどから、発足当初はドメイン長を置かず、CEOの直轄管理により事業運営を行います。これらの事業群は長期育成型の事業であり、新体制のもとで育成基盤の早期形成と収益安定化を目指します。

2015事業計画の最終年度である2017年度は、このような一連の構造改革の総仕上げの年と位置付けています。MRJ関連の後発施策など、一部2018年度にずれ込むものもありますが、全社的な構造改革や課題事業への主な対策は2017年度中に完了し、2018年度以降は持続的成長に向けた飛躍のステージに移りたいと思っています。

(注5) SBU:Strategic Business Unit(戦略的事業評価制度における事業単位)

ドメインの再編

環境の変化や多様性への適応により、持続的成長ができる組織へ

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当社はコングロマリット企業として130年以上の歴史を積み重ねてきました。専業メーカーと比べると経営が複雑かもしれませんが、コングロマリットだからこそ社会の変化や多様なニーズに対応していくことができるという面もあります。

そのような変化の蓄積を活かしながらも、外部環境が大きく激しく変わっていく見通しの中で、当社は機械・エンジニアリング分野のグローバル複合企業としての新しいあり方を探していくべきなのだと思います。

日本の経済成長に合わせ、当社が主に日本国内のマーケットで成長を遂げてきたことは先に述べた通りですが、現在の国内市場においても、未だ当社の製品や技術が活躍できる場はあり、そういったものについては引き続き強化していきます。しかし今後は、海外で伸びていくポテンシャルを持った製品・事業に、より多くの経営資源を割いていく必要があります。ICTを中心にさまざまな分野で革新が起きている中で、最先端技術や外部の知見を、我々の最大の強みであるエンジニアリングや製品の心臓部を握るコア技術に柔軟に取り込んでいくことが重要です。つまり、これまで長い時間をかけて培い、これからも守っていかなければいけない技術は守り、世の中の変化に合わせて柔軟に変えていかなければいけないところは変えていく、その両方ができる組織になる必要があります。

海外で事業を伸ばしていくためには、グローバルな視点だけでなく、その地域に合わせたローカルな視点が欠かせません。2018年度に予定しているグローバル本社機能の丸の内への移転を機に、グローバル経営体制を強化するほか、各ローカル拠点への権限委譲と責任明確化を進めることによって、グローバル経営と地域特性に合ったローカル経営を上手く組み合わせていきたいと考えています。

これからも価値を生み出し、社会にとって必要とされる当社であり続けるためには、このような組織や体制の構築はもちろんのこと、やはりそこで働く「人」が最も重要なのだと思います。一つの製品の需要というか寿命が数十年間も持続することが難しくなってきている昨今においては、社会の変化に適応し素早くニーズを掴む人材を有することがとても重要になってきています。また、どのような事態が起きても、それを克服し、組織を動かしていくリーダーシップを持った人材を育てるためには、目指すゴールと道筋を社員に発信・共有し、挑戦し、乗り越える経験を、複数の部門にまたがって積むことによって、人材が継続的に育っていく環境を作っていかなければなりません。

飛躍のための土台は一連の構造改革で整えてきました。次の中期経営計画では、人材面も含めて持続的成長のステージに向けた一歩を踏み出すべく、引き続き努力してまいります。